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ことこと、と音を立てるシチューが入った鍋。それからとん、とん、と心地良いリズムが台所から聞こえてくる。
外は雪がふわふわと舞い降り、藍色が混じってきた茜色の空はとても美しい。
「名前」
そう彼女の名前を優しく呼べば彼女は、ん?と居間と台所を仕切る壁から顔を覗かせる。
その愛おしい姿に自然と顔が綻んだ。
今日はクリスマス。
久々に取れた休みを、一緒に過ごそうと彼女の家までやってきたのだ。
鍋の火を消して、たたたっと小走りで寄ってきた名前を抱きしめる。
瞬間、ふわりと香った彼女の香に安心した。
「……?どしたの、一」
「………いや、」
エプロンをしている彼女の肩に顔を埋める。くすぐったそうに身をよじる彼女を離さないように、ぎゅっと腕に力を込めた。
とくん、とくん
と名前の心音が聞こえて、外の騒がしさと家の中の静けさに柔らかい気持ちになる。
…温かい家だと思って。
「一、ご飯作れないから離して?」
「………嫌だ」
「っえ」
肩に顔を埋めている俺からは彼女の表情は見えない。しかし声色からは驚いているように感じられた。
らしくない、と自嘲の笑みを落として彼女の肩から顔を離す。そのまま名前の顔を覗き込めば、顔を赤くしている彼女がいた。
「………名前」
そっと彼女の左手に自らの右手を絡ませる。途端慌てだした名前の唇を左手の指でなぞり、そのまま深く口づけた。
「っん……ぅ」
「……っは…」
左手で彼女の頭を固定し、舌を絡ませる。薄く目を開ければ彼女は頬を紅潮させ、目元を潤ませて口づけに集中しているようだ。
そこで、絡ませていた右手をジーパンのポケットに滑り込ませ"それ"を取り出す。そのまま"それ"彼女の左手に嵌め、唇をゆっくり離した。
「は、一……?」
意味がわからない、という顔をする彼女を立ち上がらせ、ほらと背を押す。
え?とオロオロしながらも彼女は、何度もこちらを振り向きながら台所へ戻って行った。
真っ赤なリボンを結んで
「はっ…はじめぇぇっ!」
そう言い、泣きながら台所から出てきた彼女の左薬指には、
赤いリボンが結ばれた、銀色の指輪が光っていた。
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大変長らくお待たせいたしました、蛍様!
甘甘甘っていうのはこんな感じのでいいのでしょうか?書いててはっずかしかった……!
プロポーズを遠回しにする一君って可愛いなぁと思いまして……やらせてみました←
蛍様、これでよろしければお受け取りくださいっ><
リクエストありがとうございました!
20101226 東雲
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