おとなと子供 -5-

若返ったバッツネタです。
17歳×(見た目)14歳なネタで事後表現がありますので苦手な方はご注意ください。
かなり甘いと思いますので甘いのが苦手な方もご注意ください。
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柔らかいランプの光が暗い部屋をぼんやりと照らしている。
元いた世界は部屋を照らすのは人工的な光だったが、この世界の明かりは油や蝋燭などに火を灯して使うもので、人工の光とは違って淡く、優しい。

眠りを誘うかのようにゆらゆらと揺れている火からスコールは自分の腕の中で眠る少年に視線を移した。

行為が終わった後、普段と勝手が違う体のバッツを気遣い、スコールは体の汚れを濡らしたタオルで落としてやった。
小さな子供のように世話をされることに初めは恥ずかしさと申し訳なさで断ろうとしていたのだが、スコールはそれを制止するとやがて観念したのかバッツはスコールがしたいようにさせていた。
横になり体を拭かれていくと、やはり疲れたのかバッツは暫くするとウトウトとし始めて、やがて寝息をたてて眠ってしまった。

体を清めた後も目を覚ますことなく眠るバッツにスコールは苦笑し、体が冷えないようにとシーツを被って抱き寄せた。

眠っているバッツを抱きしめながら、スコールは先ほどの彼との行為を反芻する。

ほんの少し前、想い人と久しぶりに肌と肌を触れ合った。

少し幼くなった顔を快楽に歪め、潤んだ瞳でこちらを見つめながら行為に溺れる彼の姿は少年とも言える姿になってしまったにも関わらず、大人びた艶があり、ひどく心を乱された。
触れ合う肌と肌が吸い突くような感触、幾度とも重なった唇の甘さ。そして互いの熱を触れ合わせた時の気持ちの良さ。
実年齢よりも幼くなってしまった彼に触れてしまった罪悪感はあったものの、久しぶりに触れあえたことの喜びが増しており、悪甘い気持ちで満たされていく。

そんなスコールの心情などを知らぬバッツは静かに寝息をたてて眠っている。寝顔を見る機会はあまりないので、ゆっくりと眺める。
瞳を縁どる睫毛は意外に長く、ランプの光を反射して光を放っているかのようだ。
何も身に纏わずに眠っているため、シーツから覗くむき出しの首筋や肩が、少年の姿とは思えない不思議な色香を放っている。
本来の彼の姿と重なるその寝姿に、見かけは変わってしまっても中身は変わらないのだから当然と言えば当然かと納得をし、穏やかに眠っている愛おしい人を見つめ、額に掛かっている髪を指先で直そうとしたところで、身じろぎ瞳がゆっくりと開かれた。
薄紫に朝靄のような灰色が混じった瞳に自分の姿が映しだされる。

「・・・すまない、起こしてしまったようだな」

抱きしめていた手で背をさすりながら詫びると、小さく首を振ってきた。

「いや、大丈夫だよ・・・。おれも、世話してくれたのに、お礼も言わないで寝てしまって、ごめんな。そしてありがとな」

謝罪と感謝を同時にすると、もっととばかりに身を寄せてきた。大丈夫といったものの、眠気がまだあるのだろう。甘えるようにすり寄ってくる仕草が緩慢で本当に子供のようだった。先ほどの艶を放っていた寝姿の人物と同一人物とは思えない。
胸と胸が合わさるくらい近くに寄ってきたところでバッツがぴたりと動きを止めた。何か気になることでもあるのだろうかとスコールは首を傾げると、バッツはわずかに顔を赤らめた。

「なんか、恥ずかしいな」
「何がだ?」
「こういう風に、その、くっついて眠るのが久しぶりだからさ」

何も身に纏っていないことを言っているのだとわかった。自分も下は履いているとはいえ、それ以外は何も身につけていない。
それ以上に恥ずかしいことを先程したばかりだろうが、自分も、行為の最中は恥ずかしさなどはどこかに忘れてきたかのように没頭してしまうため後になって込み上げてくることがある。
彼も自分と同じなのだろう。
触れ合う肌と体に残る気怠い余韻がそうさせているのかもしれない。
優しく背をさすり、裸の肩が外気に触れないようにと、シーツを掛け直し、その上から抱きしめるようにして彼を包んだ。

「寒くはないか?着替えた方がいいか・・・?」
「大丈夫だよ。スコールがいるし。それに肌が触れ合うのって気持ちいいからさ、恥ずかしいけどこうしていたい。」

恐らく素直に自分が思ったことを言っているだけなのだろうが、殺し文句に近いセリフを躊躇することなく発するバッツに自分の方が恥ずかしくなりそうだと思いながら、誤魔化すかのように彼を強く抱きしめた。
自分の願いを聞き入れてくれたのだと思ったのか、バッツは嬉しそうに懐の中で身を丸めてきた。

