逆転の結果 -3-

8女体化ネタ。
女体8ですが、85です。
苦手な方はリターンお願い致します。


---------



部屋に戻ったスコールは普段使っている夜着に着替えようとしていた。
ジャケットを脱ぎ、椅子に掛けると、今度は着ていたTシャツに手を掛けたところ手を止めた。

大きく開いた胸元から晒に巻かれた胸が見える。
大きくはないが、女性の象徴のひとつであることは一目瞭然だった。

胸だけでなく、髪も細長い手足に腰、柔らかな肌の感触。
本来の自分の体ではない体。

最初の頃こそは、朝起きたら元の性別に戻っているのではと、期待と祈りがあったのだが、一向に戻る気配の無い体にそれを諦めた。
今日のバッツとオニオンの報告から希望は見いだせたものの、まだ時間がかかりそうだ。

一体いつになったら戻れるのか。
・・・薬がたとえできたとしても本当に戻れるのか不安もある。

スコールはため息を吐くと、着ていたTシャツを脱ぎ、晒を取ろうとした時だった。


コンコン


ドアをノックする音が聞こえたので、そちらを向くと、遠慮がちな声が聞こえてきた。

「おれだけど・・・入っていいか?」

声の主はバッツだった。
想い人の突然の訪問に少し驚き、了解の意を伝えると、戸が開く。
おずおずと、こちらを伺うような表情で入ってきたかと思うと急に顔を逸らされた。

「着替え中だったか・・・悪い。」

バッツの言葉にスコールはそういえば上体は晒を巻いただけだったことを思い出し、夜着を頭からかぶった。
男性の時ならば気にしなかったことを、女性となってしまったばっかりにこちらも気を遣わなければいけないことにもいい加減、限界に思う。
多少イラつきながら乱暴に着替えると、顔を逸らしていたバッツに「もういいぞ。」と声をかけた。

「悪いな。」

少し躊躇うようなそぶりを見せた後にこちらを振り向いたバッツにスコールは「適当な場所に座ってくれ。」と言い、ベッド脇のサイドテーブルに置いていた水差しとカップをセットし、カップの中に水を注いでいく。
二つのカップに水を注ぐと、一方をベッドに腰掛けていたバッツに差し出した。

「よかったら。」
「お、さんきゅな。」

笑顔でそれを受け取ると、スコールもバッツの横に腰掛けた。

座った瞬間、ふわりとスコールの香りがバッツの鼻をくすぐった。
いつものスコールの香りと少し違う。
戦闘に参加していないためか、ガンブレードに使う弾丸の、火薬の匂いがまったくしないからだとすぐにわかった。

「(香りは火薬の匂いがしないからか・・・けど・・・。)」

カップを傾けながらスコールを盗み見る。

切れ長の目は深みのある青。
カップを傾ける時の角度。
少し足を開いて俯き加減に座る癖

「(男の時と変わってないよな・・・当然だけど。)」

外見は変化したものの、変わっていないと思うと、いつの間にか笑みがこぼれていたらしく、スコールが首を傾げて怪訝そうな顔をした。

「どうした?」
「ん?スコールはやっぱりスコールだなって思ったんだ。」

バッツが言ったことがよくわからないらしく、スコールが眉根を寄せると、くすくすと笑いながら話を続けた。

「スコール、すげえ美女になったけどさ、変わったのは外見だけでさ、話し方や仕草は全く変わらないからちょっとな。」

バッツがそういうと、スコールは少し髪を掻き揚げて俯いた。
何か悪いことを言ってしまっただろうかと、バッツは不安になり、スコールの顔を覗き込もうとすると、彼は小さな声でバッツに話しかけてきた。

「・・・あんたは俺がもし戻れないとしたらどうする。」
「え?」

スコールの問いにバッツは困惑する。
仲間たちの前では冷静で、感情をあまり見せない彼の声が少し、ほんの少しだったが普段に比べて暗く感じた。

ティーダなど、仲間たちに女扱いされて怒っていた時以外は彼は普段となんら変わらないと思っていたのだが。
そう思ったところでバッツは自分が、スコールを元に戻すために、ここ数日彼とほとんど接触を取っていなかったことを思い出す。

もし、その不安を誰にも打ち明けずに、一人で抱え込んでいたとしたならば、彼は一人で不安と闘っていたのだ。
想いを通じ合わせた相手であるのに、自分は彼のその変化に気が付かなかった。
気にかけることをしていなかった。

