おとなと子供 -3-

若返ったバッツネタです。
17歳×(見た目)14歳なネタなので苦手な方はご注意ください。

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規則正しい寝息とシーツの擦れる音がする。
窓へと視線を向ければ外は金色に輝く三日月が浮かび上がっていた。
穏やかな夜は次の朝へを迎えるための束の間の休息。

そんな貴重な時間にも関わらず、バッツは寝つけなかった。

疲れていないというわけではない。昼間に昼寝をし過ぎたわけではない。
夜に眠れない理由と言えば大体は睡眠時間をずらしてしまったか、余分に取りすぎたか、そして悩みを抱えているかである。
バッツ自身何故自分が寝付けないのかはよく解っていた。答えは後者。自分が寝付けない理由は隣に眠る少年の存在。

「(よく眠ってる・・・。)」

自分を包み込むように抱きしめて眠る少年、スコールの顔を見つめながらバッツは小さく息を零した。
本来は自分よりも年下ではあるのだが、今、事情があって彼と年齢差が逆転してしまい、元々ほんの僅かに大きかった彼の体格が今は大きく差を開けてしまっている。
不幸中の幸いか、年齢が後退してしまったものの記憶まで後退はしていないため子供扱いはされてはいない。
ただ、身体を気遣われることが未だに多いため申し訳なく思うことが多々あるのだが。

スコールは自分とは違い年齢の割には大人びていて、整った顔立ちをしている。少々無愛想ではあるものの、中身は繊細で柔らかく、そして温かい。
異性が惹かれる要因を数多く持ち合わせているとは思っていたものの、まさかこの少年と自分が恋仲になるとは思いもしなかった。

この世界に来る前の記憶は曖昧ではあるが、この世界に来てからの記憶は霞のような記憶を埋めていくかのように鮮明に残っている。
スコールと出会い、旅をして、彼に惹かれて、身も心も寄り添い、重ねた。
刹那の関係だとしても、いつかの別れが脳裏を掠めることはあっても、互いを想い合った事実と彼と過ごした時は無くなるわけではない。
今生きている瞬間を、彼と共に後悔なく歩んでいこうと決めた。だからこそ、できる限り彼と多くを語り、身も心も通わせればと思う。
今までも、今現在も、この少年は可能な限り自分の傍についてくれている。手を伸ばせばすぐ触れ合えるところに彼がいる。

それにも拘わらず、心は曇っていた。

体は少年になってしまったものの、中身も14歳になったわけではない。ちゃんと二十歳の男だという自覚も一応はある。
そうであるが故に、少年の身体になってからスコールとの深い触れ合いがないことに僅かながらに寂しさを覚え始めていた。

数日前までは触れるたびにスコールが内なる理性と欲との戦いに頭を悩まされているとは気付きもしなかった自分が、彼と同じ思いを抱くとは思わなかった。彼の内側に隠していたものに気がついてしまったからこそ、同じ思いを抱いてしまったのかもしれない。
今度は自分が彼との深い触れ合いを望んでしまっている。
ぬくもりの居心地の良さに甘え過ぎて彼を困らせてしまったのに、自分勝手でなんて我儘なんだと思う。
その上、スコールは少年の自分に深く触れ合うことをよしとしていない。
スコールが手を出してこないのは勝手がわからない体での自分の精神的、肉体的負担を考えてのことなのかもしれないということはバッツ自身もよくわかっているため余計に言えない。

「(元に戻ってからと言ったものの・・・なぁ。)」

自分の体が元に戻ってから。そう言う前も言った後も彼は口づけ以上のことをしてこなかった。夜は今のように抱きしめてただ眠るだけだった。
それが嫌なわけではない。むしろ嬉しいと思うのだが、触れているのに触れられない、そんなお預けを食らったかのような状況に心がもやもやとしていた。

これが欲求不満というやつなのかと悶々としながら、バッツは安らかに眠るスコールの寝顔を改めて見つめた。
自分の横で静かな寝息を立てて眠るスコールの寝顔はとても安らかで、普段の気難しい顔とは違い、年相応の少年のように思えるほど穏やかなものだった。
隣は穏やかなのに、こちらはその彼を散々困らせたのに今になって何不埒なことを考えているのだとバッツは自分自身に呆れながら溜息を吐いたのだった。



翌朝、あまりよく眠れなかったバッツは欠伸をかみ殺しながら、雑務をこなしていた。
少年の身体になってしまってから、前線に立てなくなってしまったため、その代わりとして炊事や洗濯などを自分と立場が似たオニオンと女性のティナの3人で積極的にこなしている。
今日はスコールもクラウドとセシルと連れだって探索に行ってしまっているので彼や外に出ている仲間達が帰ってくるまでは自分ができることをしてしまおうと早速、洗濯物に取りかかった。

