拍手お礼ログ5

■ 拍手お礼 連載ミニ小説
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いつも通り、起床し、制服に着替えて下に向かうと、期間限定の同居人はいつも通り明るい笑顔で挨拶をし、朝食の準備がされた食卓へ座るように勧めてきた。
二人そろって席について手を合わせると、彼はいつものように山盛りのトーストに手を付け始めた。
口いっぱいに物を頬張りながら、ニュースの間に流れている占いやペット紹介などが面白いのか時折笑みを浮かべている。
彼の態度が昨日の話などなかったことのように至って普通に見えるのであれは夢だったのではないかと疑ってしまうほどであった。

昨日の話題を一切口に出さないまま、出発の時間になり、弁当を受け取ってスコールが玄関の扉を開け、出ようとした時に、「スコール」と、名前を呼ばれた。
振り返ると、バッツが柔らかく微笑んでこちらをみている。

「行ってらっしゃい」

いつもの、明るい声ではなく、穏やかな、優しい声だった。

--行ってらっしゃい

学校へだけではない。彼が言いたいのはきっとそれだけではない。
そう察すると、これはただの挨拶ではなく・・・何故か自分に向けたエールのようなものに思えた。

「・・・行ってきます」

小さく返すと、目を細めて彼は笑った。
自分・・・自分達のために「なんとかする」と言ってくれた彼のその笑顔に複雑な思いを抱きながらも学校へ向かうべく外へと踏み出した。

パタン・・・

閉じられた玄関の戸をバッツは暫し見つめると、やがて背を向けて家の中へと戻っていった。

朝食の後片付けと部屋の掃除をし、庭の植木に水をやる。ここに来てからこなしてた家事をいつも以上に時間をかけて丁寧にする。
これから行うことを考えて高ぶりそうになる気と煩くなりつつある心音を落ち着けるために。

「・・・さて、と」

家事を終えると、バッツは上を見上げて、小さく息を吐く。
ある程度気の高ぶりが抑えられたことに安堵し、くるりと一回転して下界用の衣服から天界で着ている服に着替えた。そしてそのままの動作で天界へと移動をするべく、魔法陣を描き、術を発動させた。
一瞬の光とともに、バッツの姿が消えてなくなる。まるで、元から人などいなかったかのように居間の中を静寂が支配した。


天界に着くと、バッツはコスモスとカオスの元へは向かわずに、まっすぐ目的の場所へと足を進めた。
今日は報告のついでを装ってエルオーネに会う・・なんて面倒なことはしない。歩きながら今日の作戦を頭の中で確認する。
まずはエルオーネを待合室から連れ出すことである。色々と方法を考えたものの穏便にすませるのはかなり難しい。
クジャに真っ向勝負を挑むことを考えたが、彼は魔法に長けた上級の神で簡単にやられるわけがない。その上、自分達が勝負して騒げば他の神も集まってくるのでよけいに大事になる。

ここ数日、考えに考えたある作戦を、実行する。

建物に到着し、廊下をそろそろと歩いて、クジャの部屋の前に着くと、こっそりと部屋の中を覗き込む。
部屋の主であるクジャは苛立った様子で沢山の書類や本に囲まれながら仕事をこなしていた。クジャの傍にいるジタンも居心地の悪そうな顔で仕事の補佐をしている。エルオーネの件が上手くいっていないことは彼らの様子から明白であった。

バッツは足音を立てずに部屋を離れ、少し離れた、大きな柱で影になっているところに身を隠した。
まずは、誰にともなく両手を合わせて心の中で謝罪をすると、何かを唱え、そしてじっと待った。
数分後、遠くから地鳴りのようなものが聞こえてきた。それは「ドドドド」と音を立て、どんどんこちらの建物に近付いてくる。やがてそれは何か・・・団体の足音のようなものだとわかった。
足音の主達はまっすぐバッツやクジャ達がいる建物へと近付いてくる。そして扉を蹴破るような音と

「クエーッ!!」

という鳴き声が建物中に響いた。


「なんだなんだぁ!?」

沢山の職員達が部屋から飛び出し、ばたばたと慌ただしく走っていくのをバッツはじっと身を隠して見送る。そして数分もしないうちに悲鳴のようなものが聞こえてきた。

「な!?誰がこんなところにチョコボを寄越してきた!?」
「ギサールの野菜までなんでここにあるんだ!?」

職員達の声からどうやら術は成功したようだとバッツはほっと息を吐いた。
バッツが先ほど唱えた呪文は天界の鳥、チョコボを呼び寄せるものだった。このチョコボと呼ばれる鳥は性格は穏やかで大きな体と脚力が特徴の天界では乗り物として重宝されている。
だが、穏やかとはいったものの、例外的に興奮状態になることがある。ひとつは空腹時。もうひとつは食事の時である。
ちょうど餌の時間で腹をすかせたチョコボを呼び寄せ、ついでに好物のギサールの野菜を転移魔法で大量にこちらに運び、混乱させる。
ただ混乱させるだけなら、攻撃魔法をところかまわずぶっ放せばいいのだが、それをしてしまうと自分ひとり対建物内の職員全員との勝負になってしまい、敗退が目に見えている。
職員達が手荒なことができず、尚且つ騒ぎの大混乱に乗じてエルオーネを連れ出す方法で・・・と考えたのがこのチョコボ作戦である。

隠れていた場所から抜け、気付かれないように様子を伺うと建物内の職員神ほぼ全員がチョコボを取り押さえようと必死になっていた。
首にしがみついて振り落とされ、背後から捕まえようと近付こうものなら返り討ちのチョコボキック。
全員法衣は泥とチョコボの涎にまみれており、中々手こずっているようだ。そして、その集団の中に銀糸の髪の青年とその弟も混ざっている。

「チョコボ臭いったらありゃしないよ!!」
「お、落ち着けよ!!」

クジャの怒りの声とそれをなだめようとするジタンの声が大混乱の中にも関わらず響く。クジャは髪を、ジタンは尻尾をチョコボに引っ張られ散々な目に合っていた。
今目的の部屋には誰もいない。
バッツはもう一度その場にいる職員全員に心の中で詫びると、迷わずクジャの部屋へと走った。部屋の中に他に人がいないか念のため確認をすると迷わずに飛び込み、クジャの机に仕舞われているエルオーネがいる待合室のドアの鍵を探し出し、それを使って待合室の扉を開けると、おろおろとした様子のエルオーネがすぐ傍に立っていた。

「エルオーネ!!」
「バッツ!?ど、どうしたの?何かものすごく大きな鳴き声がしたけど、一体何が!?」

どうやら待合室にまでチョコボの鳴き声が聞こえていたらしい。不安そうな顔のエルオーネにバッツは「怖いものが来たわけじゃないから大丈夫」と宥める。
腹を空かせた大鳥の大群なので、嘘ではない・・・と思う。見たらびっくりはするかもしれないが。

この大混乱もいつまで持つかもわからないので、さっさと行動に移した方がよさそうだ。バッツはエルオーネの手を取り、部屋を出るように促した。

「とにかく、ここを出るぞ!!早く!!」

そういうやいなや彼女は驚き、手を引っ込めようとしてきた。

「え?ま、まさか・・・」

怯えた表情。今日は彼女が冥界に行くか行かないかを問われる最終日。
彼女の様子から冥界に連れて行かれると勘違いをしているのだろう。何も説明をしていないものだから無理もない。
抵抗しようとする彼女にバッツは慌てて首を横に振った。

