傘で隠した



「……あー……うざいなー……」
「何が?」
「………………雨?」
「何で自分で言ったのに疑問形なのさ」


季節は6月
つまり梅雨
僕と正臣は土砂降り一歩手前の外を歩いていた
手にはビニール袋
中身は大量のスナック菓子とジュース

「暇だったから!」と朝っぱらから僕の家に押し掛けてきた正臣は、お菓子も何もない状態に絶望したらしい
徹夜(まあチャットしてたんだけど)だから家でのんびりしていたかった僕の意思を完全無視して外へと繰り出した

そのころにはまだ小雨だった雨はこんなに激しくなっていて、ガサガサとビニール袋を揺らす正臣はご機嫌ななめである(子供じゃあるまいし)


「あーもう何で雨激しくなるんだよ!必要なくね?ないだろ?神様は俺らがそんなに憎いか?!何か悪いことしたのか帝人」
「僕?!正臣じゃなくて?」
「俺はいつだっていい子だぜ?暇な親友を遊びに誘ってやるくらいな!」
「誘った結果がこの雨なら正臣が悪いんじゃ?」
「え?まじで?」

傘を振り回して歩くせいか、正臣は僕よりはるかに濡れていて、風邪をひきそうだと思った
というかいい加減振り回すの止めようか
ポテチ粉々になるよ

雨に正臣が放つ一方的な不満が響く
普段は騒めく池袋も雨が降っているのと3連休のど真ん中なのが合わさって人も大していなかった
というか誰もいない
当たり前だ

「むー……………雨なんて嫌いだ」
「まあね」

不機嫌な正臣の上を見ると、淡い黄色の傘
ふと目に入ったその色に小さくひらめいた


「正臣正臣」
「なんだよ帝人」
「僕やっぱり雨好きかも」
「はあ?なん…………っ」

反論を紡ぐために向けられた唇に吸い付く
驚いた顔を自分の紺の傘で隠した
誰にも見せたくないしね(ま、誰もいないか)

「な、な、あ」
「堂々と街中でキスできるじゃん」
「………〜っばっかじゃねぇの!」

ふい、と横を向いた正臣の顔が赤い
可愛いな、と見ていたら、またまたあることに気付いた

「正臣………」
「…………………なにもいうな」
「キスで起ったの?」
「なぁ!言うなっつったろ!」

あー、もうさらに赤くならないでよ、可愛いな
とボーっと考えていたら、ぐい、と正臣に引っ張られた

「ま、正臣?」
「煩い煩い!ついてこい!」

ほっといても連れていかれるんだけど





「…………ここは?」

連れてこられたのは細い裏路地
トタン屋根ができているが、たまたま隣り合わせのビルの間にはまっただけだろう
傘なしでも雨をしのげるのがいい所っちゃいい所かな(傘は路地に入るとき正臣に捨てられた)

「…………前に、雨ふったときに見つけた非難所」
「ふーん………………」
「…………人も通らない」
「へー…………………」
「わかんねぇのかよ!」
「え?!何が?!」

いや睨まれても素でわからないよ、正臣

「畜生腹黒ドS野郎のくせして察しが悪い…………」
「何か言った?」
「いえ、なにも!」

真っ赤な正臣が慌てて弁解している
だが、正臣の目をみて分かった

あー…………欲情してる


「うん、分かったよ正臣」
「へ………ふみゃ?!」

ゆるくズボンごしに立ち上がった正臣自身を緩く撫でた

「こういうことでしょ?」
「は、はぁっ、うあぁあ、いや、いきなりっばか」
「何?して欲しくないの?」
「ううぅ…………!早くしろよバカ帝人!」
「はいはい」


そうして僕は目の前の実に食い付いた








そんなこんなで
結局盛り上がって最後まで雨の中ことに及んだ僕達は………


「けほっげほげほ」
「大丈夫?正臣」

見事に正臣だけ風邪をひきました

「ちくしょー……あーつーい」
「あ、今冷えピタ変えるね」
「てーか何でっけほ、俺だけこんなグダグタになってんだ?!っげほっはあ」
「あー、もー、騒がない騒がない!」
「はっ!分かったぞ帝人!それは帝人が、っごほ、バカだからだ!なんたらは風邪をひかないからな!」
「自分で自分の体調管理をバカはできないんだから逆だよ。あと頭よくたって体が弱ければ風邪ひくから」
「なるへそ、だとすれば俺は後者だな」
「冗談は休み休みいいなよ」

冷えピタを剥がして、また貼りつける
「つめた!」と声が上がったが無視

「早くなおしてよね」
「あー…………みかどぉー暇」
「それ僕の台詞…………」

はあ、とため息をつきながら、僕は正臣の額を軽く叩く

「早く正臣が治らなかったらうちの冷蔵庫いっぱいのジュースとかボロボロになったポテチとか、全部自分で食べるはめになるじゃん」
「…………けほ、うん」
「だから、早く治してね、そんで部屋にこもってなんかダベろっか」
「っそだな!約束だぞ帝人っ―………げほっごほごほ!」
「あーもう!興奮しすぎ!」



透明な雫は、相変わらず止むことはなく
歪なリズムを窓に叩きつけていた



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Poissond avrilのノヅ様から相互祝いを頂きました…!
まず見た時の感想、何この帝正可愛い←
しかも慣れぬ裏に挑戦していただいたって言うね!感動!
どうです羨ましいでs(←

とにかく滾りました…!個人的に最後の看病に滾りましたw
ありがとう!とにかくありがとう!そしてご馳走様←
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