目の前の現状に、臨也は少々眩暈を覚えた。
どうして俺の家の前で人が倒れているんだろうか。
どうしてその人の背中には白い羽が生えているんだろうか。
どうして俺の知っている相手なんだろうか。
どうして、死んだはずの人間がいるんだろうか。
「えーと…」
俺の記憶が確かなら、綺麗な琥珀色の髪の持ち主でパーカーが印象的な彼は、俺
の目の前で車に引かれて死んでしまった筈だ。
その時、彼には俺が見えていなかったと思う。位置的に。
そして俺は彼が死んでしまったことに対して、其処まで悲哀の情は浮かばなかっ
た。
臨也は自分の混乱を落ち着かせるために過去を遡り、落ち着いたところで漸く歩
き出した。
「う…ん…」
しかし少し遅かったようで、倒れている彼は目を覚ましてしまった。
「いざ…やさん…?」
「…やぁ。よく生きてたね正臣君、って言うか背中のそれは何かな?」
臨也は多少顔をひきつらせると、自分を覚えてるらしい正臣に質問を投げかけた
。
すると、眉をふにゃりと悲しげに下げた彼は俯いて黙ってしまった。
暫く無言が続くと、このまま逃げてもいいが後が面倒そうだ、と思った臨也は、
本来の目的である家の扉をがちゃりと開けた。
「入る?外で話すのもなんだしさ」
「…はい」
念の為後ろでしょげている正臣に入るよう催促すると、少し経ってから小さい返
事が返ってきた。
自分の部屋に向かいながら、臨也はどうしたものかと思考を巡らせた。
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