意外な弱点 -2-

二人がコスモス陣営に戻ってきたのは日が暮れる少し前だった。

デジョントラップにはまって別空間に飛ばされたジタンが自力でコスモス陣営に戻って、他の仲間達に事情を説明し、何人かでチームを組んで戻ってこない二人を探しに行こうとしていた時にバッツを背負ったスコールが戻ってきたのだ。


二人が無事だったことに全員安堵したものの、土埃とかすり傷だらけの二人に仲間たちは甲斐甲斐しく世話をはじめた。

「かすり傷だらけだね…今ケアルをかけるよ。」

セシルとティナが二人にケアルをかけてキズをふさぐ


「かなり薄汚れているな。湯を用意するから二人で入れ。」
「オレも手伝うっすー!」
「僕も手伝うよ。薬湯を少し混ぜておくね!」
クラウドとティーダ、オニオンは風呂の準備をするために部屋を出ていった。

「…しかし、すごいキズだな。一体なにがあったんだ。バッツが歩けなくなるくらい激しい戦いだったのか?」

軽い消毒を施すフリオニールが何気なく聞いた言葉にバッツが一瞬ビクリと体を跳ねた。


「二人とも、無事で何よりだったが、一体何があったんだ?」

傷の手当てをうける二人にウォーリアが聞く

飛び降りた怖さに腰が抜けたバッツからすれば事情を話すのは少々ためらってしまう。

しかし、仲間を心配させ、ズタボロになって帰ってきたなら事情を話さないといけないだろう。

バッツが話しはじめようとしたが、先に口を開いたのはスコールだった。


「古い遺跡を見つけて、中に入ったらイミテーションに遭遇した。戦っている最中に足場がやられて落ちかけたんだ。…遺跡が崩れる前に離れようとしたんだが高さがあって着地がうまくできずにバッツは腰を打ち付けたんだ。」


スコールはバッツが腰を抜かしたことを隠して、ウォーリアとフリオニールに説明をした。

バッツがあっけにとられている間にスコールは仲間達に心配をかけさせたことを詫び、打ち付けたことになっているバッツの腰の手当てをしようとしたフリオニールに自分が手当てをしたから大丈夫だと伝えて、バッツを背負ってさっさと部屋に戻った。


「なんで言わなかったの?」
部屋に戻るなりバッツは開口一番にスコールに聞いた。
上着を脱ぎかけたスコールは一瞬バッツの方をちらりと見て、脱ぎかけの上着を空いた椅子に掛け、服の埃を落としながら答えた。

「言う必要がなかったからな。…あんたにとっては、不名誉なことだろう。」

答えるスコールにバッツは少し顔を赤らめながら頭を掻く。

この三つ下の少年には今日は迷惑をかけっぱなしだ。
飛び降りるまで散々ごねた挙げ句、いざ飛び降りたら叫び声をあげて気絶し、無事着地した後でも腰を抜かして歩けないという醜態を晒してしまった。

しかも、仲間にはそんな事実をうまく隠して説明してもらい、部屋に戻るまで背負って歩いてもらう始末。

「…ありがとな。」

ぽつりと言ったバッツにスコールは替えの服を取出しながらなんでもないと言うように手を振った。
ジタンやティーダとは違い、己の失敗を笑うことなく対応するスコールにますます頭が上がらない想いだった。

「なさけねー…。」

自然と出た言葉にスコールが振り向く。


「おれ、一応年上なのに、今日はスコールに迷惑かけっぱなしだ。」

しょげるバッツにスコールは近付き、替えの服とタオルを差出し、口を開いた。


「誰だって苦手なもののひとつやふたつあるだろ?…それを補うために俺や…仲間たちがいるんだろ?」

そう言うと座っているバッツの膝に衣類を落とした。


「あんたがそうやって落ち込んでいると正直、調子が狂う。落ち着かないからやめろ。」

スコールはそれだけ言うと、立てないバッツの方に背を向けて腰を落とした。

「まだ歩くのは辛いんだろう?浴室まで背負う。・・・今日一日俺が補助する。普段はあんたに世話になっているからな。」
「オレ、重いだろ?」
「男にしては軽い方だ。今日ぐらいは甘えておけ。」

スコールはそういうと半ば無理やりバッツを背負い、衣類を持った。
表情はみえなかったが、声はやさしかった。

「(・・・ああ、そうか。)」

自分を背負う少年は己の醜態を迷惑とも思っていないらしい。
表情こそは変わらないものの、一緒に旅をしてきて、表現するのが下手なだけで心優しい少年なんだとバッツは思った。

「・・・じゃあ、助けてもらっていいか?」

背負うスコールにバッツは少し控えめに問いかけた。
スコールの体一瞬止まったが、暫くするといつもの落ち着いた声で返事が返ってきた。

「そうしておけ。今日は散々迷惑をかけられている。これくらい何ともない。」

愛想ない返事だったが、精一杯の優しさなのだろう。

「じゃあ遠慮なく!」とバッツは答えると、スコールはバッツを背負い直し、浴室へ向かうべく部屋を出たのだった。




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