刹那の再会



※かなり捏造したクラウド・エアリスな話になっています。それでも大丈夫な人はどうぞ。





たった一度の…我儘を許して欲しい。


クリスタルの光が少しずつだが弱くなっていく。
いつ、自分の存在が消えるともわからない中、終演へと歩んでいく。
終演の先は闇か…それとも…


コスモスの戦士たちは、少し早めに休息を取ることにした。

カオスが近い…。

恐らく、明日が最終決戦になるだろう。
それぞれが自分が手にしたクリスタルを抱き、休息を取る中、クラウドは一人、テントを後にしようとした。


「どうしたんだい?」

セシルがクラウドに声をかけた。
仲間に進んでコミュニケーションは取らないものの、団体行動を乱すようなことをあまりしないクラウドの行動が気になったのだ。

「…少し、一人で考え事をしたいだけだ。」

ぶっきらぼうに答えるクラウドに、セシルは眉を潜める。

最終決戦を前に、個人での行動は控えるべきであるのに、何故か?
納得のいかなさそうな顔をするセシルにクラウドはまっすぐと瞳を見つめて言い放つ。

「…すぐ戻る。心配するな。何かあったら助けを呼ぶ。」

きっぱりと言うクラウドだったが、何か思い詰めたような目をしている。
セシルは一瞬行かせないほうがいいかと考えたが、止めても恐らく無駄だろうと感じた。


ティーダ、フリオニールと一時期4人で旅をし、仲間の中では比較的長い時間を共にしている。
彼は年長者だし、より信頼できる仲間のひとりでもあるのだから…と思い、セシルは「行ってらっしゃい」とだけ言い、見送ることにした。


「悪い…。」
クラウドは一言そう言うと、夜闇に包まれた外に足を踏みだした。



外は少し肌寒かったが、クリスタルを抱いているとなぜか、寒さがやわらぐ感じがした。

神様の欠片であるそれは、自分の存在を確立してくれるもので、最後の希望と言っても間違いではない。

テントからある程度離れた岩場に着くと、クラウドはクリスタルを手のひらに乗せた。

これから行うことは…希望を託して散ったコスモスを裏切ることになるかもしれない…自分が消えてしまうかもしれない。


「(…コスモス…皆…すまない…これが、最後のチャンスかもしれないと思うと俺は…。)」


クリスタルは鈍い光を放っている。


クラウドはクリスタルを両手で包み込むと、ある人物を強く思い浮かべる。


花を…大地を…生命溢れる星を愛した女性を…。



「…エアリス…。」


慎重に、囁くように名前をつぶやくと、一瞬クリスタルが強く光る。
あまりの眩しさにクラウドは目を閉じた。
光が止んだと感じ目を開くと…目の前には一人の女性が立っていた。


ピンクのリボンとワンピース

たっぷりとした柔らかそうな栗色の髪。

クリスタルの色合いと似たエメラルドグリーンの瞳


白く整った顔立ちの女性…エアリスはクラウドの目の前に立ち…微笑んでいた。


「エアリス…。」

沢山話したいことがあったはずなのに名前を呼ぶだけで精一杯だった。
そんなクラウドにエアリスは苦笑し、ゆっくりと歩み寄る。

「久しぶり、だね。」

優しい声色で呼び掛けられ、一瞬戸惑ってしまう。

「あ、ああ…久しぶり…。」

かすれた声でやっと一言を発する。

「ふふ…緊張、しないで。こっちまで緊張しちゃうよ。」



クラウドの様子にエアリスはクスクスと笑うと、ふとクラウドの手のなかにあるクリスタルに目をやる。

「それで、私、呼んでくれたの?」

とクラウドに問いた。


エアリスの問いかけにクラウドは少し表情を曇らせた。

最終決戦の前に、世界の命運を賭けた戦いの前に、希望の一つを私的に利用してしまったことを改めて思い知る。

表情の冴えないクラウドにエアリスから笑顔が消え、心配そうな表情になる。


「ね、…何かあったか、どうして私がここにいるのか…聞かせて?」


クラウドはエアリスに話しはじめた。

神々の戦いに召喚されたこと

自分を召喚した神コスモスが10人の戦士に自身の欠片であるクリスタルを残し、消滅したことを、

今、自分達は世界を無くさないためにもう一人の神であるカオスとの最終決戦にむかうことを、

…最後の希望であるクリスタルを使い、エアリスを呼び出したことを…。


エアリスはクラウドが話し終わるまで、何も聞かずにただ話を聞いた。

話を終えるとクラウドは少し息をつき、ゆっくりとエアリスの顔を見た。
彼女の表情は泣き笑いのような複雑な表情をしていた。


「…ばか。」

小さな声で注意するような感じでエアリスはつぶやいた。

ここまできて「ばか」と言われるとは思わなかったので何とも言えないような気持ちになる。
咎めるように言っているのではなく、まるで小さな子供を叱る母親のような声だったこともあった。

