逆転の結果 -1-

8女体化ネタ。
女体8ですが、85です。
苦手な方はリターンお願い致します。


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少し短めの艶々とした濃い紅茶色の髪。
切れ長の蒼い瞳。
白い細面にすらっとした長い手足。

目の前に立っている長身の美女にバッツは目を擦り、おずおずと問い掛けた。


「・・・おまえ、スコール、か?」




今日は戦闘も探索も行わない休息日。
一部の見張りの任に就いている者を除いた仲間たちはそれぞれ好きなことをして過ごしていた。

普段忙しくてできないことをしておこうと考えたバッツは、久々に素材の整理をしようと、拠点にしている城の一室で作業をすることにした。
素材が入った大袋を複数抱えながら部屋に向かうと、偶々、暇を持て余していたスコールと途中でばったり遭遇して、話をすると、手伝いを申し出てくれたため、二人で種類ごとの素材の名前と個数を紙に控えていた時のことだった。


ガシャーン!!


部屋の窓ガラスが割れたと思ったら、次の瞬間、ガラスを割った物体が僅かに速度を落としてスコールの横に陳列された素材に向かって落下した。


素材はどうやら粉末タイプのものだったらしく、粉塵が舞い、スコールの姿があっという間に見えなくなってしまい、彼の存在を確かめられるのは、粉を咳き込む声だけだった。
バッツは慌て口元を押さえて、目を凝らして何とかスコールの姿を確認しようとしたが見当たらず、やむを得ず、ティナのトルネドを押さえ目にしたものまねしたものを発動させて粉を吹き飛ばした。

粉塵は飛ばされ、黒い人影が見えてホッとしたのもつかの間、バッツはスコールに声をかけようとしたところで硬直した。

消えた粉塵から表れたのは先程まで隣にいたスコールではなく、彼と同じ格好をした長身の美女だったからだ。

そして話は冒頭に戻る。

目の前の女性がスコールかどうか確認するためにバッツが問いかけると、スコールと思われる美女は首を傾げながら答えた。

「当たり前だ。一体何を言って・・・!?」

言いかけたところでスコールは口元を押さえて動揺する。
いつもの低い声ではなく、女性の声に恐らく驚いたのだろう。

驚愕の表情のまま、自身の手と体を確認しだす。
服装は確かにスコールそのものなのだが、体付きは明らかに女性のそれだった。
女性にしては長身でややがっしりした体付きだったが、全体で見ると手足が長く細く見える。
控えめながらも胸は膨らんでおり、心なしか尻の肉付きが少し増したように思える。

「・・・これは一体どう言うことだ!?何故性別が逆転している!?」
「・・・やっぱりスコールだよ、な。」

バッツはいきなり美少年から美女に変貌を遂げたスコールに目眩を起こしそうになった。
普段何事にも動じない方だが、いきなり性別が逆転してしまえば、驚かない方がおかしい。

「なんで女になっちまったんだよ!?」
「それはこっちが言いたい。・・・普通に考えればさっきの砂塵のせいだろう。数種類の素材の作用か?」

性別が変わってもスコールはスコールらしく、多少の動揺の色はあるものの、冷静に状況分析をしはじめる。
その様子に、バッツはこういう時くらい体全体使って驚いてもいいのではと思ったのだが。

そう思われているとは知らず、スコールは屈み、床に転がっていた素材の容器を一つと、そばにあったボールを拾ってバッツに見せてきた。

「・・・どうやら、発端はこれだろう。」

スコールが手に持っているボールは球体にところどころに半円の凸が付いているものだった。

この特殊なボールの持ち主は、同じコスモスメンバーで球技を技に組み込んだ少年一人しかいない。

犯人が分かり、二人で頭を抱えていると、軽快な足音が近付き、勢い良く部屋のドアが開いた。
中に入ってきたのはボールの主でおそらく犯人である同じコスモス軍の仲間の少年、ティーダだった。
どうやら、先程窓を破って入ってブリッツ用ボールを回収に来たといったところなのだろう。
彼は無邪気な笑顔を浮かべながらキョロキョロと辺りを見渡し、二人と目が合うと朗らかに挨拶をしてきた。

