いつも通り蘭に電話した。
心配かけないように、たわいない話をして。
そんな奥で傷ついてる心に気付かなかったんだ。
それはきっと俺の罪。



吐いた嘘



いつも通り笑顔で電話を切った。
教えた携帯のナンバー。
それを蘭は喜んでくれた。
喜んでくれたと思ってた。

「蘭姉ちゃん」
「コナンくん…」

蘭はふわりと優しく笑った。
でもどこか哀しそうでコナンには引っかかった。
“俺”と電話した後なのに何で哀しそうなんだろう?
それを問いかけてしまった。
気になったから。
何より蘭のことだから心配だった。

「ねぇ、どうしてそんなに哀しそうなの?」
「え?」

その瞬間、蘭の表情が歪んだ。
哀しげに伏せられる瞼。
それは儚くて綺麗だった。

「さっき、新一から電話があったの」
「新一兄ちゃんから?」

さも不思議そうに問いかける。
本当は知ってる癖に、知らないふりを突き通す。
それが俺が決めたことだから。

「新一ね、まだ戻って来れないんだって」
「ら…」
「ねぇ、新一は本当に戻って来るのかな?」

開いた瞳から涙の雫が零れ落ちる。
寂しくて、辛くて、哀しかった。
ねぇ、あなたはいつになったら帰って来るの?
私はいつまで待てばいい?
わからないよ、新一。

「私はいつまで待てばいいのかな?」
「蘭姉ちゃん」

ギュッと抱き締められてコナンは目を閉じた。
それでもこれは、話してはならない真実だから。
だから話せない。
こんなに傷つけておいて気付かなかったのは俺の罪。
元気な声の裏で、どれほど哀しんでいたのだろう?
いつも聞こえる明るい声を思い出す。

『もう、新一!』
『しっかりしなさいよ!』

怒ったような声。
優しさの欠片。

「大丈夫だよ、新一兄ちゃんは絶対戻って来るから」
「コナンくん…」
「だから、安心して待ってて」

俺であって俺じゃない人を愛する人。
ねぇ、なんで僕じゃないの?
僕じゃ蘭姉ちゃんの支えにはなれない?
好きなんだ。
こんなにも蘭のことが…。好きなんだよ…。

「ありがとう、コナンくん」

ほら、そうやって泣きながら笑うんだ。
工藤新一のために。
決して俺のためなんかじゃない。
その事実が何より痛い。
好きな人に好きだと想われたいと願うのは罪ですか?
何よりも嘘を吐いてる自分が罪なことをコナンは噛み締めながら蘭をそっと抱き締めた。
願うことなら幸せな未来を下さい。
どうか幸せな未来を…。


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