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「あ、椿さん。ごめんね、今って暇?」
「え?あ、うん」

びっくり。
休み時間にみやびちゃんとお喋りしてたらクラスの子に話し掛けられた。えーと、誰だっけ。小林さん?みたいな感じだったような…
勢いでこくりと頷けば良かったとはにかむ小林さん。かわいい。

「あのね、あれを職員室まで持ってきてくれって先生に言われたんだけど…私、早退しなきゃいけなくて」

「え、どうしたの?大丈夫?」
「うん、ちょっと具合悪いだけなんだけど」
「うわあ、職員室まで持ってけばいいのね?わかった。お大事にね」
「ありがとう、じゃあよろしくね、ごめんね?」

その後も何回もごめんねと言いながらもふらふらした足取りで教室を出ていく小林さん。絶対ちょっと具合悪いぐらいじゃないと思う。大丈夫かな…
改めて先程小林さんが指差していたものを見ると、教壇の上に積み上げられたノートの山。

おおう…

「……みやびちゃーん」
「やだ」
「即答ひどい!まだなにも言ってないよ!」
「言わなくたってわかるよ。『ちょっとでいいから手伝ってくれない?』でしょ?」

なんと。
どうやらみやびちゃんは私の脳内がわかるらしい。これは…

「………エスパー?」
「じゃない。あんたは顔に出やすいの。ほら鈴木さんのお願いいってらっしゃい」
「えっ!小林さんじゃないの!?」
「どんな覚え方してんのほんと!さっさとクラスメイトくらい覚えなさいばか!」

バシィッと背中を叩かれてしまった。痛い!て言うか、えー!鈴木さんかー!鈴木さんて言うのかー!ああでも確かに鈴木さんて顔してた気がする。
どうも人の名前と顔は覚えられないんだよなあ。ほんといい加減ちゃんと覚えなきゃ、と鈴木さんの顔と名字をインプットすべくぶつぶつ言いながら教卓へ向かう。

よっこらせとノートを持ち上げると……いやぁ視界が悪い。
と言うかこれ絶対他のクラスの分も入ってるよね。こんなものを女の子に持たせようとするなんて酷い教師だなぁ。
全くけしからんと思いながら、早くもぷるぷると震える腕を叱咤して職員室を目指す。こんなにも職員室が遠いと思ったことがあっただろうか。いや、なかった。




「ふぉお……あと、すこしっ」

そろそろ高く積み重なったノートを落としそう。手が痛い、せめて持ち直したい。心の中でひーんと泣き言を漏らしていれば後ろから椿さん!と呼ばれる声。なんだ誰だ。はい?と返事をしながらぎぎぎと振り向くとクラスで見た顔が申し訳なさそうな顔をして立っていた。

「あ、ごめん。あのさここら辺で名札を落としちゃって…見かけたら拾っておいて?」
「わ、かった」

えっと今のは香川君、だっけ。
言うだけ言ってどこかに行ってしまった背中を思い出しながら失礼しまーすと職員室に入る。先生の机にノートをばさりと置いて手をぴっぴっと払うと、もう少し丁寧に置けないのかと小言を言われた。落とすよりも全然いいでしょうが。

「じゃあ私はこれで」
「おー、ご苦労」

失礼しますと職員室の扉を閉めようとしたら何かが引っ掛かって閉まらない。下を見れば名札が。香川……あ、さっきの。これじゃない?名前あってた!
教室に帰って呑気に結城君と喋ってる香川君に名札を届けたらすごく感謝された。
良かった。




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