「違う違う!!冥界に行くんじゃない!!3年前の約束を果たしに行くんだ!!」
「・・・バッツ?」

3年前の約束の一言でエルオーネは大人しくなり、大きな瞳を真っ直ぐバッツに向けてきた。
困惑の表情のエルオーネにバッツは、彼女の待ち人の名前を出した。

「スコールが待ってる」
「・・・もしかして、さっきの大きな音は・・・」

察したエルオーネにバッツは頭を掻く。
勘のよさそうな彼女にここで下手に言い訳をして時間をロスするよりもさっさと認めた方がいいだろうと判断し、素直に頷いた。

「・・・正解」
「正解って、なんでそんなことを!?そんなことをしたらあなたが・・・試験がっ!」
「いいんだ!」

狼狽えるエルオーネにバッツはきっぱりと言い放った。

「いいんだ!おれ、もっと大事にしたいものができてしまったから。だから、いいんだ!」
「けど・・・けど」

尚も食い下がるエルオーネの肩をバッツは掴むと、彼女の瞳を真っ直ぐと見つめる。

「スコールが待ってる。お前との約束を果たすために・・・待ってくれてる。エルオーネはどうしたいんだ?」

エルオーネ自身に、どうしたいかを問うと、彼女は困ったような、泣きそうな顔でバッツを見つめてきた。
彼女が何を望んでいるのかは明白だった。望みを口に出せないのは、自分に迷惑を掛けてしまうかもしれないと考えているから言えないのだろう
何も言わない彼女にバッツはさらに話を続けた。

「これだけ大混乱を起こしちまったからおれはクジャに怒鳴り散らされるだろうし、カオスにもぼっこぼこにされると思う。けど、おれがしたくてやったことだ!お前ら二人が納得いくようにしてもらえたら、おれはクジャの声で鼓膜が破れようが、カオスにサンドバッグにされて顔面が3倍に腫れてもおれは笑っていられる!試験はまた次があるけど、スコールとエルオーネの止まった時間を進められるのは今しかない。後は、お前がどうしたいかだけだ」

そういい、バッツは安心させるかのようににっと笑いかける。
エルオーネの瞳から、一粒の涙が零れ落ちると、一粒、また一粒と零れ落ちた。

「・・・連れて行って」

流れる涙と共に零れた言葉はとても小さい声だったが、バッツの耳には彼女の願いがはっきりと聞こえた。
嗚咽を堪えるため、震えた声でエルオーネはもう一度願いを訴えた。

「私、スコールに、会って、約束を果たしたい・・・だから・・連れて行って・・・っ!」
「ああっ!」

泣き、そして叫ぶかのような彼女の心からの願いに、バッツは力強く頷くと、涙を拭うエルオーネの手を引き、待合室を出た。

部屋にはまだクジャとジタンは戻ってきていない。チョコボの鳴き声と怒鳴り声や悲鳴のようなものが聞こえてきているのでまだ事態は収束していないのだろう。
しかし、バッツは部屋に出ようとはせず、出入り口の扉とは反対の窓ガラスの方へとエルオーネを導いた。

窓の扉を開け、バルコニーに出ると、外套を取り出し、エルオーネに羽織るように促した。

「きっと寒いから着ておいてくれ」
「ありがとう。けど、・・ここから飛び降りるの?」

外套を受け取り、羽織りながらエルオーネはバルコニーから下を覗き込む。バルコニーの高さは20メートルほどあり、普通の人であるエルオーネにはとても飛び降りられる高さではない。
怯える彼女にバッツは笑いながら首を振ると、指をくわえて、勢いよく吹いた。

--ピィーーッッ

高く、長い指笛が響くと共に二人の頭上から大きな影が現れる。
青い、大きな竜だった。
左右の翼を力強く羽ばたかせた一匹の竜が指笛にひかれてきたかのように、バルコニーに器用に降り立つと、バッツの方へと顔を近づけて「ぐるる」と唸った。

「来てくれてサンキュー、飛竜!」

バッツは飛竜と呼ばれた竜の顔を撫でながら礼を言うと、飛竜は気持ちよさそうに目を閉じ、乗れと言わんばかりに身を伏せた。

「この竜で・・・降りるの?」
「ああ!さっきチョコボ・・・あ、今大混乱を起こしてる鳥な?そいつらを呼び寄せた時に一緒に呼んでおいたんだ!二人で下界へワープできる場所までこいつが乗せて連れて行ってくれる。さ、乗った乗った!」

戸惑うエルオーネを先に飛竜の背に乗せるとバッツはそれに続いて自分も乗ろうとしたその時だった。

「なにをしているんだい!??」

声のした方を振り向くと、髪がバサバサと乱れ、服もずたぼろのクジャが眉を吊り上げてこちらに早足でやってくる。

「やっべっ!!飛竜!よろしく頼むよ!」

バッツは飛竜の首を優しくさすりながら慌てて頼むと、飛竜は承知したと言わんばかりに首を真っ直ぐと伸ばし、空に向かってひと吠えする。
竜の少し高い、唸るような鳴き声が響くと同時に、ふわりと飛竜が浮き上がった。
それを見たクジャが何やら大声を上げながら走ってきたが飛竜が飛び立つ方がはるかに速かった。
飛竜はバッツとエルオーネを乗せて、大きな翼を羽ばたかせ飛んでいく。

「バッツ!!君は何を考えているんだいっ!??エルオーネ、君もっ!!」
「おいおい・・・逃避行かぁ・・・すげぇなあ」

バルコニーから身を乗り出してこちらを見るクジャとジタンの兄弟がどんどん小さくなっていく。
バッツは片手を上げて、エルオーネは大きな声で二人に向かって「ごめんなさい!」と叫んだが飛竜の移動速度は天界随一なので多分見えてもいないし聞こえてもいないだろう。
ここまで逃げてしまえば大丈夫、とバッツはほーっと大きく息を吐き、目的の場所へと飛んでもらうように飛竜の背を叩いた。

目指すところはただひとつ。
約束を果たしに。


---
逃避行成功。
飛竜かわいいよ、飛竜!
黒チョコボとどちらを出そうかと悩んだのですが、管理人の好みで飛竜に軍配が・・・。





■ 拍手お礼 連載ミニ小説


学校が終わった後、スコールは友人達と分かれて一人道を歩いていた。
月に一度歩くその道は、前を向かなくても歩き進める程歩き慣れている。

3年前のあの日からもう何度この道を一人で歩いただろうか?