「不思議だよなぁ」
「何がだ?」

突然の呟きに聞き返すと、わずかに笑いながら自分の顔を見つめられる。

「本当はおれの方が年上だけど、スコールの方が今は年上って状況がだよ」
「あんたの中身は変わらないだろう?」
「まぁそうなんだけどな。こうして広い体にすっぽり包まれるのって何年ぶりかなって思ってさ。本当のおれよりスコールの方が少し大きいけど、ここまで包まれることってないだろ?あ、でもスコールはまだ成長期だからなぁ。可能性としてはあるのか?」

笑いながら話す彼は天涯孤独の旅人であり一つの場所に留まることはない。人と人との温もりを得る機会は父親と母親が死別した今は皆無なのだろう。
それが寂しいと思うと同時に、孤独な彼を包めるのは今は自分だけだという独りよがりな満足感が混じり合い、心が苦く疼く。
彼が望むのなら、いくらでもそうしてやりたいと思うのだが、彼のような流浪の人生を歩む者はそのような言葉を発したらどう思うのか。
触れ合いたいと言われたものの、それがほんの少し怖くて、スコールは言葉を飲み込むとその代わりにきつく抱きしめた。

「・・・あんたに遅い成長期が来なければな。」

言いたかった言葉をいつか言えることを願いつつ冗談で本心を隠す。

ただ、この冗談はスコールにとってはあまりおもしろくもない冗談ではあったのだが。
できれば、バッツが自分よりも大きくならないで欲しい。子供じみているが年齢も、落ち着きも上の彼に勝るところは少ないと思っているから。
競うところが体格差であることに自身の余裕の少なさを痛感する。

「(どちらが大人か子供かわからないな・・・。)」

溜息を吐きそうになるスコールをバッツは黙ったまま見つめていたが、やがてスコールが考えていることを察したのか喉を鳴らすかのように笑った。

「はは、確かにな。けど、若くて成長期のお前の方がでかくなる可能性が高いけどな。大人っぽいけど、お前はまだまだ若いもんな。」

小さくなった手で頭を撫でると、スコールが少し不機嫌そうな顔をしている。
しまった、これはするべきではなかったか。と、笑った。

「さて、そろそろ休むとするかな。ちょっと疲れたしな」

バッツは舌を出して欠伸をしながらそう言うと、シーツの中で丸まる。
裸の胸に顔を埋め、「おやすみ」とくぐもった声で言ってこられるとスコールはため息を吐く。

少年になってしまったものの、やはりバッツはバッツだ。
ほんの数日前は不安そうにしていたことが、触れたいと強請られたことが嘘のように思える態度。
元気になってくれたようなのは嬉しいが、うまくあやされたかのような気がする。そのことを少し複雑に思いながらスコールはまるでぬいぐるみを抱く子供の様にバッツを抱きしめながらふわふわの髪に顔を埋めて瞳を閉じたのだった。




翌朝、昨晩の行為のためかほんの少しの朝寝坊をした二人が広間に向かうと、何人かの仲間は朝食を済ませて外へと出かける準備をしていた。
遅くなってしまったことを詫びると、仲間達は本来の身体ではないバッツと彼のお目付け役となっているスコールに「普段と勝手が違うので疲れが溜まっていたのだろう。」と皆が気にするなと笑い返した。
寝坊の原因について察していない仲間達に安堵はしたものの、唯一例外がいた。二人の関係をよく知っているジタンは疲れの原因を察しているらしく意味ありげな笑みを二人に向けてきたので居た堪れなくなり彼の視線から逃れられるように二人して手伝いを買って出た。
自分たちで準備をするからと言われたものの、甘えてばかりもいられないので外に出るメンバーの装備品の確認の手伝いに加わる。

今日は自分達と、拠点に待機する仲間が2名と聞いていた。二人の他に身支度を整えているメンバーの手伝いをしていたのはフリオニールとティナだったのでどうやらこの2人が拠点居残り組のようだった。
ティナとフリオニールから携帯食と水筒を受け取っているオニオンナイトが目に入る。

最年少の彼はティナと共に拠点に残ることが多いのだが、今日は珍しく他の仲間と共に外に出るようだ。
彼の場合、年が若いが深い知識と頭の回転の速さから外に出る場合は調査隊であることが多いのだが今日もそちらのようだ。記録用に使うのか携帯用の帳面を荷物袋にしまっている。

