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明日は新年という、大みそかの昼間に。千鶴と名前が局長室に呼ばれていた。
「近藤おじさま、なんの御用ですの?」
900年前の平安時代から、時を越えてやって来たという名前。行くところが無いため、新選組の屯所に滞在中。
幹部以外の隊士には、近藤の姪として振る舞っている。最近は、本当の姪のように近藤を慕い、おじさまと呼んでいる。
そして近藤のほうも、自分の姪のように思っているようだった。
「おお、ふたりとも忙しい所、来てもらって悪かったね。」
にこにこと二人を出迎えた。一応、屯所も大掃除ということで、みなで手分けして掃除中なのだった。
「いえ、私たちの受け持ちは、ほとんど終わりましたので。」
「そうか。今年も御苦労だったね。そこで、二人に一日早いが・・・」
そう言いながら、背後においてあった包みを二人の前に出した。
「俺からのお年玉だ。」
にっこりと笑いながら差し出されたそれは、結構大きな包みだ。
「これは?」
千鶴が聞くと、開けてごらんと言われ、開かれた包みの中から・・・
「まあっ!綺麗な着物ですわ!」
「近藤さん・・・これって・・・晴れ着ですか?!」
若い女の子が、お正月などで着る、華やかな色合いの着物と帯が二人分。
「明日は正月だ。晴れ着もいいものだからな。」
嬉しそうに見ている名前と対象的に、千鶴は複雑な表情をしている。
「ん?どうしたんだ、雪村君?」
「せっかくのお気持ちですが・・・私は男装していますし・・・」
「あら、わたくしのお友達です、と隊士の方々には仰ればよろしいのでは?晴れ着でしたら、きっとばれませんわ?」
男装している自分が晴れ着を?と千鶴が口にすると、すかさず名前が答える。
「おお!それはい考えだな。雪村君、そうしたまえ。」
うんうんと頷く近藤。彼も、毎日一生懸命新選組の役に立とうとしている千鶴に、たまには女の子らしい格好をさせたいと、思っていた。
「・・・はい!ありがとうございます!」
彼の心遣いに、千鶴はじーんと来て、深々と頭を下げた。


その夜、男たちは夜通し酒盛りで年を越し、翌朝。
「千鶴さんっ!この帯の結び方がわかりませんわ!」
「あ、それはこうやって・・・・」
いつもは男だらけのむさくるしい屯所に、今日は華やかな女の子の声が二つ。
「?一体なんの騒ぎだ?」
太陽がすでに昇って、ぞくぞくと起きだしてくる幹部連中。
広間に集まるために、廊下を歩いている斎藤の耳にも、その華やかな声が聞こえてきた。
「一君!おはよー!」
後ろから、平助が声をかけてきた。
「ああ、おはよう平助。」
「なんか朝から賑やかだよなー」
「ああ。名前と・・・雪村か?」
などと話しながら、広間へ向かう。そこにはすでに総司がいて、ちびりちびりとお猪口を口に運んでいる。
「もう酒か、総司?」
「おはよう、一君、平助。いいでしょ、お正月だからね。」
にこりと笑うが、斎藤はあきれたように眉を顰める。
「よう、早いなお前ら!」
「あんたが遅いだけだろ。」
新八と左之も入って来た。その二人も、早速酒に手を伸ばす。
「・・・まだ局長も副長も、いらしてないというのに・・・」
真面目な斎藤がぼそりと言うが、3人は全く気にもせず。平助は腹減った―と言っている。
「やあ、みんな揃っているね。」
井上が土方と一緒に入って来た。
「お前らもう酒盛りか?ちっとは大人しく待てねぇのか?」
「ははは・・いいじゃないか、トシ。今日くらいは大目にみてやれ。」
さらに近藤も山南と共にやって来て、幹部は揃う。
「さて・・・去年も皆、頑張ってくれた。お陰でわが新選組も会津公の覚えも目出度く、さらなる活躍を期待されている。」
杯を持って、皆をぐるりと見回した。その顔は、誇らしげだ。
「今年も皆、よろしく頼む!・・・それじゃあ・・・新選組のさらなる発展に。乾杯!」
近藤の音頭に、皆も杯を上げた。とたんにあたりは賑やかになる。
酒を注ぎあったり、ささやかではあるが、用意されたおせちを口にしたり、楽しげに話しこんだり。
「ところで、局長。」
近藤に酒を勧めに来た斎藤が、思い出したように話しかけてきた。
「ん?どうしたんだ?」
「いえ・・・名前と雪村の姿が・・・」
その時。広間の入口に、黄色地に花を散らした晴れ着を着た少女が、一人姿を見せた。




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