ここ最近天候が安定しておらず、久々の快晴のためここぞとばかりに溜まりに溜まった洗濯物を抱えて水場へ向かう。
10人もの人間が集まれば衣類の量も半端ではない。大きな洗い桶に水を張るとに洗濯物を放り込み、洗剤と洗濯板で手際よく洗っていった。
汚れを落とし、洗剤を清潔な水で流して、水気を取るために絞る。単緒な作業ではあるが、嫌いではない。
汚れたものが綺麗になれば嬉しいし、なによりも何も考えずに作業に没頭できる。
昨日の夜のことなど忘れてしまおう。そう決めて次々と洗濯をこなそうとしたが、スコールのカットソーが目に入ってしまい、再び思い出してしまった。

一体自分は何をやっているのだ。

スコールも、まさか自分がこんな風に内に隠した欲求に悩んでいるとは思ってはいないだろう。
話せば同じ男として、理解はしてくれるかもしれないが、知られたら困らせてしまう。だからこそ言えない。

洗濯物も途中にバッツは今一度自分の身体を見た。
どちらかと言えば痩せ型の体で背は小さくはないものの大きくもない。何度見直しても少年の体だ。この状況に慣れてしまったがため、見慣れたと言ってもいい。
一体いつになれば元に戻れるのだろうか。
手がかりが全くない上に自分にできることが限られている状況にバッツは大きく溜息を吐いたのだった。


「よう、らしくない溜息だな。」

突然の呼びかけにバッツは項垂れかけていた頭を起こして振り返ると仲間の一人のジタンが立っていた。今日は拠点に残っていたようで、ひらひらと手を振りながらのんびりとこちらにやってこられる。
考え事をしていたとはいえ気配にまったく気が付かなかった。
ジタンはバッツの様子を見て笑いかけると、洗濯桶が置かれている所までやってきて、一緒になって水に浸っている洗濯物を絞り始めた。
どうやら手伝ってくれるらしく、手際よく洗濯物を片付け始めてくれた。

「手伝ってくれるのかよ?せっかくの休みなのに。」
「休みだけど、何もすることがなくて暇なんだよ。こういうのは二人でやった方が早いだろ?なにより、雛チョコボに溜まりに溜まった10人分の洗濯物は大変だろう。」
「あーなんだよ、雛チョコボって。チョコボはクラウドだろ?おれ、そんなにひよっこにみえるか?」

手伝ってくれるのはとてもありがたいのだが、彼は何故自分を雛チョコボなどと呼んだのか。
自分はそんなに頼りなさげに見えているのだろうか?見かけだけなら同じ仲間のオニオンと同じかそれよりも少しばかり上だとは思うのだが。
チョコボは好きだが少年になってしまったことで沈んでいるところに雛と言われて、気持ちとしては微妙である。
眉を寄せて見つめてくるバッツに察したジタンは笑いながら頭を指差した。

「子供になってしまったこともあるけど、一番がお前の寝癖だらけのくせ毛からだよ。子供の髪の毛って柔らかいしな。色は黄色くないけど、生まれたての雛チョコボの毛みたいじゃないか?」
「・・・なんだ、それでか。」

そう言われれば、普段に比べて髪の毛は柔らかい。もともと癖毛ではあるが、ふわふわとしていて言われてみれば生まれたての子チョコボと言われてもおかしくはない。褒め言葉ではないが。
バッツは一度自分の髪をくしゃりと掴むと、「確かにそうだな。」と納得しへらりと笑った。
笑いかけるバッツにジタンもまた笑うと二人で他愛もない話をしながら次々と洗濯物を片していった。
ジタンの砕けた物言いと豊富な話題に先程まで悶々と色々考えていたため少し重くなった心がほんの少し軽くなった。この前スコールのことを教えてくれたり、自分の雑務を手伝ってくれたりとさりげなく自分を気遣ってくれている。きちんと言葉にして礼を言うべくバッツは洗濯の手を止めずにジタンに礼を言った。

「ジタン、ありがとな。」
「いきなり何だよ?」
「洗濯と、あとスコールのことだよ。」
「・・・ああ。礼を言われるほどのことなんてやってないけどな。で、スコールの次はお前かよ。」

絞ったシャツを振り、残りの水気を飛ばしながら、何でもない風を装って聞いてきたジタンにバッツは少々驚くとやがて苦笑した。
年の割には洞察力に優れたジタン。明るく振る舞い、元気がよさそうに見られることが多い自分は、外のイメージが強いがために、内面を悟られにくい方だと思っていたのだがどうやら目の前の少年にはお見通しだったらしい。バッツは自分が洗っていた最後の洗濯物を水を張っていない空の桶に入れると、立ち上がって服の埃を落としながら呟いた。

「ジタンはすげぇなぁ。ばれちまってたか。」
「まぁな。お前らというかスコールはわかりやすい。バッツも、普段は上手く隠す癖にさっき油断してただろ。大きな溜息吐いて項垂れてたら気付くって。ま、偶然だけどな。」