あの日はエルオーネの誕生日の数日後のことだった。
携帯で連絡を取り合い、それぞれの通学路の中間となる場所で待ち合わせをした。

彼女が好きな花束を渡すつもりだった。

その日は委員会で遅くなり、約束の時間に少し遅れてしまった。
少々焦ったが携帯電話に連絡をすれば大丈夫だろうと、今歩いているこの道を早足で歩きながら連絡をしてみたがメールの返事も無く電話も出てくれなかった。

連絡に気づいていないだけだろう。

そう思いながら約束していた場所に到着すると、1台の救急車が走り去った。
目の前には沢山の人だかり。
けれどその人だかりの中に約束の人はいない。

嫌な予感で心臓が煩いくらいに鳴り、人だかりにエルオーネの姿がないかを探していたところで、誰かが呟いた言葉が耳に入った。

--若い女の子が突っ込んできた車に跳ねられたそうよ

--かわいそうに・・・

喧噪の中、その呟きがはっきりと聞こえた。
人だかりを分けると前面が歪に拉げた車と血溜まりが目に入った。
事故現場のすぐ傍には投げ出された鞄。

エルオーネの鞄だった。

目の前が真っ暗になり、人だかりもざわめきもすべてが別世界の出来事にように思えた。
あの後はどうやって家に帰ったのかは覚えていない。
エルオーネが息を引き取ったという連絡が入ったのはその日の夜のことだった。

あの日のことを思い出すと、沢山の後悔が今でも押し寄せてくる。

あの日、委員会で遅くならなければ約束の時間に間に合っていただろう。
もしも彼女と約束通り会っていたのなら・・・彼女は死ななくて済んだだろう。
僅かなことで回避できたかもしれない運命を何度呪っただろう。

悔やんでも悔やみきれない思いはこの3年間決して忘れることはできなかった。

大好きだったお姉ちゃん。
孤立しがちだった自分の手を引いていつも遊んでくれた。
不在がちな父親以上に自分の理解者でいてくれた存在はもういない。

命日が近くなると、再会を願ってリコリスの花言葉に想いを託した。
死を連想させる花にそのような想いを乗せるとは我ながら滑稽で愚かな行為であると心の片隅で思っていたものの、託さずにはいられなかった。

花言葉を教えてくれたのは他でもない彼女だったのだから・・・。




いつも利用している花屋に着くと、大きな花束を手渡された。
店主の女性曰く「あなたのお友達からです」と一言付け加えられたのでおそらくバッツがあらかじめ頼んでいたのだろう。

出会ってひと月も経っていない上に昨日は感情のままに怒鳴り散らした同居人の男に何故ここまでするのか理解できない。
彼は地上での勤務を望んでいたが、自分達のために動くことで何か影響するのではないのだろうか?

「(・・・俺が考えたところでどうなるかはわからないけど・・・俺もあいつももう後戻りはできないのだろうな・・・)」

過った疑問にスコールは無理やり首を振ると、店主から花を受け取り、それを両手で抱えて歩きだした。

あの時と同じ道を歩くのはこの3年間は悲しみを辿り、今は亡き存在を思い出させるため苦痛であった。
しかし、今日はどこか違う。
同居人の青年の言うことが本当なら、果たされなかった約束を今日果たすことができるかもしれない。そう思うと様々な感情が渦巻いて内心複雑であった。

ようやく果たされる約束と会いたかった女性。
苦い思い出と後悔を背負った自分。
自分達のために奮闘してくれているであろう青年。

手渡された花束を見ると、女性が好みそうな淡い色の可憐な花で作られていた。
先日のアドバイスに基づいてなのだろうか。
最初は食虫植物や花束になりそうにもない巨大な花を贈ろうとしていた人物が用意していたとは思えない。・・・もしかしたら気を利かせた花屋の店主が選んだのかもしれないが。

無鉄砲で恐ろしく非常識・・・と言うよりも人間の常識に疎くて、変に好奇心旺盛で思い切りがいい。
挨拶や食生活にうるさいくせにプライバシーには無頓着。
こんなことがなければきっと関わり合いにならない人種だっただろう。

そんな彼が、切欠になった。

神と名乗ったあの青年が来てから、止まっていた時が動き出そうとしている。
彼女と自分のためだと言っていた彼のために、自分も進まなければいけない。

目的の場所に到着すると、スコールは花束を抱え直した。

3年前に事故があった場所は道が舗装されていて事故の傷跡はまったくない。
この道を通る多くの人々はここであった事故のことを覚えているのだろうかと思う程であった。

自分もこの場所も目に見える傷はないが見えない傷は確かに存在する。
過去に起きたこと、自分の心の中にあるもの。

痛みそうになる胸にスコールが無意識に手を当てたその時だった。

突然上空から閃光が走る。
驚いて空を仰ぐと、すっと一筋の光が足元まで差し込んできた。

余りにも強い光だったため、往来する人々も不審に思っているだろうと慌てて様子を窺ったが自分以外の人間はそれに気付くことなく歩いている。
よく見れば自分の周り、半径3メートルに少し曇ったガラス版のような壁がいつの間にか出来ていた。

同居人の青年が初めて自分の家に降り立った時と酷似した状況と自分の周りの空間が切り離され、孤立したかのような状況からすぐに青年の仕業であると分かった。

再び上空に目をやると光に導かれるかのように、一匹の大きな竜が巨大な翼を羽ばたかせてゆっくりと地へと降り立とうとしている。
物語のワンシーンのような光景に唖然としたのも束の間、ドラゴンの背中から大きく手を振っている男と、こわごわと地面を、こちらを窺っている女性が一人。
閃光からの逆光で顔の判別は難しかったが、もう見慣れた背格好ですぐにバッツであるとわかった。

そうすれば隣の女性は・・・

「エルオーネ・・・おねえちゃん・・・?」

久々に呟いた名前と同時に、竜が地へと降り立った。


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FF8本編で、エルオーネさんのことを「おねえちゃん」と呼ぶスコールさんが好きです。
(17歳なのにおねえちゃんと呼ぶなんてかわいいなぁと。)

バッツさんとエルオーネさんの逃避行はもっと苦労シーンを入れようとしていたのですが、終わりそうにないので省略しました(神竜に乗ったクジャに追いかけられるとか、カオスがマッハで走って追いかけてくるとか・・・怖っ;)





■ 拍手お礼 連載ミニ小説


竜が地上に降り立つと、バッツが飛び降り、エルオーネが降りやすいようにと、手を差し出して彼女の手を取って降ろした。
地上に降り立ったエルオーネは、不思議な色をした外套を身に纏っていたが、姿は3年前の彼女となんら変わりはなかった。

スコールが彼女に最後に会ったのは棺の中で永遠の眠りについた姿だった。
閉じられた瞼。血の気のない白い肌。死化粧がされた顔はまるで人形のようだと思ったことを覚えている。
しかし、目の前の彼女は、竜の背に乗ってきたためか、頬を紅潮させている。大きな瞳は自分を映しだし、バッツに導かれるかのように、歩き、近づいてきている。

会いたくて、もう会うことができないと思っていた人が目の前にいる。

会いたいという気持ちだけが先行してしまって、実際目の前に立たれると、どうやって話を切り出せばいいものかとスコールは内心混乱をしていた。
心臓が壊れた時計のように鼓動が速くなって、苦しくて、そして煩い。呼吸をするのも困難だ。

「スコール」

至近距離に立ったエルオーネに名を呼ばれる。
久しぶりに聞いたエルオーネの声に、頭が働かない。洪水のように溢れ出て、決壊しそうになる気持ちを抑えるだけで精一杯だ。
自分達のすぐ傍にいる青年がせっかく与えてくれた機会に、声を出すことさえもできそうにない自分が情けない。
名前を呼ばれたのに、答えることもできずに黙るスコールに、先に話をし出したのはエルオーネだった。