「本当に、神様が残したものを…本当にばか……けど…」

うっすらと涙を浮かべた瞳でエアリスはまっすぐとクラウドを見つめる。

「けど……また、会えて嬉しい…。」


エアリスの本当に気持ちを聞き、クラウドは隠さずに自分の気持ちを正直に打ち明ける。

「俺も会いたかった…。少しずつ、記憶が戻って来るにつれて、会いたい気持ちが強くなっていったんだ…。」


本当は彼女をこのまま自分の傍に留めておきたい。
やさしい声と柔らかな笑顔を自分に向けてほしい。


カオスとの最終決戦を前にして、独りよがりな願いを抱く自身にクラウドは嫌悪感が沸き上がる。

他の仲間たちは世界を救うために、コスモスの最後の力を受け止め、戦っているのに。

そんな複雑な思いを巡らすクラウドにエアリスは手の甲で涙をぬぐい、唐突に話しはじめた。

「クラウドはね、私にとってヒーローなんだよ?」

いきなりなんなんだと言う顔をするクラウドに構わずエアリスは話を続ける。

「私のこと、助けてくれただけじゃなくて、こうしてまた、会うきっかけ作ってくれた。しかも星の次は世界そのものを救うなんて、本当にヒーローみたいだなって。…けどね、私の我儘かもだけど、ヒーローなクラウドだけじゃなくて、…一人の人としてのクラウドも、見せてほしい。」


やさしい手つきで頭を撫でられる。

「こういうこと、くらいしかできなくて、ごめんね?」

「あんたが謝ることじゃない!俺は…弱いんだ…。」

最後のほうはほとんど聞き取れない声でつぶやく。

エアリスは暫くクラウドを見つめた後、視線をクラウドがもつクリスタルにむけた。

「クラウド、弱くなんかない。…ちゃんとした意志があったからこそ、クリスタル、手に入ったんでしょ?他の誰でもない。クラウドだからこそ、だよ?…あなたなら、最後の戦いも大丈夫。それに、ひとりじゃないでしょ?ね?」
「エアリス…。」

彼女の前だと誰しもが素直になった。そして…自分も。
恰好がつかないが、自分の胸の内を聞いてもらえてよかった。
クラウドは微笑む彼女に自分もまたゆっくりと微笑んだ。

急にエアリスの体が透け始める。
驚くクラウドにエアリスは困ったような笑顔を浮かべた。

「そろそろ時間かな?存在が確立、できないみたい・・・。」
「もう…?」
「もともと、正式に召喚されていないから、むしろクリスタル、がんばったほうだよ。」

エアリスはそっと両手でクラウドの顔を包み込み、自分の額とクラウドの額を合わせた。

「最後の戦い…クラウドは一人じゃないよ…他のコスモスの戦士も、私たちの世界の仲間も…私も…たくさんの人がいるから…。」


優しい声と言葉が浸透する。
クラウドは瞳を閉じ、心が落ち着いていくのを感じた。

「ああ、俺は…一人じゃない…ありがとう、最後の最後に、アンタに…会えてよかったよ。」

「うん…うん…私も、会えてよかった…。」

エアリスはクラウドから離れると、両手を後ろに組み、笑顔を浮かべる。

「クラウド…また、ね。」

一言言うと、光の粒子につつまれ、消えていった。

エアリスが消えたあたりを見つめクラウドは苦笑する。
最後まで彼女に励まされてしまった。

ティナやオニオンナイトの前では頼れる年長者でいたが、彼女の前ではどうもそうはいかない。

クラウドは手に持っていたクリスタルに視線を落とす。
クリスタルは彼女を呼び出す前とは変わらず、淡い光をはなっていた。

「ありがとう…。本当に…。」

そうつぶやくと、踵を返し、仲間のもとに戻るため歩んでいく。

大丈夫…戦える…一人じゃない…頼もしい仲間たちがいる…そして…彼女の言葉がある。








最終決戦を終え、戦士たちがそれぞれの世界に帰っていく。

クラウドの眼前には花畑が広がっている。

ティナと話していた、フリオニールの夢…みんなが好きな花がある世界。

自分が好きな花はなんだろうか?とあの時は思っていたが、記憶が戻った今ははっきりと好きな花はこの花だと答えられる。

「俺の好きな花は…アンタが世話していた花…だったな。」

彼女が大切に世話をしていたスラムの教会に咲いていた花と同じ花がクラウドの足元に広がっていた。


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DFF捏造クラエア話。

エンディングでクラウドが歩く先にあった花畑がACのクラウドとエアリスが背中合わせで立っていた花畑と似ているな…と思って思いついたお話。

DDFFアシスト参戦おめでとうエアリス!!
クラウド・エアリス カップル大好きだー!!



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