「(ジタンに言われるまで気が付かなかったなんて、・・・おれって本当にばかだ。)」

俯くスコールにバッツは謝罪と安心感を与えられるように・・・と彼を優しく、包み込むようにふわりと抱きしめた。

「大丈夫だよ。おれが・・・みんながついているんだ。戻るさ。」

今日の中間報告のとおり、スコールを戻す手がかりを掴んだ段階で大変なのはこれからだけれど、きっと戻る、と笑いかけると、スコールは俯いたまま、話を続けた。

「もし・・・俺が女性のままなら、本来あるべき恋愛の形には落ち着くとしたら?・・・あんたは、どう思う?」

この問いにバッツは少し面喰ってしまった。
自分たちは同性同士で想いを通わせたが、スコールがそのように考えているとは思っていなかった。

元々、自分たちが寄り添うきっかけとなったのはスコールからだったため、まさか今更そのようなことを気にするとは思ってもいなかった。

「おまえ、それを承知の上でおれ達は一緒にいるだろ?」
「しかし・・俺は今・・・女だ。」

そう言ってきたスコールの顔を窺うかのように見つめる。

不安の色の顔をしており、ここ数日仲間達に悟られないようにひとりで心の中に押し殺してきたに違いない。
もっと彼と一緒にいればよかったとバッツは後悔を胸に抱きながら、一度瞼を閉じて、考える。

少しの間の後、バッツは再度スコールを見つめて、抱きしめたまま、ぽんぽんと優しく背をたたき、ゆっくりと、言葉を選ぶかのように話し始めた。

「・・・まあ、おれは女のスコールも愛せるとは思うし、スコールの言うとおりかもしれないけどさ、女のスコールは本来のスコールじゃないからなぁ。」

そう答えるとスコールは伏せていた顔を上げてバッツを見つめてきた。
二人の目が合うと、バッツは穏やかな表情で話を続けた。

「たとえ女になってもスコールはスコールだったよ。けどさ、本当のスコールは男じゃないか?だから・・・元に戻ってほしいよ。」

そういうとスコールの額に自分の額を合わせる。

「ごめんな。スコールが不安に思ったり、そんなふうに考えていたなんて気がつかなくてさ。」

謝ると、彼は少し間を置いた後にゆっくりと首を横に振った。

「いや・・・俺も、素直にあんたを頼って話せばよかったんだな。・・・すまない。」

一番頼れる、頼るべき相手に心のうちを早く打ち明けていれば、もっと早く不安を拭い去れていただろう。
目を伏せるスコールにバッツは苦笑交じりの笑顔で彼の髪を梳くようにゆっくりと撫でながら話しかける。

「甘えベタで遠慮がちな性格で、自分を強く持っていて。うん、全然変わってない。・・・おれは、そんなお前が大好きだよ。」

バッツがそういうと、スコールはまっすぐバッツの瞳を見つめる。
小さな声で「ありがとう。」というと、彼の頬に手を添えて自分の方を向かせると、ゆっくりと顔を近づけてきた。

「(あ・・・。)」

キスをされるのだと思った時にはもう唇が重ねられていた。

久しぶりの口づけにバッツもまた瞳を閉じて触れられただけのそれを堪能する。
いつもと少し違う唇の感触。けれど全く変わっていないスコールのキスの仕方に嬉しさと、懐かしさと、ほんの少しの寂しさを覚えた。

いつもよりも少し時間を掛けた口づけが終わると、バッツは少し照れ臭そうに笑いながらスコールを再度抱きしめた。

「今のスコール、柔らいし、美人になったけど、やっぱり早く戻って欲しくなったよ。・・・・おれを抱き締める強い腕と広い背中がちょっと恋しくなった・・・かな?」

現金かな?と、はにかみながら答えるバッツにスコールは穏やかな表情で彼を見つめてくる。
先程までの不安や迷いのある表情とはちがい、ようやく、スコールらしい表情に戻ってきたとバッツは内心安堵した。

「(スコールとみんなと、おれ自身のためにも早く戻ってもらわなきゃなぁ。)」

彼を戻すために、明日からも頑張らないといけないなと再度決意すると、バッツはベッドから立ち上がりそろそろ休もうとばかりに伸びをした。

「さて、明日からまた頑張るかな?今日はそろそろ休むとするか?」

座ったままのスコールにバッツはそういうと、おやすみの挨拶をして自室に戻ろうとしたところで、彼に腕を掴まれて止められた。
スコールの意図することがわからず、首を傾げると、彼は少し躊躇った後で、バッツに話しかけてきた