携帯食の他にポーションを差し入れしておくか、とバッツは自分の手持ちのポーションを渡すべく、オニオンナイトに手を振り近づいた。

「今日は調査隊か?」
「あ、おはよう!バッツ!」

小さな荷物袋を肩に掛けながらオニオンナイトが元気よく挨拶をしてくる
すぐ側にセシルとクラウドの2名が控えているのでどうやら3人でのパーティのようだ。

「今日は何処に行くんだ?新しい断片でも見つかったのか?」
「ううん、違うよ。断片調査じゃなくて、今日の行先はガレキの塔」
「僕とクラウドとオニオンでもう一度ガレキの塔に行ってみようと思うんだ。バッツが若返っちゃった原因を探そうと思ってる」

3人に質問をすると、オニオンナイトが首を振り、セシルが質問を返す。
調査なら一度行われたはずだが。と首を傾げる。

「?手がかりは何もなかったんだろ?」
「そうだけど、見落としがなかったかもう一度確認しに行こうってことになってね。アルティミシアもケフカも未だに見つからないし、2人の捜索は別のチームに今日は任せようと思うんだ」
「そういうこと。手がかりが見つからないならもう一度原点に戻ってみるのも一つの方法だからね。戦うことは難しくても、これくらいなら僕も手伝えるしね」

わかったように言うオニオンナイトにバッツは苦笑する。
聡明なようでもまだ背伸びしがちな子供っぽさが残っている。けれど、彼は彼なりに自分ができることを考えてのことだろう。
横にいるセシルが優しげな瞳で彼を見つめて、そして自分の方に視線を移してきた。
皆が自分を元に戻そうと頑張ってくれている。その気持ちは嬉しく思うのだが、少し申し訳なかった。

「悪いな、みんな」

頬を書きながら詫びを入れるバッツにオニオンとセシルが首を振る。クラウドは黙ったままだったが、気にしていないとばかりに両手を上に向けて肩を竦めた。

「ううん。気にしなくていいよ。今回のことはきっと、神様がバッツにお休みくれたんだと思うよ。この世界の神様はコスモスとカオスだけど。ほら、ちょっとした風邪を引いたと思って、いい機会だからゆっくり休みなよ」
「セシルの言うとおりだよ。それに、一人に何かあっても残りの9人と力を合わせれば何とかなるよ。3人寄れば文殊の知恵だよね?人数は単純にその3倍なんだからさ。まかせてよ」
「はは、そうだな。頼りにしてるよ。」

セシルとオニオンに励まされ、バッツは笑った。
スコールもだが、頼もしい仲間が自分のすぐ側にいるということはとても心強い。
本来自分は旅人で、相棒と共に一人と一匹の旅を続けていた。神々の戦いに自分が喚ばれていなければ、自分以外の者と寄り添い合い、そして助け合う機会などほとんどなかっただろう。
共に戦う自分を含めて10人の仲間達に一人とはいえ抜けができてしまった分を他の仲間が分担している上に自分を元に戻そうと日々頑張ってくれている。目の前の3人と他の仲間たちに感謝をした。

「3人ともありがとな。けど、あんまり無茶はしないでくれよ?」
「大丈夫だよ!」
「僕たちは平気だから、バッツも気をつけて。少しは慣れたとは思うけど、本来の姿じゃないんだから。まあ、スコールもいるし、今日はフリオニールとティナが拠点に残るから何かあってもちゃんと頼って。そのための10人なんだから」
「わかってるさ」

セシルの優しい気遣いにバッツは大丈夫だと胸を張る。
その様子にセシルは目を細めると、クラウドとオニオンに「そろそろ行こうか」と声を掛けた。
オニオンはもう準備はできていると腰に下げた剣の柄を軽く叩く。すると今まで殆ど何もしゃべらなかったクラウドが、バッツにではなく少し離れた所にいたスコールに向かって声を掛けた。

「聞こえているだろ?そういうわけだ。スコール、このやっかいなガキの面倒はあんたに任せた」

今まで大人しくしていたと思ったら、中々なことを言うクラウドにバッツの目が点になる。
スコールはといえば呼ばれたクラウドの方に視線を向け、その後にバッツに視線を移し、そしてまたクラウドに戻すと「ああ」と小さく頷いた。

クラウドと年齢が一つしか違わないのに、ガキ呼ばわりされてしまった。
おまけに自分よりも3つ年下であるスコールのあの態度。

普段無口な二人の変に息の合ったやり取りに、バッツは拳を振り上げ、地団駄を踏み始めた。

「おいおい、やっかいなガキってなんだよ!?おれとクラウド、一歳しか変わらないじゃないか!??スコールもそこで頷くなよ!!そりゃお前には世話になってるけど・・・そりゃないだろ!?」

3人のやりとりにセシルとオニオンが笑う。
その笑い声に誘われて他の仲間達も笑い出したのだった。


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