とまればよかったのに



「君のことが好きだよ、正臣君」

頭の隅では何となくわかっていた。
それでも、その言葉が嬉しくて思わず俺は頷いていた。

「俺……き、です…」
「…もう一回」
「俺、も…好きです…っ!」
「ふふ…ありがとう。ねぇ、今日はデートしない?色々なとこに連れて行ってあげるよ」

いつもでは見ることの出来ない臨也の柔らかい微笑みに、正臣の頬は一気に紅潮していった。
嬉しさのあまりうまく答えることが出来ず、ただただ頭を縦に振ることしか出来なかった。

時間はまだ朝早く、時計の針がもうすぐで真っ直ぐになる頃だった。
臨也はもう少しだけ寝ようよ、と甘えた声を出して正臣をベッドへと誘った。
その仕草に正臣は再び顔を赤らめるも、ただ寝るだけだ、と自分に言い聞かせ、素直に従った。

「おやすみ、正臣君」
「…おやすみなさい、臨也さん」

ふわりと暖かい温もりに包まれながら目を閉じると、正臣は確かな幸せを噛み締めた。
当然だろう。ずっと前から正臣は臨也のことが好きだったのだから。
最初は本当に、ただ憎くて恐ろしい存在だったのだが、傍にいるにつれだんだんと惹かれていっていたのだ。
整った容姿に、綺麗な仕草。憎らしいほどの話術に、苛立ちしか覚えない性格の全てまでが正臣にとって魅力になっていた。

正臣は自分の愛を心に抱きながら、沈み込むような眠気に身を任せた。



「…正臣君、起きて」
「ん…」
「おはよう。もしかして寝ぼけてる?」

クスクスと可笑しげに臨也は笑うと、可愛いよ、といいながら頭を撫でた。
不意の褒め言葉に一気に眠気が吹っ飛ぶと、正臣はまた顔を赤らめた。

「なっ…!」
「朝食、出来てるよ?」
「あ、はい…」

思わずいつものように言い返そうと思ったが、臨也がまだ暖かい食事がのっている机を指差すと、その怒りも収まってしまった。
なんだが調子が狂うな、と思いつつも擽ったそうに正臣は笑顔を浮かべ、席に座った。

そういえば…こんな風に臨也さんと向かい合って食事なんてしたことなかったな。
と、正臣は思いながら臨也の手料理を口に運んでいると、臨也がクスリと小さく笑った。

「そういえば、こんな風に正臣君と向かい合って食事とかしたことなかったね」
「あ…そう、ですね」
「やっぱり二人で食べると違うね。自分で作った料理なのに美味しく感じるよ」
「そ、それは…臨也さんが元々料理が美味いからじゃ…」
「そんなことないよ?いつも食べてる味と違うもん」
「…お、俺も、美味しい…です」
「ありがとう、正臣君」

いつもとは少し違い柔らかい口調だが、普段通りにペラペラと喋る臨也に対し、いつもは悪態ばかりついていた正臣はしどろもどろに何とか返事をするだけだった。
こんなんじゃ駄目なのに、と思いつつも正臣はどう接していいかわからずにまた黙ってしまう。
食事をし終わると、俯いてしまった正臣を臨也はジッと見つめた。
気まずくなって目を閉じると、後ろから包み込まれる感覚がした。

「臨也…さん…?」
「ごめん、ちょっと緊張してるんだよね…?俺気づいてあげられなくてさ…本当、嬉しくて…」
「そ、そうじゃないんです…!ただ…何喋ればいいのかわからなくて…」
「俺は正臣君が好きなんだから…いつもの正臣君でいいんだよ?」
「…本当にいいんですか?」
「あたりまえじゃん、俺は正臣君が好きなんだよ」

あまりにも優しく甘い言葉に思わず目頭が熱くなるも、正臣はぐっとこらえて臨也のほうを向くとベーッ、と舌を出した。

「そんなこと言っても知りませんからね!もっと好きになりますよ!」

顔を真っ赤にしながら臨也を睨む正臣に臨也は暫く驚くと、何も言わず優しく微笑んだ。


その後変な沈黙に襲われてすったもんだしていた臨也と正臣だが、お互いギクシャクしながらも何とかデートすることに決まった。
普通に街を歩いて服などを買い、食事をして、映画を見に行き…。
本当に普通のカップルのようなことをしつつ、二人の時間を過ごしていくと、時間はあっという間に過ぎていった。

長いような短いような時間を過ごすと、二人は再び部屋へ戻った。
時計の針は日付が変わる1分前をさしている。

「臨也さん…今日、楽しかったです」
「俺もだよ、正臣君」
「臨也さん…」

密着した距離で正臣はゆっくりと目を閉じた。
雰囲気がそんな感じなんだよ、と言い聞かせつつ、期待で鼓動が高鳴り頬に熱を感じた。




「正臣君、昨日が何の日かわかる?」




時計が日付変更のメロディを流している中、上から 普段の 臨也の声が降りかかってきた。


「え…」
「イベント大好きな正臣君ならわかるよねぇ?」
「……あ」

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない
正臣の表情の抜け落ちきれていない奇妙な表情を見ると、臨也は楽しそうに口元を歪めた。

「エイプリルフール。もしかして知らなかった?そんなことはないよねー?」

聞きたくない、聞きたくない
正臣が耳を塞ごうとすると、臨也はそれを止め耳元に口を寄せた。

「つまり、今までのはぜーんぶ嘘、ってこと。どう?楽しかった?」
「う、あ…」

正臣は自分の中から湧き上がる絶望に自然と体が震えてくるのがわかった。
息もうまく出来ない。
胸に何か重いものが詰まっているようで。

「俺は凄く楽しかったよ?君のそういう顔が見れてさ」

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はいはい四月馬鹿ネタ間に合わなかったでーすーねー!
いやこれは4月2日の話なんで今日で大丈夫ってことで!
そうしてください!(切実)
ネタはついったから頂きました^p^
ネタが思いつかずどうしようと呟いていた俺に天使の手を差し伸べてくださった方がいたんです///ありがとうございます///
久しぶりの短編はシリアスのような何かになりました!オチが迷子です!すみませんでしたorz
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