「今夜は、一緒に寝ないか?」
「・・・え?」

まさかこのような誘いをされるとは思っていなかったため、驚いたような声を出してしまった。

「テントの時は当たり前だっただろう。・・・だめか?」

テントで休んでいた時は隣に眠っていたことが何度もあったが、今のように恋仲ではなかったから何とも思っていなかった。けれど今は・・・。
スコールの誘いに顔を少し赤くするバッツに、彼は不思議そうに首を傾げている。

「(普段が普段なだけに、たまにこういうことをしてくるから、びっくりするんだよなぁ・・・。)」

偶にだが、外見に似合わず、子供のように純粋で、なんの含みもないことを言ってこられるため心臓に悪いと思うバッツにスコールはまったく気が付いていないようだった。
自分も鈍感な部類だがスコールも案外鈍感なのかもしれないと思いながら、早くなった鼓動をなんとか悟られないように首肯する。

バッツの様子に彼は少し嬉しそうな顔をしてシーツをまくって寝台に横になると自分のすぐ横をポンポンと叩いてバッツを見つめてきた。
ここに寝ろということなのだろう。バッツは笑いながら小さく頷くと大人しく彼の横に横になり、一枚の毛布を共有する。

二人は一度目を合わせるとおやすみの言葉と共に瞳を閉じて互いの存在を近くに感じながら穏やかな眠りについたのだった。





翌朝、横に眠っていた年下の想い人は元の男性に戻っていた。
いきなり戻ったことで、本人を含めて仲間たち全員は驚いたものの、皆喜び、安堵した。

「よかった!本当に元に戻ってよかった!」
「喜んでくれるのはいいが、いい加減離れてくれ。」

特にティーダに至っては再び泣きそうな顔をしてスコールに飛び付いたため、不快そうな表情の彼にガンブレードの柄の部分で殴られ、仲間たちに笑われた。

数日ぶりのいつもの日常が再開されたのだった。

「しっかし、なんで急に戻ったのかねー?」

久しぶりの三人での探索の道中でスコールを見ながらジタンは呟く。

「さぁな。けど、元に戻れたんだ。それ以上はもういいさ。」

ジタンの問いかけにそっけなく答えるスコール。
彼の表情はほとんど変化は無かったものの、久方ぶりの外出と武器の感触に機嫌がよさそうだ。
隣を歩いているジタンも尻尾が楽しげにゆらゆらとゆれている。

「(何もかも元通り。スコールが元に戻ってくれて本当によかった。)」

バッツはそんな二人の様子を嬉しく思い、彼らの様子をのんびりと眺めながら後ろをついて行くように歩いていく。
昨晩とは違い、スコールの広い背を眺める。
そこでふと、思い出したかのように肩にかけていた自分の荷物入れからあるものを取り出した。

それは、半端な量の変化の粉の小瓶だった。
バッツは手に持った変化の粉のビンをゆっくりと見つめる。

なんの変哲もない変化の粉。

スコールが女性になったのは、これが原因だったが、何故性別が逆転するように作用したかはわからずじまいだった。

なにがきっかけだったのかと考えて、ふと、今回スコールは、彼自身性別が逆転してしまったことで、男女の、本来の恋愛のあり方についてを口にしていたことを思い出した。

「(もしかして、変化の粉がスコールの心に作用したのかな・・・?)」

もし、本当にもしもの話だがスコール自身が心のどこかで同性同士の恋愛を不安に思っていて、もし片方が女性だったらと、無意識のうちに考え、それに変化の粉が反応したのだとしたら・・・?

今回、彼は女性になったことで、性別と恋愛について悩み、拘っていたような気がする。

彼の中の迷いが形になって現われたのではないのだろうか・・・。

ジタンと共に前を歩くスコールの背を暫く見つめ、そして首を横に振った。

「(今となってはわからないけど、戻れたことに安心していたんだ。わざわざ考える必要もないだろう。)」


バッツはそう結論づけると、前を歩く二人に追い付くべく、軽い足取りで走りだしたのだった。


-----
まずは、おつき合いしていただきましてありがとうございました。
女体化ネタは賛否両論あるのかなと少しビクビクしながら書かせていただきました。(一度書いてみたかったんです、攻めの女体化)

最後まで読んでいただきましてありがとうございました!!


[ 24/255 ]


[top][main]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -