誓い -1-

ジューンブライドにちなんで思いついたお話。
後半85で両想い設定です。

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コスモスの戦士達が旅の途中で遭遇した断片は、そこそこ文明が発達した世界の街の一つのようだった。


久しぶりにきちんとした食事と風呂を堪能し、柔らかなベッドで眠れると期待した仲間たち数名が街を偵察すると、街の中心に大きなチャペルを発見してきた。

中に入ると式場に控室や衣裳部屋に豪華な装飾がされた大広間があり、建物の外には青々とした芝生が広がっている。

チャペルの隣にはホテルが併設されており、もうすぐ日暮れということもあって今日はここで休息をとることに決めた。

建物内を好奇心旺盛なジタンにティーダ、バッツが探索すると大きな衣裳部屋を発見した。
中には沢山のドレスにスーツ類、アクセサリーが並んでおり、3人は他の仲間を大声で呼んだ。

「すごいね。」

整理整頓された室内の衣裳の数にセシルがつぶやく。

軍で大きな地位についていた彼が衣裳の生地を確かめるとどれも肌触りがよく、決して安いものではないとすぐにわかった。

ティナとオニオンはディスプレイされたドレスを二人で眺めている。
他の仲間たちも室内をぐるりと一周したり、興味深そうに衣裳や装飾品を眺めたり触ったりしている。


「すごいだろ?こんなに沢山の衣裳なんてそうそうお目にかかれないよなー。」

ジタンは自分の身長に合いそうな服を鏡の前で合わせながら他の仲間に言うと、何人かうなずき返してきた。


「なぁなぁ、みんなでこの衣裳着てみないか?たまにはさ、戦いを忘れて楽しもうぜ?」


長い旅路の中でこのような機会はめったにない。
バッツの提案にオニオン、ジタン、ティーダが楽しそうな提案に即座に同意する。


しかし、ほかの男性陣は苦笑したり、または乗り気がしないといった顔をする。

敵の気配がないとはいえ、万に一つ何かあった時にすぐに戦える体制でないといけない。
リーダー格のウォーリアがそう言おうとした時に、ティナが歓声を上げた。

その声の方に視線を向けると、ティナがディスプレイされているドレスの目の前に立っていた。


純白のドレスに繊細なベール。
パールのネックレスに揃いのイヤリング。
白い色の華奢なヒール。


一目でウエディングドレスと全員わかった。


「このドレス…綺麗…。」

うっとりとした表情でそういうティナの表情にウォーリアは口を噤む。


その隙をついて、ジタンとティーダがティナのそばに駆け寄りドレスを着てみるように勧めた。

「そのドレス、ティナちゃんに似合いそうだな!シンプルなデザインだからアクセサリーはちょっと豪華にするのもよしだなぁ。」

「それか髪型を工夫するかかな?ビーズやクリスタルとか編みこんだらきっと綺麗になるっすよ!!」


服装に敏感そうな2人ならではのセリフにフリオニールとセシルは苦笑し、ウォーリアの方を向く。

「あんなに嬉しそうに話しているのだから、バッツの提案に乗ってみてはどうか?」と顔に書いている。

ウォーリアが他の仲間を見るとオニオンやティナに甘いクラウドはこくりとうなずいて賛同し、スコールは「まかせる」というように肩をすくめた。





「よーし、ティナ以外は着替えたみたいだな!!」

バッツの目の前にはティナ、ジタン、ティーダ以外の男性陣が衣裳に着替えて集まっていた。

もうすぐ夜なのでウォーリア、フリオニール、セシルは燕尾服に、バッツ、クラウド、スコールはタキシードに着替えている。

まだ身長が低いオニオンは少し裾の短いパンツをはいているものの、少しでも落ち着いて見えるようにネクタイを締めていた。

色は黒や白、少し青や銀がかったものなど自分に似合うもの、タイやカフス、靴などでそれぞれ個性を出していた。


「みんな、よく似合うね。」

セシルがそういうと、フリオニールとオニオン、バッツは笑って礼をいい、ほかの3人はさして反応しなかった。

「ねぇ、ティナは?それにジタンとティーダがいないけど?」

オニオンがきょろきょろと室内を見渡すが、3人の姿がない。
するとバッツは笑いながら答えた。

「ティナのヘアメイクをしているんだよ。ドレスを着ただけじゃ勿体ないからだってさ。」

劇団員のジタンにおしゃれそうなティーダならではの世話焼きに何人かが苦笑する。
ティナ達が着替えている間に休憩のため、広間の方に移動することにした。



建物内には酒や食料があり、バッツとフリオニール、セシルが着替える前に手早く軽食の準備をしていたため、広間にそれを出してパーティのようにセッティングすることにした。