「お、いたんすか!悪い、ボールがこの部屋に入ってしまったから取りに・・・ってあれ?そのひと、だれっすか?あ、もしかして新しく召喚された仲間っすか!?」

バッツの横に立っているスコールを指差して首を傾げる。
どうやら、ティーダは女性をスコールだと気付いていないらしいようで興味津々の表情で見ている。

どう説明しようかと、バッツは悩みつつ、取り敢えずティーダを部屋に招くと、ティーダは素直に二人のもとにニコニコと歩み寄ってきた。


・・・数分後、ティーダの絶叫が城中に響き渡り、仲間たちが集まったことにより、あっという間にスコールが女になってしまったことが知れわたることとなった。



「不思議なこともあるものだね。」
セシルがおっとりとした口調でスコールを見る。

「・・・少し鋭さが増したか?」
さして気にしていないような雰囲気でクラウドが感想を述べた。

「・・・不運だったな。」
哀れみを込めた瞳で、フリオニールが呟いた。

「一体何故そうなった。」
表情を変えずにリーダー格のウォーリアが問うと、おずおずと四本の手が上がった。

手を挙げたのは、ティーダ、ジタン、オニオン、ティナの四人だった。
四人の説明によると、休息日で何もすることがなかったため、ティーダのボールでボール遊びをしようということになった。

二人チームに別れてバレーをして楽しんでいたのだが、最中で力加減が上手くできなかったオニオンが放ったレシーブが敵チームにいたティナに襲い掛かってきたのだ。
同じチームでたまたま彼女のすぐ隣にいたティーダがティナにボールが当たる寸前にそれを思い切り蹴飛ばして彼女を守ったのだが、ボールはそのまま拠点としている城の一室の窓を破り、スコールが整理していた素材の山に突っ込んでしまったという訳である。

申し訳なさそうな顔をしている四人。とりわけボールを蹴り飛ばしたティーダ本人は何度もスコールに平謝りしている。

「スコールごめん!!本当にごめん!!」

今にも泣き出しそうな表情のティーダに、スコールは内心「(泣きたいのはこっちだ。)」と呟きたかったが、それを言おうものならティーダが本当に泣くと思われたので「気にするな。」とばかりに黙って首を横に振った。

「・・・こうなってしまった以上は仕方がない。それ以上謝らなくていい。」

スコールがそう言うと、ティーダはぐずぐずと鼻を鳴らして小さく頷いた。
普段明るくよく笑う少年は、相当の泣き虫なようで、その様子をみていた仲間たちはスコールとティーダ、どちらが不憫なのかがわからなくなってしまった。

鼻を垂らし、涙目になっているティーダをフリオニールは「しっかりしろ。」とばかりにぽんと彼の頭に自分の手の平を優しく乗せた。

「まぁ、スコールの言うとおりだが、どうすればもとにもどるか考えなければな。」

タオルを取り出し、使えとばかりにティーダに渡しながらフリオニールが呟く。

「もしスコールが男に戻れなかった場合はティーダ、お前が責任をとれ。」
「い、いくら美人でもスコールが相手はいやっすよー!!」

クラウドの冗談に聞こえない冗談に、ティーダが顔を引きつらせて顔色を青くさせた。

美人になってもスコールはスコール。女性でも元は男で傭兵なのだ。
しかも、仲間たちから空気が読めないと評され、ただでさえ彼の地雷を踏みやすい自分。
もしスコールが気に入らないことをしでかそうものなら、ガンブレード片手に実力行使で自分に向かってくるであろう姿が安易に想像できてしまった。

本気で嫌がるティーダにフリオニールとセシルが宥める。
「いくら冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろ。」とジタンが呟くと、クラウドは「悪かった。」とばかりに肩を竦めた。

「クラウドの冗談はともかく、フリオニールの言うとおり、まずはどうしてそうなったのか考えなければね。」

ティーダの頭をゆっくり撫でながらセシルはバッツに声を掛ける。

「ジョブの力で何とかならないかな?」

セシルの問いにバッツは片方の手を頬に当てて少し考えた後に答えた。

「おれのジョブの中に”白魔道士”と”薬師”のジョブがあるからそれが使えると思う。治癒魔法が効果的なのか、原因となった素材を分析した方がいいのか今の段階じゃわからないからこの2つのジョブで調べてみようと思う。」