「この3年間・・・あなたは月命日に花束を欠かさず贈ってくれていたこと。そして、命日の日には・・・リコリスの花束を贈ってくれていたこと。全部届いていた。」

とても優しい声で自分に話しかけるエルオーネに花束を持った手に力が入り、震える。
彼女に会いたいと思う気持ちは本物だが、3年前のあの日、自分の到着の遅れが彼女の運命を変えてしまったのだという事実が自分に突然襲い掛かる。
彼女が、そのことで怒り、自分を罵倒するような人ではないことは十分にわかっている。
わかっているからこそ、こんなに優しい人の時間を奪い去ってしまった自分のことが許せなかった。

「俺は・・・」
「スコール?」
「俺は・・・俺が、あの日、約束の時間通り俺があの場所に来ていたら、あんたは・・・死なずにすんだ」

時間は戻ってこない。
この3年間、戻らない時間が戻せることができたのなら。
何度思ったかもうわからない後悔が吐きだされる。
もしも、彼女が生きていたのなら、毎年、誕生日を祝って、笑いあっていたかもしれない。
彼女は、今も幸せな人生を歩んでいたかもしれない。

「俺は、取り返しのつかないことをしてしまった・・・」

呟き、俯くスコールに、エルオーネがそっと頬に触れ、顔を自分の方に向けさせる。
3年前は自分よりも背が高かった彼女が、今は、自分を少し見上げる形で見つめている。

いつの間にか、瞳に溜まっていた涙が一筋流れ、エルオーネの指先を濡らした。

「スコール、あなたのせいではない。事故は、仕方がないことだった。ただ、それだけ。・・・私こそ、3年間、こうしてあなたを苦しめてしまった。リコリスの花束に、想いを込めてくれたのに、応えてあげることができなかった・・・だから、謝らないで」

濡れた指先で、流れ落ちる滴を拭うと、エルオーネは穏やかに微笑んだ。
彼女の瞳にも涙が溜まっていたが、悲しみの涙ではなかった。

目を細め、長い睫毛で縁どられた瞳が一度閉じられると、彼女の頬にも涙が伝う。

「私は・・・あなたに会えてとても幸せだった。あなたと過ごした時間、とても優しかった・・・あなたにはかけがえのない宝物を沢山もらった。あなたに会いたかったのは・・・言うことができなかったお礼を言いたかったの」

ふわりと、彼女が纏っていた空気が流れる。
細い腕が伸ばされ、自分の身を包む。抱きしめられたのだ。
さらさらとした髪が自分の頬を擽る。
包み込まれた腕は、とても温かい。

彼女からは・・・花の香りがした。

生前と何も変わらない姿に、再び涙が零れ落ちた。

「スコール・・・ありがとう」

耳元で囁くように発せられた言葉が全身に響く。
たった一言の言葉が、彼女と過ごした時間を、まるで巻き戻すかのように頭の中で記憶が蘇る。

小さい頃に手を引いてもらって歩いた道。
幼く、わからないことを聞くと教えてもらったり、一緒になって考えてくれたこと。
二人で花を眺めて過ごした時間。

そのすべてが彼女の言葉に詰まっている。

エルオーネはスコールから離れると、自分の涙を拭い、そいてまた微笑み返してきた。
彼女の温かな微笑みから、自分が言うべきなのは謝罪ではないのだとわかった。
本当に言いたかった言葉を、贈りたかったことは何だったのかを思い出し、スコールは自分が持っていた花束に視線を落とした。
花束は先ほどの抱擁で少し潰れてしまったが、大丈夫そうだと確認し、震えそうになる声をなんとか押さえて、言葉を紡いだ。

「少し遅くなったけど・・・誕生日、おめでとう。・・・そして、今までありがとう・・・おねえちゃん」

心の底からの言葉と共に手に持っていた花束を差し出す。
彼女に贈る、最後の花束を。

「うん、うん・・・ありがとう、スコール・・・っ」

花束を受け取りながら、エルオーネは再び涙した。
スコールは気づいていないようだが、彼はうっすらと微笑んでいた。
3年間、彼は自分のことで沢山の後悔の念を抱いていた。その彼が、笑ってくれた。笑顔をもっと見たいのに、涙が邪魔をする。けれど、嫌ではない。
自分も心の底からの笑顔でいられているのだから。

飛竜と共に事の成り行きを見守っていたバッツは自分もうっかり目が潤んでしまっていることに気づき、こっそりと拭ってごまかした。
うまくいって良かったとまずはほっと息を吐き、再度二人の様子を伺うと、二人とも穏やかな笑顔で笑い合っている。
エルオーネはともかく、普段仏頂面のスコールが笑顔を見せるとは思いもしなかった。
思えば、怒らせたり困らせてばかりで彼の笑顔を見たのは今回が初めてだと気付く。エルオーネによほど心を許しているのだろう。その心を許していた相手との突然の永遠の別離はどれほど彼らの心を暗闇に落としたのかは計り知れない。
加えて、スコール自身がその別れは自身のせいであると責めていたのなら尚更だ。
しかし、それも今日で終わるだろう。
後悔と悲しい思い出に捕らわれていた二人が、互いに相手を解き放ったのだから。

すると、ふと横にいた飛竜が上空を一度見上げて何かを窺うと、バッツの服の裾を噛むとくいくいと何かを伝えるかのように引っ張った。
バッツは飛竜に促されて上空を見つめ、困ったように笑うと、エルオーネとスコールに声を掛けた。

「名残惜しいけど、そろそろ時間だよ。お二人さん」

そう言い、上を指さす。
上空から差し込んでいた光が薄くなってきている。
飛竜もエルオーネも、自分自身でワープができない。そのため地上に出やすい場所で天界と地上を結ぶ"道"を作ったのだ。
消えてももう一度作り直すことはできるが、結界を張りながら大きな技を使うのは難しい。
それに、飛竜はともかくエルオーネは死者であるため地上で実体を確立させることができる時間も限られている。

これ以上彼女をここに留めておくのは難しいし、時間が経てば経つほど別れも辛くなるだろう。

エルオーネもスコールもそれをわかっているのかバッツの言葉に頷くと、互いの手を握って、最後にもう一度微笑み合うと、名残惜しげに離れた。

スコールは追いかけることもなく、その場に立ったままエルオーネを見送る。
バッツは伏せの体制の飛竜の背にエルオーネを乗せると、背を軽く叩いた。

「飛竜・・・エルオーネを天界の、クジャとジタンの元へ連れて行ってくれ」

言葉が通じているのか、飛竜はのそりと起き上がり、大きな翼を広げる。
てっきりバッツも一緒に帰るものだと思っていたエルオーネは小首を傾げて、「一緒に乗らないの?」と不安そうに聞いてきたが、バッツは飛竜を撫でながら笑った。

「おれは飛竜に乗らなくても帰ることができるからさ。飛竜も、エルオーネだけならもっと早く飛べるんだ。もう、これで"待合室"にいる理由もなくなっただろ?だったら、さっさと言いに行った方がいい。クジャとジタン、冥界行きのことでかなり心配していたみたいだからさ」

