妄想症候群
「…寒い」
寒さに体を震わせ、正臣は両手で体を抱き締めるようにして何度か腕をこする。
小さな唇から吐き出される吐息は、白く曇っており寒さをより際立たせる。
正臣は臨也の家の室内に居るのだが、生憎暖房が壊れたらしく、臨也は暖房の注文をしに出掛けた。
いつものように仕事の手伝いに来たのが間違いだったのか、と思考を巡らすが、寒くてそれどころではない。
どうしようか、と帰るかそれとも待つか考えていると、ふと臨也のジャケットが目に入った。
「…あれ?」
何であるのか不思議に思った正臣は、すたすたとジャケットに近寄り手にした。
少し考えてから、これなら多少は寒さを凌げるだろうとジャケットを羽織った。
羽織ったジャケットからは臨也の匂いがふわりと香った。
その瞬間、正臣は急に体が熱くなってきたのを感じた。
体は冷えているのに、中から熱が上がってくる感覚に正臣は不味い、と思ったが時は既に遅く、無意識のうちに下半身に手が伸びていた。
ズボンのベルトを緩め、下着の中に手を入れると既に半勃ちの息子をやわやわと扱き始めた。
「は、あ…う…」
臨也さんの匂いで一人抜いているという状況に正臣の体は興奮しており、いつもより快楽を過剰に感じ取っている。
やばい、気持ちいい。
正臣は臨也に想いを抱いており、それを正臣は隠している。
利用されることを知っていながらも、側にいられるから、と利用され続けている。
好きだ、と一回でいいから想いを伝えたいが、臨也を目の前にするとドキドキしすぎて言うことすら忘れてしまう。
「あ、あ…臨也さん…っ」
自分の頭の中で臨也を想像しながら扱き続けると、先走りがぽたりぽたりと床に染みをつくっていく。
「ほら、気持ちいい?正臣くん」
「うあ…っ、気持ち、いいで、す…」
あー不味い、幻聴…
頭の片隅では冷静に考えていても、聞こえてくる臨也の声に体は正直に反応を示す。
扱く手も早まり、零れ落ちる先走りの量も増えていく。
「そろそろイきたいんじゃない?」
「イき、たいで…す…っ」
「イっていいよ、見ててあげるから」
「や、見ないでくださ…っ!あ、あぁあああっ、」
息を荒げながら頭の中で聞こえてくる臨也の声に合わせて少し強く握ると、正臣の息子は白濁の精液を吐き出して達した。
ぐったりと体の力が抜け、ごろりと床に寝転がると余韻がまだ残っており、正臣はそれに浸った。
「どーしよ…」
ちらりと今もまだ羽織っている臨也のジャケットを見ると、真っ黒なジャケットには少々白濁の液体がついている。
それでなくとも、恐らく青臭い臭いも染み付いているのだろうと考えると、後先考えずに快楽に浸ってしまった自分を殴りたくなった。
「とりあえず後始末…」
悩んでいてもしょうがないので、とりあえず後始末をすることにした正臣は、持っていたティッシュで拭き、ジャケットを白濁の液を内側にして包むと鞄の中にしまった。
明日丁寧に洗って適当に言い訳して返せばいいだろう、と思い正臣は臨也の家を後にした。
「あれ?正臣くん、俺のジャケットしらない?」
「……すみません、汚れていたんで洗っておきました」
丁寧に畳まれ、尚且ついい洗剤でも使ったのかふわりとよい香りがするジャケットを正臣は臨也に返した。
(バレませんように…)
「あ、ありがと。なくしたのかと思ったよ」
「いえ…勝手にすみません」
「別にいいよー」
臨也はいつもと変わらない仕草でジャケットを羽織ると、ふわりと香る匂いに首を傾げた。
「あのさ、」
「は、はい!」
(やっぱりバレたか…!?)
「これ、正臣くんの匂いする。香水いいの使ってる?」
にこ、と普段は全く見せないような優しい笑顔を臨也は正臣に向けると、じゃあ池袋行ってくるねーと言い部屋を出て行った。
「………やば」
正臣はへたりとソファに座り込むと、真っ赤な顔を片手で覆った。
(あれは反則だろ…!)
またやったら今度の言い訳どうしようかな、と正臣は熱くなる頭の片隅で考えていた。
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久々の更新でこの駄文、ないですね。
一回オナニーネタやってみたかったのですが、大失敗です←
そして季節感0という。