満月の光が燦々と降り注ぐ阿笠邸。
哀はいつものように実験を終えて自室へと戻っていた。今日もあまりいい結果が出なかった。
罪悪感でどうにかなってしまいそうだと思っていた時、ふいに窓の外の月光が遮られた。不思議に思って窓を開けてみると、そこに広がる純白。
哀はそれを驚いて見つめた。

「今晩は、お嬢さん。今宵も月が綺麗ですね」
「怪盗さん?」

不思議そうに声を出す哀にKIDは一歩一歩近づいてくる。そして腰を折って話し出した。

「夜分遅くにレディの部屋へちょっと失礼します。この怪盗にしばしの憩いを…」
「憩い?」

腕を取られ、手の甲に一つキスをされる。そうしてにやりと不敵な笑みを浮かべたKIDはポンッと破裂音をさせて哀の手の中に薔薇の花を出現させた。
しぱしぱ目を見開いていると、KIDが言った。

「気を張りすぎてはダメですよ。自分ばかり責めていると、いつかあなたが倒れてしまいます。そうすれば私は哀しい。だから偶には力を抜いて下さい」「怪盗さん…」

KIDは月を仰いで残念そうな顔をした。

「もうそろそろ私は帰ります。あなたにはその花のような可憐なものの方が似合います。また会える日を楽しみにしてますよ、女史。お元気で」

ポンッと煙幕が張られるのと同時にKIDが消える。胸の中がなんだかすっきりした。
また明日から頑張れそうだ。

「ありがとう、ハートフルな怪盗さん」

薔薇の花弁に唇を寄せて哀はキスをした。
その微かに微笑んだ、吹っ切れたような表情を月だけが見てた。






あとがき
mixiのマイミク暁良さんに捧げた品です。
気障にする気だったんですがなってるかなぁ、と書いてありました(笑)
K哀初挑戦話。
もっと長いK哀が書きたい。
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