量が足りない分は果物を切ったり、チーズやハム、ソーセージなどの加工食品を焼いて足りない量を補った。

それらしくなったところで、ジタンが走ってきてティナの準備ができたと知らせる。


ジタンが走ってきた方向を見ると純白のドレスに身を包んだティナと、長いベールを歩きやすいように持って歩いているティーダがやってきた。


ドレスとベールは先ほどディスプレイされていたものだったが、そのドレスに合うように、すこし大きめのアクセサリーを身に着けていている。

ダイヤとパールのネックレスに、イヤリング。

ベールと華奢なティアラを身に着け、髪型は髪色にあう銀糸と小さなパールで編みこみを作ってアップにしている。

手に持っているブーケは白いバラとブルーのリボンが付いたものだった。



仲間たちのそばにやってくるとティナは照れ臭そうに微笑み、ジタンとティーダは「どうだ!」と言わんばかりに胸をはった。

「すごく綺麗だよ。」

「…ティナの雰囲気に合っている。」

セシルとクラウドが褒めると、見とれていたオニオンが慌ててうなずく。

フリオニールもティナの姿に照れながらもかすれた声で「似合うな。」と褒める。

バッツはにこにこと笑って拍手し、スコールは何も言わなかったが一度小さくうなずいた。


ティナがそろったところでちょっとしたパーティをはじめようとしたが、ジタンがそれを制止し、結婚式の真似事をしようといいだした。

名目はティナがせっかく着替えたからとのことだったが、下心を見抜いたオニオンが反対し、クラウドも無言でそれに加勢した。

しかし、ティナ自身が「おもしろそう。」とジタンの提案に乗ったため2人は引き下がった。


新婦はティナで決定だが、新郎役をやるかでジタンとオニオン、楽しいことが大好きなティーダで揉めそうになった。
いつまでも拉致の明かない言い合いに公平な判断をするフリオニールが割って入った。


「ティナと一緒にいる時間が長いオニオンとクラウドがすればいいんじゃないか?3人なら気楽にできるだろう?」


2人なら本当に結婚式を挙げているようにみえて重い。3人ならままごとっぽくていいんじゃないかとのことだった。

フリオニールの提案にしぶしぶといったようにジタンとティーダが引き下がるとオニオンはほっと安心した表情になった。

すると、バッツが神父の役をすると言いだし、ほかの仲間はティナ達三人から少し下がった位置に移動する。


ティナは嬉しそうにオニオンとクラウドの手をとりにこにことバッツの言葉を聞く。

オニオンは少し照れ臭そうに、クラウドは無表情だったが嫌そうには見えなかった。


「病める時も健やかなる時も3人とも愛を貫くことを誓いますか?誓うよな?」

おおざっぱに、明るくいうバッツにティナは笑いながら誓いますと答える。


「ではではお待ちかね。誓いのキスをどうぞ!」


バッツの言葉に何人かの仲間が驚愕する。

ままごとだから無いだろうと思っていた誓いのキスを盛り込んでくるとは思っていなかったのだろう。

当事者のオニオンは一番うろたえている。

しかし、ティナはにっこりと微笑むと、オニオンの顔の位置に合わせてしゃがみ、「これからもよろしくね。」というとおでこにキスをした。

ティナからのキスにオニオンは顔を真っ赤にしてうつむく。

次にクラウドの方を振り向くと、クラウドは制した。

「本当の相手にとっておけ。」

そういうとティナの頭に軽く口づけ、やれやれとばかりにため息をつき、未だに俯いて固まっているオニオンに「しっかりしろ」と背中を叩いた。

2人の兄貴分の位置にいるクラウドらしい締め方にセシルやティーダは笑い、フリオニールとジタンからは安堵の息が漏れた。


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