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「で、どうしてこうなったのかしら」
「キサマがじっとしているのは嫌だとごねたからであろう」
「…と言うか私は戦う意思はないから訓練なんて必要ないのだけれど」

確かにリヒちゃんに草むしりを始め家事や雑用はお客様だからと全て笑顔で断られてごねた。でもあの鬼のバッシュと地獄の訓練をしたかったわけじゃないのだわ…!
口を尖らせて精一杯の抵抗をすれば甘いのである!と怒鳴られた。

「戦う意思がなくとも敵国に攻められたらどうするのだ!大人しくやられているだけでは国民が苦しいだけである!」
「ぐ、それは確かに一理あるけれどいざとなったら私だって…」
「だからそのいざとなったらの訓練をするのであろうお馬鹿さんめ! …ふん、どうせキサマの事だ、カークランドとの一件以降平和主義だとか言ってろくに何もしていないのであろう」

段々呆れた顔になりながらそう言い放つバッシュに痛いところをぐさぐさと突かれて、ぐぅの音も出なくて結局軍服を引っ張り出して一緒に始めたのが半日前。

そして冒頭に戻る。

今は夕方。
山に陽が落ちかけて辺りはオレンジ色に染められていく、のにも関わらず

「ねぇ、まだ…」
「ええい!さっきから五月蝿いのである!集中しろ!」

何ですって。

早朝から始めて今は夕方。これまでにとった休憩は3回。1回の休憩時間はわずか3分。曰く、戦場に休憩時間があると思うな

あり得ない。
いや確かにその通りだけども。いきなりハードすぎるのだわ
いくら昔アーサーに連れ回されてやんちゃしてたとは言え本当に昔のこと、ついていけるわけがない。

「軌道がそれてるのである!集中しろ!」
「………ふふっ」
「アリス?」
「んっ、ふふふふふ…!いいわ、やってやろうじゃないの」
「、しまった…!き、今日はここまで!」

それからの記憶はあやふやで、気が付いたら数十メートル先にあったはずの的は、的ごと吹っ飛んでいるか、ど真ん中に穴がひとつあいているかで、辺りには銃弾が沢山転がっていて、バッシュはぼろぼろになって疲れ果てていて。
後からバッシュに何があったのか聞いても何も教えてくれなかった。

その代わりに、もう訓練はしたい時に我輩のところに来いと言われてしまった。





























「お世話になりました」
「もうお帰りになられるのですか?」

身支度を軽く整え、頭を下げれば頭上から少し寂しさを滲ませた声が聞こえて頭を上げる。
そこには眉を下げ捨てられそうな小動物のような目をしたリヒちゃんが居て思わず永久に居るわなどと口走りそうになるが自分を殴ることで何とか理性を保てた。
危ないわ…

「帰るわけないわ。ちょっと呼び出しを食らったからね、これを機に暫く転々としようと思って」
「そう、ですか…」
「リ、リヒちゃ……いっ!」

しゅん…と効果音がつきそうな感じで俯いてしまったリヒちゃんにどうしようどうしようとオロオロしていれば頭に走る衝撃。
いったい!痛い!

何か鈍器のようなもので叩かれた痛みに少し涙目になりながら頭にはてなを飛ばしているといつの間にか居たのか、バッシュがリヒちゃんの隣に居た。いつもの愛銃を持って。

「バッシュ、使用用途を間違って居るわ。銃は殴る為じゃなく撃つ為にあるのよ?」
「撃ってほしいのであるか?」
「もっと殴ってほしいくらいだわ!」

ぐいんっと顔を背けてバッシュと目が合うのを阻止する。今、目を合わせたらそれこそ撃たれかねない。
あー今日は暑いわね!冷や汗がとまらないわ!

お馬鹿さんめというバッシュの言葉なんて聞こえない。


「…また、いつでも来い。リヒテンはお前になついているようであるからな」
「待ってますね、アリスさん」
「本当にありがとう、二人とも」



温かな朝日が昇る頃

(やっぱりここは優しすぎるわ)
(さて、気を取り直して行きましょうか)

(hello!アリス居るんだろ?)




 




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