黒の組織を潰し、APTXN4869のデータを手に入れた私たちは、漸く元の姿を取り戻すことができた。
そして工藤君は、蘭さんの元へ行って見事にくっ付き恋人同士になった。
志保はそれを幸せな光景をまるでガラス越しにみているような気持ちで見てた。
まだ、彼らの姿を――幸せそうな姿を見るのは辛いけれど、それでもただ彼の姿を見ていられるだけで嬉しかった。
月が辺りを照らす。
窓をカラカラと開けてベランダに出ると、鳥の羽ばたきがした。
ふわりと舞い降りる白――。

「今晩は、お嬢さん。夜分にレディの部屋に失礼します」
「…………ハートフルな怪盗さん?」

そう呼ぶと、KIDは愛しげに笑った。
それに志保まで頬が緩んだ。
最近工藤君のことばかり見てたから苦しげな顔ばかりが板についてしまっていけない。

「あなたのような素敵な女性に覚えて頂けていて嬉しいです」
「お世辞が上手いのね、怪盗さん」

志保が自嘲気味に言うと、KIDは志保に近付いてきて優雅に腰を折った。
そして志保の手を取って手の甲にキスをする。

「私はお世辞など言いませんよ。特に、あなたには…」
「怪盗…さん…」
「あなたは誰よりも気高く脆く、そして美しい。私だけの誰よりも大切な人」

KIDは志保の腰をグイッと引き寄せて抱き締めた。
逞しい体に志保の胸がどくどく言う。

「名探偵など止めて私にしませんか?私はあなた以外を見たりしません。あなただけを――」

愛しています――。
唇を温かな温もりが掠めとっていった。
ふわりと温もりが離れる。

「次に会うときは、あなたの心を頂きに参ります」

バサリと鳥が飛び立つ。
志保は唇に指を当ててくすりと微笑んだ。

「あなたはもう盗んで行ったわよ。ハートフルな怪盗さん…」

だってあなたに会ってる間、工藤君のことなんて綺麗さっぱり忘れてたんだもの。
志保は温もりを胸に空を見つめた。
今なら応援できる気がする。
工藤君と蘭さんを――。




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