バッツがそう答えると、遠慮がちにオニオンが手を上げてきた。

「あの、僕も手伝うよ。僕は”学者”か”賢者”になってみれば少しは力になれるかもしれない・・・。」

ボール遊びに参加し、自分が無茶なレシーブを放たなければティーダのボールがスコール女性化の原因にならなかっただろうと責任を感じているようだった。
それを察したバッツが「じゃあ一緒にがんばるか?」とオニオンの背を叩くと、彼は少し表情を明るくし、「うん。」と頷き返した。

二人のやり取りにセシルはほっとした表情をし、ウォーリアが「うむ。」と頷いた。

「スコールが女性の体になってしまった以上は戦力の低下は否めない。本人の精神的な疲弊も考えると一刻も早く元に戻すことを優先させた方がいいだろう。」

皆が首肯すると、ウォーリアはスコールの方を向き直り、剣を取り出すように促した。
ウォーリアの意図することを察したスコールはガンブレードを具現化させ、戦闘と同じように剣を構えた。

「・・・スコール、元の姿に戻るまでの間のことだが、どのくらいのことができそうか図るために剣を振るってみてくれ。」

ウォーリアの問いに、スコールは頷き、手に持っていたガンブレードを数回振るってみた。

空を切る音は鋭く、振りおろす速度は速い。
しかし、それはあくまで女性にしてはであり、元の男性の時に比べると、動作は遅く、剣を振りおろし、振り上げるといった動作を繋ぐ際に体や切っ先がどうしてもぶれてしまうようだった。

動作を終えると、スコールは至極残念そうに首をふり、ガンブレードを構えるのをやめて剣を元に戻した。

「・・・ガンブレードが重く感じる。やはり男性と女性では力の差が出てしまうようだ。」

正直な感想を述べ、「戦闘要員として数えない方がいいだろう。」と全員に告げると皆がため息をついた。

戦闘要員として数えることができないのは、スコールと、そのスコールを戻すために調査を行うことになったバッツとオニオン。
この3人を除くと、男性6名と女性1名。

ティナとオニオンは魔法は得意だが武器を使用した戦い、特に接近戦が他のメンバーと劣るために、普段どちらかと言えば見張りや補助要員として控えており、普段の外での任務は男性8名でローテーションを組んでいる。
しかし事態がこうなってしまったため、周辺散策や討伐などの任務を実質6名で行わなくてはならない。

人数が元の8名の男性ならば、日頃忙しい中でも休息をとることができたのだが、6名体制ともなると、それも難しくなってくるだろう。

ただでさえ、忙しい毎日を過ごしているのに、さらにそれがひどくなるのかと思うと、6名の男性はため息を吐いた。


ティナはおろおろとした表情で6名の仲間たちの様子を窺い、同じ様に見ていたオニオンも困った顔をしている。
一方、一時的とはいえ調査のため控えとなったバッツの方はスコールの体を元に戻すためにはどのようなことをすればいいのかと腕を組んで考え始めているようだった。

仲間たちの様子を見て、表情こそは変わらなかったものの、スコールは内心深く落ち込んでいた。

戦闘能力が低下し、普段と勝手が違う女性の体での生活に不安を感じる。
そして、何よりも自分と恋仲であるバッツの存在。

彼は女になってしまった自分をどう思っているのかが気になる。

自分たちは同性同士で恋愛関係にある。
同じ性をもつ自分が女性に変化してしまったことをバッツはどう思っているのか。
彼は先程からほとんど何も言わない。

本来なら男性と女性、それぞれ自分の性と違う人間に惹かれるのが当然なのだが自分達は違う。

「(バッツは、俺がもし戻れないとなったらどうするつもりなのだろうか・・・。)」

もし、女から戻れなくなったなってしまったとしたら、バッツはどう思うのだろうか。
悲しむのか、・・・喜ぶのか。

本来の恋愛関係とは別の性の者同士であることが大半なのだからバッツも自分と恋愛関係になる前は女性とそういう間柄になると思っていただろう。

スコールは成分の分析を始めようとしているバッツの様子を盗み見し、そんな考えを振り切ろうとするかのごとく髪を掻き揚げる。

指を通る髪の質感が普段と比べてつやつやとすべらかであることに気づき、自分の体が女性の体になってしまったことを改めて感じ、本日何度目になるかわからないため息をこっそりと吐いたのだった。


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