そう言われて、エルオーネは二人の存在を忘れていたのか、一瞬はっとした表情をした後に、苦笑して頷いた。
その表情にバッツは再び笑うと「さぁ、行け」と飛竜に声を掛けた。飛竜は了解したのか天に向かって一鳴きし、翼を羽ばたかせてゆっくりと浮かび上がる。

「本当にありがとう!二人とも!・・・さようならっっ!!」

花束を大事に抱え、大きな声で礼と別れの言葉を発するエルオーネにバッツは手を振り返し、スコールは大きく頷く。
エルオーネは笑顔のまま、飛竜の背に乗ってどんどん上空へと上昇し、やがて空へと消えていった。
一人と一匹の姿が見えなくなると、やがて、天と地を結んでいた光の橋もまた溶けるように無くなってしまった。

二人で今は何も見えない上空を眺め、やがて同時に小さく息を吐いた。
スコールは少し前に立っているバッツに視線を移すと、彼は一仕事を終えたかのように大きく伸びをし、腰に手を当てている。

この青年のおかげで、心の中に残っていたものと向き合い、そして彼女との約束を果たし、きちんと最後の別れを交わすことができた。
彼には、何度礼を言っても言い切れないが、きちんと言葉にしなければならないと思い、声を掛けると、彼は笑顔のままこちらに顔を向けてきた。

「どした?スコール?」
「・・・バッツ」
「ん?」
「その・・・あ」

「ありがとう」その一言を言おうとした瞬間だった。
今度は上空ではなく、自分達の目の前に閃光が走る。目を開くことが困難なほど強い光だった。思わず目を細めて光の中心に目をやると、二つの人影のようなものが見える。光が止み、目が慣れてくると、そこには鎧を身に纏った男女が二人立っていた。
光と共に現れたのは青い甲冑を着た銀髪の男と、桜色の髪の気の強そうな戦士風の女性だった
登場の仕方から、この二人もバッツ同様神であることは明白だった。
ただ、バッツとは違い、二人とも剣を腰に携えており、ニコリとも微笑んでいない。

「一級神バッツ・クラウザーだな」

青い鎧を纏った青年がバッツに話しかける。
身元を聞いているようだが、どうやらバッツだと確信しているのだろう。まっすぐとバッツを見据えている。

「ありゃ、思ったよりも早かったな・・・弱ったなぁ・・・」

事態を予想していたのか、バッツは苦笑しながら頭を掻いている。
今、どのような事態で、この二人の正体がわからないスコールが小声でバッツに問う。

「・・・誰だ?」
「天界の管理部門のやつらだよ。・・・この二人は、地上で言えば警察かな?」

警察の一言を聞き、スコールは狼狽える。
予想はしていたが、自分の予想以上にバッツは自分と、エルオーネを会わせるために何かとんでもないことをしでかしたのだと悟った。

動揺するスコールにお構いなしに、鎧の男は話を続ける。

「私の名はウォーリア。こちらはライトニング」
「お、名前聞いたことあるぞ。あんたら、コスモスとカオスの直属の部下でスゲー優秀って・・・」

言いかけたバッツにライトニングと紹介された女性が腰の剣を抜き、バッツの鼻先にその切先向けた。

「無駄話はいい。貴様、器物破損だけではなく、天界の掟を数多く破った自覚が無いわけではあるまいな?」

鋭く、射抜くかのような視線でバッツを睨み付けるライトニングにバッツは切っ先が鼻に当たらないように小さく頷く。
ウォーリアはライトニングに剣を戻すように言うと、彼女は渋々といった様子で剣を腰に戻した。

「ライトニングの言った通り、君には・・・いくつかの容疑が掛っている。試験中とのことだが、我々と同行してもらう」

有無を言わさない様子のウォーリアにバッツは「わかっている」とそれだけ答えると同行に従うとばかりに頷いた。

今のやりとりから、バッツは何故エルオーネを先に帰したのかスコールはようやく理解した。
天界からの追手の存在を知られたくなかったのだろう。
バッツの先程の「思ったよりも早かった」と困ったような素振りを見せていたのも・・・おそらく自分にも気付かれないうちにこの場を離れようとしていたのかもしれない。
最後の最後まで自分達のことだけを考えて。

「スコール、ごめん。夕飯までに帰れそうにないや」

へらりと笑いながらと手を振ると、バッツは二人に大人しくついて行く。
ライトニングはバッツが逃げ出す素振りをみせないことを確認すると、指で印を結ぶ。すると再び先程と同じ閃光が走り、3人の姿は一瞬にして消えてしまった。
自分の周りを囲んでいた結界のようなものもいつの間にか消えている。

「バッツ!!」

名前を呼んだが、返事はない。
すぐ傍を歩いていた何人かの通行人が怪訝そうな顔でこちらを見ていたが気にせずあたりを見渡したが、彼らがつい先ほどまでここにいた痕跡すら残っていなかった。

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再会とそして別れでした。





■ 拍手お礼 連載ミニ小説



バッツが天界の者に連れて行かれた翌日。起床したスコールが自室からダイニングへと降り立つと、そこは当然静まり返っていた。
いつもなら、出来上がった弁当がテーブルの上に乗っていて、キッチンは薬缶の湯が沸く音や野菜を刻む音、卵やベーコンなどがフライパンの上で焼かれる音で支配されていて、その沢山の音の中心に、バッツがいた。
まるで分身したかのように調理器具や食材を片手にあっちへ行ったり来たりしながら朝食の準備をしているので、それに自分も加わって準備をする。
準備をし終えて朝食が並べられた席に着くと、朝にも関わらずテーブルに所狭しと並べられた数々の品を見て、自分も調理に加わったのに「朝からこんなに食べられない」と文句を言えば「沢山並べられていた方がにぎやかで幸せだろう?」、「いっぱい食べないと大きくなれないぞ?」と二つも三つも言葉が返ってきた。
そのことが、まるで夢のようにさえ思える。
トーストとコーヒーで簡単に朝食を済ませ、学校への持ち物の確認とテレビでニュースを見て出発までの時間を過ごしたが、昨日までに比べると時間の流れが遅く感じた。
一人だけの簡単な朝食では早く食べ終わる上に食器の片づけもすぐに済んでしまったからだろう。特にすることもないため少し早いが今日はさっさと出発してしまおうと決めると、制服の上着に袖を通し、教科書が詰まったカバンを持って玄関へと向かった。
靴を履き、再度自分の身支度を整えると、無意識のうちに、自分以外誰もいない家の中に向かって出発を告げようとしていた。

「いってきま・・・」

そう言いかけて言葉を飲み込んだ。行ってきますを返してくれる相手はいないのだから言っても仕方がない。
声が帰ってこないことに心に影が差す。一ヶ月前までは当たり前だったことが当たり前でなくなっていたのだ。

