おわりとはじまり -2-
スコールとの出来事以来、バッツは必要最低限の探索と戦闘のみで、ほとんどを城内での雑務を行って日々を過ごすことにした。
どうもスコールといると心臓が騒がしい。
落ち着かない。
悪いと思いつつも、収まるまでは暫くは必要最低限の交流以外は避けたほうがいいと思い、自分の部屋に引っ込んで過ごすことが多くなった。
そんなバッツの様子を他の仲間よりも長く供にいたスコールとジタンが気付かないわけはなく、今日もほとんど姿を見せない仲間を心配しため息をついた。
「普段は元気が服を着て歩いているようなやつなのにどうしたのかねぇ。」
自分の横に座っているスコールにジタンはつぶやいた。
本来なら三人で雑談したり、茶を飲んだりしている時間帯なのにここ数日は姿を見せていない。
ジタンは自分が知らないならスコールが何かを知っているだろうと思ったのだが、何の反応もみせなかったため、知らないと判断し頭を掻いて天を仰ぐ。
暫くの沈黙。何も話すこともないようなので、ジタンは今日の探索で手に入れてきた宝物の整理でもしようとした時、ふいにスコールが呟いた。
「…俺が知らないうちになにかしてしまったのだろうか?」
「え?なんだよ?いきなり。」
スコールの言葉に首を傾げる。
知らないうちに二人に何かあったのだろうか?
ジタンはスコールがバッツに恋愛感情をもっていることは知っている。
しかし、目の前にいる少年は年齢の割りには大人びて落ち着いている外見に反して、純情で奥手だ。
わざわざ自ら大胆に行動をすることはまずないし、第一少々遠慮がちな性格をしているとジタンは思っているのだが。
「お前がか?それはないんじゃねぇの?…あーでも気になることがあるなら言ってみろよ。第三者からの見方ってのもあるだろうしさ?」
中々気遣うのが上手い年下の少年に内心感謝しつつ、スコールは話しはじめた。
先日バッツの部屋に夕食を届けにいったこと。
その時のバッツが挙動不審だったこと。
明らかに体調不良ではないのにそれを理由に部屋から追い出されたこと。
それ以来、バッツとはほとんど会話もしていないし、顔をあわせるのもみんなで集まった時くらいだということを。
スコールの話を聞くかぎり、スコールが何かをやらかした可能性は低そうだとジタンは思った。
最近も体調不良を理由に自分達と行動を取っていないことをそのまま受け取っていたのだが、別の理由があるのかもしれない。
「まぁ…話し聞くかぎりはお前が何かして気を損ねたってことはないと思う。」
心配するなよとばかりに笑ったが、スコールは答えなかった。
無表情だが、何となく気落ちしているようにみえる。
想い人がここ数日まともに姿を表さない原因が自分にあるかも知れないと思うと当然といえば当然なのだが。
「(…重症だな。こりゃ、バッツ本人に聞いたほうがよさそうだな。)」
ジタンはそう思うが早いとばかりに、立ち上がるとそれに気付いたスコールが顔を向けた。
「オレ、ちょっと急用。見つけたお宝の整理頼むわ。」
そういうと宝の入った袋をスコールに押しつける。
「なぜ俺が…。」
「まぁまぁ、半分はお前が手に入れたんだし、気を紛らせろって。」
嫌そうな顔をしつつ、受け取るスコールにジタンは任せたとばかりにサムズアップし、部屋を出ていった。
残されたスコールはため息をつき、特に何もすることはないので袋の口を開いて大人しくお宝整理を始めることにした。
一方バッツの方は一人、城の屋上で日の光を浴びながら昼寝をしていた。
正確にはただ横になっていただけで、眠れずにただぼうっとしながら空を眺めていた。
今日は雲一つない空。
濃い青が広がっていて清々しい天気だった。
今日の空は一段ときれいだと思ったのだがスコールの瞳の青が海と空どちらに近いかを考えていたことを思い出してしまい、胸が苦しくなる。
この前の一件以来、スコールとジタンと行動を殆どとっていない。
寂しいと思いつつも原因がわからないので何となく会いたくない。
バッツは懐から普段大切に持ち歩いている゛幸運のお守り゛を取り出す。
今この場にいない相棒を思い出し、どうすればいいかと聞いてみたが当然答えてくれるわけがなかった。
思えば、この羽根がスコールと自分を繋げてくれる結果になったのだと思い、なんとも言えない気持ちになる。
普段ほとんど吐くことのないため息を吐くと羽根をしまって再び横になった。
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