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「…くりすます?」




今まで聞きいたこともない単語に、俺は首を傾げた。







(ルカ様リクエスト/連載主)






「うんっ、明日はくりすますだよ!!」


目の前で何時ものようににこにこしている名前は非常に愛らしく、なんとも庇護欲を駆り立てるものだが………"くりすます"というものの正体は、聞いたこともない上に、なんなのか見当もつかない。

俺よりも10も下の名前が俺の知らないことを話し、俺を困惑させる…このような状況はよくあることだ。特に、名前が異国の言葉を話すとき……だろうか。


そのたびに俺は、この少女は本当に未来から来たのだと実感させられる。






事の発端はつい先程。
名前が首をかしげながら、今は何月何日?と問い掛けてきた為に、師走の24日だと答えた。
すると名前はいっそう首を傾げ、師走って何番目の月なの?と再度問い掛けてきたので、12番目だと答えた。


そこからだ、名前が異常にはしゃぎだしたのは。



くりすます、という異国の単語を連呼して、じんぐるべーるじんぐるべーると意味不明な歌を歌い、くるくるとその辺を走り回っている。あの愛らしい名前の頭がおかしくなってしまったのではないか、と俺が本気で心配するには十分な異常さだった。




「……名前、とりあえず落ち着け」



がしっとくるくる回る名前の肩を掴み、正座している自らの膝の上に座らせる。
ん?とこちらを見上げる名前の頭を撫でれば、機嫌が良さそうににこにこーっとさらに笑った。



「何故、そんなに楽しそうなのだ?……その、"くりすます"とやらか」



「うんっ!クリスマスはねぇ、いい子にしてると"サンタさん"っていうおじさんが欲しいものをくれるんの」



夜中に枕元に置いてくれるんだっ、と嬉しそうに言う名前にこちらまで嬉しくなる。"くりすます"とは、どうやら名前が言うには"さんたさん"という輩が自宅に不法侵入し、枕元に"ぷれぜんと"という子供が喜ぶ贈り物を置いて帰るらしい。

そんな輩がいるのか、と言えば"信じていないとさんたさんは来ないんだよ"と自慢げに返された。



正直、俺にしてみれば夜中にか弱い子供の部屋に不法侵入するなど言語道断なのだが………名前が嬉しそうなので悪い輩ではないのだろう。







「はじめくんは、欲しいものないの?」



「………欲しいもの、か」



当然この流れなら問われるであろう質問だったが、何も浮かばない。もともと欲が無い人間、というのもあるが……今の生活に、名前が居るこの生活に、充実感さえ覚えているからというのが最大の理由であろう。





「………俺は、名前が居ればそれでいい」



「!」



気持ちをそのまま口にすれば、名前は非常に驚いた顔をした。しかしそれもつかの間、すぐにいつもの柔らかく愛おしい笑顔になる。




「うんっ!名前は、はじめくんと居るよっ!」





えへへーと抱き着いてくる名前。そんな少女の体温と小さな重みに目頭が熱くなる。

守りたい、と思った。
こんな素性もろくに明かしていない人間を、信頼し身を預けてくれる。幼い故に純真で、嘘偽りのない気持ちをぶつけてきてくれる。
そんな名前を、愛おしいと思った。恋だとか愛だとかとは別の、"慈しむ"という気持ちがいつしか生まれていたようだ。





「……名前は、元の時代に帰るまで俺が守る……絶対だ」





いつか別れる時が来るのは何故か直感でわかった。彼女がそれを望んでいるであろうことも。……それを少し寂しく思う自分が居ることも。

始めはほんの、気まぐれに近かった。ただ、自分とかぶる孤独な双眸に触れた瞬間、放っておけなかっただけで。


名前が何者かなんてわからない。名前がいつか居なくなってしまう事も、どことなく理解している。


しかし、今だけは。







「はじめくん…?」








この俺を心配そうに見上げる温もりを、手放したくは無かったのだ。








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遅くなり大変申し訳ありませんっ!!
ルカ様リクエストで、斎藤(連載主)でした!アマリリスでは初の一君視点になりましたね…そのうち本編でも書かれると思いますが、それの導入としてでも読めるようにしてみました^^


ルカ様、こんな二人で大丈夫でしたか…?
そして遅くなってしまいすみませんでした><リクエストありがとうございましたっ!



20101226 東雲



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