--行ってらっしゃい
--行ってきます

たったそれだけの言葉がどれだけ大事だったか考えたことも、感じたこともなかった。
そう思うと余計に暗いものが広がっていくような感じがした。

「・・・・」

無言のまま顔を上げ玄関の扉を開くと、扉が開かれる音がいつもに比べてとても大きな音に聞こえた。
同居人が大声で自分の出発を見送ることが多かったからなのだろう。その同居人は今頃何をしているのだろうか。天界と言っていたが、それは空よりももっともっと上へ、自分の想像もできないほど遠く、届かない場所なのだろうか。
スコールは外に出て空を仰いだ。見上げた空は心とは反してとてもいい天気だった。それなのに輝く日の光を浴びると何故か瞳の奥が熱くなった。





「何故このようなことをした」

カオスの重々しい声が室内に響き渡る。
バッツの目の前には男神と女神が大きな玉座に座り、自分を見下ろしていた。
広すぎる室内、というよりも大広間には自分を含めた3名しかいないため、声が良く通り、響く。無駄な物が何も置かれていないこの空間は、まるで二人の神々の長だけが存在することを許されたかのようだった。何度訪れてもこの部屋は妙な緊張感を与えられるとは思っていたが、何故か今日は心はひどく穏やかだった。
天界の掟を数多く破った後であるため、開き直りに近い気持ちになっているのだろうか。我ながら図太い神経の持ち主だなと自分自身に苦笑してしまいそうだ。
ただ、今回の件に関係してるスコールとエルオーネ、ジタンとクジャの兄弟にカオスの怒りが向けられると困るので、非は自分だけにあるときちんと伝えておかなければいけない。勝手に動き回ったのは自分だけであるのだから。

「おれがおれ自身だけで考えてやったことだよ。みんなは関係ない。言えるのはそれだけだ」

カオスからの鉄拳制裁は少々覚悟がいったがきっぱりとそう言い放った。そんなバッツにカオスは顔を顰めると、ひじ掛けを拳で強く殴った。どうやらかなりのご立腹であることが見て取れた。

「ふざけるでない。貴様、天界に混乱を招いただけでなく、死者と人間を引き会わせたんだぞ。地上の世界の秩序を守るため、本来は特例であり、我とコスモス、そして限られた神にしか許されない行為を無断で行なったことをそれだけで済ますのか!半端者が無理やり死者と生者を会わせるための"結界"を張ったことで地上と天界の空間に修復が困難な歪みが生じでもしたらどう責任をとるつもりだった!?」
「カオス・・・」

コスモスが諌めるように静かに名を呼ぶと、カオスは荒い息を吐き渋々と言った様子で椅子に座り直した。
コスモスはカオスに「ありがとうございます」と小さく首を下げると、バッツに柔らかに声を掛けた。

「バッツ、私達も何故貴方があのような行動を起こしたのかは大体は解っています。けれど、大切なのは貴方自身から聞くこと。あなたの心の内を、貴方自身の口から聞きたいのです」

コスモスの優しい声が耳に痛い。カオスのように怒りを露わにして怒鳴り散らされるよりも、自分の心に重く伸し掛かる。コスモスにそんな気はないのだろうが。
自分が様々な掟を破り、彼女を心配させたに違いないと思うと心が何本もの針で刺されたかのように痛んだ。
黙ったまま俯くバッツにコスモスは困ったように微笑む。

「エルオーネと・・・スコールの事が気になるのですね?」

二人の名前を聞いた途端、顔を上げたバッツに、コスモスは「やはりそうですか」と呟き、玉座から立ち上がるとゆっくりとした動作でバッツの元に歩み寄った。

「心配ありません。彼らには何も・・・」
「コスモス!」

勝手なことを言うなとばかりに怒鳴るカオスにコスモスは柔らかく微笑み、首を横に振った。

「今回のことは彼らが自ら行動を起こしたのではないでしょう?」

そう言われてしまい、カオスはぐぅっと喉を鳴らした。
コスモスの言う通り、エルオーネもスコールも自ら動いたわけではない。と、言うよりも死者と人間ではできることなど神に比べれば無きに等しい。ジタンとクジャの場合は偶々とばっちりを食らっただけである。
カオスが大人しくなったためコスモスは再びバッツに視線を戻すと瞳を丸くしてこちらを見ていた。彼らのことが心配であったことは当たっていたようで、先ほどに比べると幾分か緊張がとれているようにも見えた。しかし・・・

「けれど、彼らの手を引いたのは貴方ですよ?バッツ」

ちくりと突かれると、バッツは眉を八の字にし、困ったような表情を浮かべる。コスモスは話をして欲しいとばかりに小首を傾げると、やがて観念したのか、肩を竦めて口を開いた。

「・・・試験のこと・・・試験はスコールと共に暮らし、そして助け合うことだったよな?おれは試験に受かりたかったからそれに忠実に従ったつもりだ。けど、スコールと暮らして、色んな人と触れ合い、生活をしていって、試験よりももっと大事なものが出来ちまったんだ」

そう言い、バッツは顔を上げ、まっすぐとコスモスを見つめた。その瞳には先程まで見えていた躊躇いの色はなかった。
眼差しの強さから、余程大事なものだということが感じて取れる。

「聞かせてください。あなたの大事にしたかったものを。」

コスモスが先を促すと、バッツは少し息を吸い、広間に響く声ではっきりと返した。

「おれとスコールとエルオーネ・・・結びつくはずもなかった糸が結び合い、繋がった。本来なら繋がりあうこともなかったかもしれないおれたちが繋がった。繋がっていたスコールとエルオーネは、互いを大事に思うが故に、すごく、悲しそうだった。」

同居人で試験相手のスコールはお世辞にも人付き合いが上手い方ではないが、不器用なりに優しさをみせてくれた。そんなスコールが好きになった。
そのスコールが思い出の中に閉じ込めている相手のエルオーネ。偶然とはいえ、彼女とも知り合えた。
花咲き乱れる場所で彼女が零した涙から、彼女の想いを感じ取り、二人をこのままにしておけなかった。

「おれは地上で働きたい。地上で働けば、地上の色んな場所に行くことができるようになる。沢山の人と接することも、ここにはない物を見聞きすることもできる。だから試験には受かりたかった。・・・けどさ、自分のすぐ側の人が苦しんで、自分の中に閉じ込めて隠そうとしている姿を見ていたら、それに目をつぶってまで試験に受かりたいとは思わなくなっちまった。出会って、繋がった人達みんなを、繋がり合った絆を試験の結果以上に大事になったんだ。だから、そうしたんだ」

無謀とも思える方法だったが、再会を果たした二人は晴れやかな表情だったから神としてあるまじき行為を行ってしまったものの後悔はない。
もとよりどんな罰でも受けると覚悟をしていたから、二人と、巻き込んでしまったクジャやジタンがお咎めなしなら安心してどんな罰でも受け入れられる。

「事情はわかりました」
「ああ。だから、あいつらのことは・・・」

お咎めなしにしてもらいたい。コスモスにそう言い掛けたバッツだったが、今まで黙っていたカオスが「ふん・・・」と鼻を鳴らし、自分も聞いていることを忘れるなとばかりに玉座から立ち上がるとバッツとコスモスを見下ろしてきた。

「コスモス、冥界は我の管轄であることを忘れないでもらいたい。理由はなんであれ、こやつが天界の掟を破ったことに変わりはない。それ相応の罰を受けなければ、皆に示しがつかないからな・・・」

