正臣には噛み癖とでもいうべきものがある。


意図的に噛むわけではなかった。
ふと考え事に沈んだとき、手元にあるものを無意識に噛むのだ。

あるときは食事をしながら、ふと何かを考え始めカレーを掬うスプーンをがしがしとしがむ勢いで噛んだ。

またあるときは、臨也の部屋で書類を繰りつつふとした瞬間にペンの上端をくわえてかつりと歯を立てたまま動かなくなる。

自分の手の爪などを噛むわけではなかった。
そういう噛み癖とはまた違うのだ。

無論手元に何も持っていなかったら指の腹を噛んでいることもあるが、それはむしろ例外だ。

要するに、噛みたいから噛んでいるのではなく、何となく噛んでいるのである。

そういつもいつも強い噛み方ではない。
ぎりぎりと噛んではいても噛み千切ろうというような動きはないし、偶には軽く歯を立てているだけのこともあるので物によっては歯形の傷一つ付かないこともある。

ただ一回噛み始めるとその思考が覚めるまでずっと噛んでいるので、来客がいる時などの公席では、見かねた臨也が早い段階で正臣の肩を叩いて思考から醒まさせてくれることがある。

正臣は意識を口元に向けるとペンなり手甲の指なりに歯を当てている己に気付き、さりげなく口元からそれを外して素知らぬ顔をする。


ともあれその正臣の噛み癖の犠牲になるのは、彼のごく手近もしくは既に手元にあって、噛みやすい細長い形の、何かである。


要するにどうしたかといえば、その噛み癖のせいで正臣はうっかりしでかしたのだった。

何を噛んだかは、伏せさせていただきたい。
うっかり、本当にうっかり何か動作の途中で彼はちょっとした思考に集中してしまったのだ。

状況を説明するならば、更夜、臨也の部屋のベッドにて、自分以外の誰かがともにいて、少しばかり汗をかいていた。

あと、その場には臨也の悲鳴が響き渡っていた。

別になんということもない、他愛のない話である。


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carmine+apricotの有沢様から相互祝いで頂きました…!

俺はエロを基本的シリアス方面もしくは変態の方面にしかもっていけないので、このような文が書けるのは本当に凄いと思います!
流石と言おうかなんと言おうか…
兎にも角にも、エロとギャグがいい感じに混ざり合ってとても素敵な小説をどうもありがと!
これからもしつこくstkさせて頂きm(ry←
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