「ふぅ」
アルに宛がわれた一人には広すぎる部屋の、ダブル程は余裕でありそうなベッドに腰掛け息をつく。
やっと解放された感じだわ。
DVDが終わったあとも離れないアルを引き剥がして部屋に送り届けるのは中々重労働だっただけあってベッドに腰掛けた瞬間、どっと疲れがきた。
もう小さな子供と違って引きずるのも一苦労なんだからちょっとは成長して欲しい。
いや、それでも可愛いのだけれど
私ってやっぱりアルに甘いのかしらと頬に手を当てていたら部屋のドアが控えめにノックされた。
もちろん、この屋敷には私とアルしか居ないわけで。扉を開けたらそこには…
「…………………あら、」
誰も居ない。
妖精も居ないし。いや私はアーサーと違って幽霊の類いは見えないから何とも言えないけれど。
そんなまさか。ひょいっと斜め下を見ると
「アリス〜…一人で寝るとかやっぱり無理なんだぞ…!」
膝を抱えて小さくうずくまり頭に枕を被っている涙目のアルが居た。
『やだーまだねないんだぞ!ねたらあしつかまれてひきずりこまれるんだ!』
『アルフレッド我が儘言うな……あ、ななな何なら俺が一緒に寝てやっても…』
『アーサーやー!アリスがいいー!』
『私は別に構わねぇのだわ、ほらアル行きましょう』
『やったあ!アリスだいすきだぞっ』
隣にもぞもぞと潜り込むアルを横目に見ながら昔のことを思い出した。
この一人では大きすぎるベッドも二人並ぶと丁度良い大きさだ。
「……ふふ、」
「どうしたんだい?嬉しそうな顔して」
「小さい頃と、ほんと変わらないと思って」
「あーもう!君もアーサーもすぐそれだ!」
頭をぐしゃぐしゃと掻き回して、もう!とアルは癇癪を起こしているけれど、仕方ない。確かに昔より体格ががっしりして男の人のそれになったって、アルはアル。
やっぱり可愛い弟のままだし私もやっぱりアルには甘いのだろう。
目を閉じれば浮かんでくるあの頃の風景。
決してとても幸せだったわけではないけれど、かけがえのない時間だったように思う。
「アル、大好きよ。Good night. Sleep tight」
「…俺もだよ、アリス。Good night. Sweet dreams」
心安らかに
((気が緩んだり眠くなるといやに素直になるのは変わらないな))
((心臓に悪いんだぞ…))