先程の怒りも大分落ち着いたのか、今度は落ち着きを払ってそう告げると、バッツはカオスを見上げて頷いて返した。

「わかってるさ。ただ、罰は・・・」
「わかっておる。・・・貴様の試験は中止だ。罰則が決まるまで暫く謹慎。"力"も封じさせてもらうからな」
「ああ」
「コスモスも、異論はないな?」
「・・・ええ」
「ならばこれ以上話すことはない。・・・行っていいぞ」

カオスは手で何かを払うかのような動作でバッツに出ていくように促すと、バッツはコスモスとカオスに頭を下げて部屋を後にした。
いつも軽い足取りで出ていくバッツが真っ直ぐ踏みしめるかのように前を歩き、出ていく後姿をみて、カオスは大きく溜息を吐くと玉座に座り込んだ。どうやら疲れているらしいカオスの様子にコスモスは苦笑すると、前を歩いていく若い神の後姿を見つめたのだった。



バッツが天界に帰ってから初めての週末を迎えたスコールは静かすぎる家の中で一人過ごしていた。
朝食は簡単なものを作って腹に入れ、家中の部屋の掃除を簡単に済ませていく。一人だけの静かな家で過ごしていると数日前まで誰かと一緒に生活を共にしていたことが嘘のように思えてしまう。
長い夢を見ていたのかと疑い、掃除も兼ねてバッツが使っていた部屋を覗いてみると、彼が部屋着として使用していた衣服と貸していたPC、そして砂が全く落ちない不思議な砂時計が窓の傍に置かれていた。
誰かがこの部屋を使っていたという痕跡があり、バッツは確かにこの家に居たことが夢ではないのだと確信した。
だとすれば、彼は今頃天界でどうしているのだろうか?自分とエルオーネのために行動してくれた結果、彼は天界へと連れ戻された。
今回の行動の結果、彼は一体どうなるのだろうか?

部屋の掃除を終えて、スコールは誰もいない居間へと入った。
約一ヶ月ほど前に強い光と共に現れた青年がよく座っていたソファに座る。学校を終えて帰ってきたら、彼は台所かこの居間から出てきて「おかえり」を言ってくれた。それが当たり前となりつつあったため、この空間にいると余計に孤独であることを感じさせられる。
スコールはソファに座り、小さくため息を吐くと、気を紛らわせるためにテレビの電源でも入れようとした時だった。
居間の中に突然強い光が生み出される。
思わず目を閉じたその強い光は約一ヶ月前に体験した光景とほとんど同じだった。その強い光の中に気配が感じられる。
バッツの登場時と酷似しているその光は、もしかしたら彼が天界から帰ってきたのかもしれないと期待をし、光りが止むとすぐさま感じた気配に向けて視線を向けたがそこに立っていたのは期待していた人物ではなかった。
目の前に、軍服のようなものを着た女性と、白い衣に身を包んだ美しい女性の2人が立っていた。

「あんたは・・・」
「覚えていたか。人間」

軍服を着た女性はつい先日、バッツを連れて行った神の一人、ライトニングだった。

「・・・何しに来た?」

バッツの話から彼女は天界ではそれなりの地位をもつ者であるようだが、スコールからすればバッツに剣を向け、連れて行った者であるためあまり印象がよくない。そのためか自然と彼女に対する態度が刺々しくなってしまった。
ライトニングの方もそれに気づいたらしく、一度小さく鼻を鳴らすと、腕を組んで尊大な態度でスコールを見つめてきた。

「私は貴様に用はない。・・・コスモス、こいつだ」

そう言い放ったライトニングの後ろから、すっと白い衣の、コスモスと呼ばれた女性が前に出てきた。金糸の髪をふわふわと揺らしながら、柔らかな声と優雅な会釈でスコールに挨拶をしてきたのだった。


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お久しぶりの拍手連載小説です。
少しは85らしさが出ていたかと。ゆるい感じで書いていたのがちょっとシリアス展開になってきました(長かったなぁ;;)






■ 拍手お礼 連載ミニ小説


まさかバッツ以外にこの家に神がやってくるとはスコールは思いもしなかった。
目の前の女神二人はバッツのことで自分に会いに来たことは予想できるが、何を聞かれるのだろうか。
もしかしたら、自分の発言一つでバッツに何かあるとしたらと思うと・・・背中に嫌な汗が流れる。
とりあえず通したリビングのソファに座る二人の女神を盗み見しながら、とりあえずお茶の一つでも出さないと失礼だろうとスコールは3人分のコーヒーを用意した。
天界にはない飲み物だと以前バッツは言っていたが、紅茶や緑茶も同様なのかそうでないのかまで聞いていなかった。
どれが正解なのか結局わからないため、バッツの基準で判断させてもらうことにした。もっとも、彼なら何の先入観もなく飲食物を口にしていたので参考にならないかもしれないことが不安ではあったのだが。
スコールは座っているコスモスとライトニングの前にコーヒーを出すと二人は興味津々とばかりにカップの中の漆黒の液体を覗き込んだ。

「これはなんだ?」

ライトニングが眉を顰めてスコールにコーヒーを指差すと、スコールが説明をする前にコスモスがライトニングに説明した。

「これは"コーヒー"という地上の飲み物です。香ばしい香りに苦みと酸味を楽しむ飲み物ですよ」

どうやらコスモスは口にしたことはあるらしく、彼女は「いただきます」とスコールに頭を下げるとカップを手に持ち、躊躇いもなく口をつけた。
それを見たライトニングはコスモスにならって、カップに口をつけたが一口飲んで顔を顰めた。

「苦いぞ」

一言そう文句を言ってきたので、スコールはミルクと砂糖入れをライトニングの方へ押した。

「苦いならこの二つを入れて味を調整してくれ。砂糖は一つか二つ入れるといいだろう。足りなかったら足せ。」
「・・・わかった」

ライトニングがしかめっ面のままだったが素直に頷くと、砂糖を二つ入れ、ミルクをコーヒーが零れない程度に入れてスプーンをかき回して味を調整してもう一度挑戦した。今度はカップをソーサーに置くことなく口にしていたので納得したようだった。

「ありがとうございます。久しぶりのコーヒーですが、このような味わい深いものであることを思い出しました」

コスモスは予想通りコーヒーを飲んだことがあるようでスコールに感想を述べると、今度は自分のカップを手に持って香りを楽しみはじめた。
まだここに来た理由を話そうとしない彼女にただ茶をしにきただけではないと思っていたスコールはじっと見つめると、その視線に気づいたコスモスが小首を傾げてきた。

「何か?」
「・・・話があって、その、ここに来たのでは?」

先程のライトニングへの態度よりも幾分丁寧になったスコールにコスモスは苦笑し、ライトニングはスコールを一瞥した後、すぐにコーヒーの方へと興味の対象を戻した。
スコールから見たコスモスは物腰も柔らかく、上品であったことと、なんとなくではあるがライトニングよりも上位の神のように思えたので話すのにいささか緊張してしまったのだ。
コスモスは穏やかな笑顔のまま、カップをテーブルに置くとスコールを真っ直ぐ見つめた。

「ええ。バッツのことで貴方とお話がしたいと思ったのです」
「・・・俺に何を?」
「バッツが、あの子がここで過ごした日々のことを聞きたいのです」




久しぶりの天界の自宅でバッツは何もすることがなく、寝台の上に寝そべっていた。
カオスから罰則の連絡は未だに来ていない。外出は禁止され、その上能力はすべて封印されてしまったため殆ど何もできなくなってしまったのでこうして眠ることしかできないのだ。
やったことに対しては後悔も何もないが、こうして何もすることなくただ寝て時間を潰すのは退屈で仕方がなかった。
もしかして、これが罰則の一つなのか、それともカオスの嫌がらせなのか・・・後者の方が可能性が高いかとバッツがため息を吐くと、扉をノックする音がし、暫くすると開かれた。

「よー元気か?」
「ジタンか?」

先日の事件のとばっちりをくらった一人であるジタンが包みを片手に扉の傍に立っている。
バッツはジタンに中に入るように促すと、彼はまっすぐバッツの方へとやってきて、包みを差し出してきた。

「謹慎だってきいたからよ。あ、これオレと兄貴から差し入れな」
「ありがとう」

包みを受け取り、中身を確認すると菓子が入っていたので、すぐに茶の準備をし二人で頂くことにした。
何もすることがなく、暇を持て余していたバッツにとってジタンの訪問は嬉しくはあるものの、先日の一件で彼には迷惑を掛けてしまったので申し訳ない気持ちもあった。
一方のジタンの方は気にしていないのかそのことについて話題は出さず、てきぱきと茶の準備を進めてくれたため、中々謝るタイミングをを図ることができなかった。
二人で熱いお茶を淹れ、ジタンがその流れで持参した菓子を出して二人してに舌鼓を打ち、茶を飲んで一息入れるとジタンがバッツに事件について話しかけてきた。

「この前のことだけどさ、兄貴からきいたよ。あ、兄貴はカオスとコスモスから聞いたみたいなんだけどな。エルオーネを連れ出したは彼女を助けるためだったんだってな」
「そのことだけど・・・ジタンとクジャにかなり迷惑かけちまったよな・・・ごめん」

バッツは頭を下げて謝罪をすると、ジタンは瞳を丸くし、慌てて首を振ってバッツに頭を上げるように促した。

「は?何言ってんだよ!!そりゃ最初は兄貴はかなり怒ってたけどさ、事情を知った今はむしろ感謝してるくらいだぜ?3年も待合室に籠っていたエルオーネが冥界で平穏に過ごしていると喜んでたから大丈夫だよ」

クジャがエルオーネのことを気にかけていたのは盗み聞きで知っていたが、迷惑をかけたので多少なりとも怒られると予想していたがまさか感謝してもらえているとは思っていなかった。
そう言ってもらえると少し気持ちが浮上した。

ジタンは少し背中を丸めて座っているバッツに苦笑し、自分のお茶のお代わりを注ぐと、「そのことよりも・・・」と話題を変えた。

「おれや兄貴のことよりも心配なのはお前だよ。バッツ。数多くの掟を破っちまってさ。おれも兄貴もできることなら協力しようと思って今日は話を聞きに来たんだよ」

ジタンがバッツの元にやってきた理由はそれだった。
死者一人のために数々の掟を破ったのはとても許してもらえることではないとジタンも、ジタンの兄のクジャもわかっている。
けれども、一人の人間の魂が救われたのだ。少しでも彼の罰が軽くなるのなら何か手助けがしたいと思ったのだ。
死者を管理する立場の自分達の管理不行き届きに何の罰則もなく、バッツ一人にそれが被るのも納得がいかない。

「オレはともかくクジャは上位の神でもあるし、必要なら上司のガーランドにもなんとかできないか相談してみる。だからこのまま大人しくなんてやめろよ」

ジタンはそう言い、バッツに助けを申し出たがバッツは笑って首を横に振った。

「ジタン、そう言ってもらえるのはありがたいけどさ、もう決まったことだしお前ら二人はこの件について一切関与していないんだ。わざわざ罰を受ける必要なんてないよ」

飲んでしまって空になったカップをソーサーに戻しながらバッツは「気にするなよ」と笑う。
もちろん、自分が気になることはいくつかある。
罰則を受けることには後悔はないが、地上で仕事に就く望みが絶たれてしまったことは正直気持ちが落ち込みそうになる。
地上で出会った人達ともきちんと別れの言葉を交わせなかった。
特に気になったのは同居人で試験相手のスコールのこと。別れの挨拶もなしに去ってしまったが、彼は元気にしているだろうか?きちんと食事と睡眠をとって、学校にも通っているのか気になった。
ほんの一瞬考え込んでしまったため、表情が一瞬素に戻ってしまいバッツが笑顔を作り直したが遅かった。
その一瞬を見逃さなかったジタンは不機嫌そうに尻尾を左右に揺らし、「やっぱり大丈夫じゃなさそうじゃねーか!」と椅子から立ち上がってバッツに詰め寄った。

「お前のその顔見て引き下がれるわけないだろ!?カオスはともかく、コスモスにオレとクジャが話せば少しはお前の罰も軽くはなると思うんだ。いくら冥界の管轄がカオスでもチョコボ事件は天界で起きたことだ。天界はカオスだけの管轄じゃないじゃないか」

眉を吊り上げ、息を荒くしてバッツに訴えるジタンにバッツは困ったように眉を八の字にして笑った。
ここまで真剣に自分を思ってくれているのはありがたい。
けどどうにもならないこともあることを神にしてはまだ若い部類のジタンには納得がいかないのだろう。
管轄がどうのといっても、自分が起こしたことに対して相応の罰がなければ他の神にも示しがつかないといっていたカオスの意見にはバッツも同意見だった。
ジタンやクジャは事情を知っていて、自分の立場で考えてくれるから助けようとしてくれているが、他の事情を知らない神がどう思うかまでは考えていなさそうだ。
もしかして、彼らのことだから考えた上で協力すると言っているのかもしれないが、わざわざ自分のために面倒事に巻き込まることはない。

「ジタン、おれは」

ジタンを宥め、再度協力を断ろうとしたところで、扉をノックする音が聞こえた。
また来客かとバッツはとりあえず話を保留にし、来訪者に「どうぞ」と声を掛けると扉が開いた。
立っていたのはコスモスとカオスの直属の部下であるウォーリアだった。
何故ここにウォーリアが来ているのだ?と訝しげな表情をするジタンにウォーリア本人も眉を寄せてジタンを見ている。
謹慎中の自分に来訪者が来ていることで何か勘違いされては困ると思ったバッツは早く用事を済ませて帰ってもらえるよう「何の用だ?」とウォーリアに話しかけると、ウォーリアはジタンからバッツへと視線を戻した。

「バッツ・クラウザー、カオスが呼んでいる。私と一緒に来てくれ」

それだけいうとウォーリアは背を向けて歩き出した。ついて来いと言うことなのだろう。
不機嫌そうな顔になるジタンにバッツは「そういうことだから、また今度な」と彼に帰ってもらうように頼むと、慌ててウォーリアの後を追ったのだった。


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お久しぶりの拍手更新ですみません;
ガーランドはFF9のガーランド繋がりでジタンとクジャの上司の位置に。
(FF9でこの二人を造った人ですしね・・・)





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