そうでなければ見抜けていない。と、ばかりにジタンは首を振りながら自分が担当していた洗濯物をバッツの傍の桶に綺麗な放物線を描きながら放りこんだ。
軽く言ってはいるものの、一瞬のことだったはずなのに見逃さず、見抜く彼にバッツは素直に感心する。
ただ、気づいてはくれたものの、彼がそれで手助けをしてくれるかどうかは別ではあるが。普段から何かと世話になってくれているのでスコールとの関係に関しては彼の世話にはならないと決めてはいるが一応聞いてみることにした。

「気付いたとしてもお前からしたら当人同士の問題で自分達で解決しろって言うんだろ?」
「そういうこと。お前らの問題はお前らで解決しろよ。可愛い女の子ならともかく、いい年した野郎同士の恋愛指南なんて御免だよ。」
「言うなぁ・・おれ、一応今は14歳だぜ?」
「見かけだけだろ?中身は20歳なんだからよ。」
「はは、そうだな。」
「それにオレはお前ら二人ならちゃんと話し合って決めれるって思ってるからよ。スコールもお前も、もう少し相手に対して遠慮せず、素直になったらどうよ?そうしてくれるとオレの気苦労も減るってもんだ。」

わざとらしく嘆息するジタンにバッツは「ごめんなー。」と笑いながら謝った。どの仲間達よりも自分達の関係を気にしてくれる彼だからこそ、程良く距離を置き、さりげなく探ってくれる。長く共にいるからこそのジタンの気遣いに心の中で感謝をした。

「ジタンの言うとおりだと思うよ。ありがとう。・・・けどな、難しいというか何と言うか・・・。」
「何に悩んでるかは大体想像はつくけど、お前はそれでいいのかよ。」
「まぁ・・・。」

流石に体のこととなると余計に困らせてしまうかもしれないと思うとジタンの助言に簡単に従うわけにはいかない。スコールを悩ませるくらいなら、自分が我慢すればいいとバッツは思っている。
しかし、そんなバッツの思いなどすでに察しているジタンはスコール側から話を切り込んできた。

「あと、お前だけじゃなくてスコールも。あいつはお前のことが大好きだけど鈍いから、自分が知らず知らずのうちに何かしちまわないかとか、気を遣わせてないかとかで悩むタイプだと思うぞ?相手からしたら一人耐えて隠されるのも嫌なもんなんじゃないか?自分一人が我慢するようなことはちゃんと話せよ。お前も苦しいと思うけど、そうやられるスコールも苦しむと思う。」

スコールの性格をよくわかっているジタンならではの意見にバッツはうっと息を呑んだ。
なるほど、そこでも悩む可能性は十分にありそうだ。さすればどちらにしても彼を悩ませてしまうではないかとバッツは頭を抱えそうになった。話さなくても話したとしても困らせてしまう。じゃあどうすればいいのかと頭が痛い。
そんなバッツの様子にジタンは呆れたように笑うと、肩を叩き、口を開いた。

「さっきも言ったけどさ、お前ひとりの問題じゃないんだろ?元に戻れないことが関係しているなら、一番に相談すべきなのはあいつなんじゃね?そんなに難しく考える必要はないとは思うけどな。お前が逆の立場ならどうよ?」

ジタンにそう言われ、バッツは頭を抱えた体制のまま考えた。言われてみればスコールが自分と同じような状況になってしまったら一人で抱え込まずに遠慮なく相談して欲しい、とは思う。
一番近くにいるからこそ、彼には自分が出来る限りのことをしてあげたいと思う。スコールも自分と同じようにそれを望んでいたとしたらどうだろうか?
自分が一人で悩みを抱え込むようなことをしたら・・・スコールの性格を考えたら、納得はしてくれないだろう。自分もされたら「何故?」と彼に聞きかねない。
ただ、自分の場合は身体への欲求なので居た堪れなくなりそうだが。

しかし、それをジタンに言われなければこの問題に背を向けていただろう。自分よりも年下ではあるが他者に対しての気配りは彼の方が大人だと感心しながら、バッツは苦笑交じりで礼を言った。

「・・・色々ありがとな。」
「いやいや、どういたしまして。というか、これくらい気付けよなー。」
「うん、ごめんな。ちょっと、考えてみるよ。」

小さく笑いながら頭を下げてきたバッツにジタンもまた笑い返したのだった。



夕方になり、外に出ていた仲間達が帰還すると、夕食と明日の予定の確認を行って解散となった。
風呂に入り、就寝までの束の間の自由時間を過ごした後、夜間の見張り当番の者以外は一日の疲れを取るために就寝する。
大抵の者は一日の疲れを癒し、明日のために早々と自室に引っ込む者が大半だ。

スコールもまた、今日の探索の疲れがあるのか、寝台に横になると、すぐに静かな寝息を立てて眠り始めてしまった。
隣で眠るバッツは少年になってしまってから、拠点での雑務をこなすことが多くなってしまったので彼ほど疲れてはいない。
昨日と同じように、スコールの寝顔を見つめながら、昼間のジタンとのやり取りをぼんやりと思い出す。
友人に諭され、考えてみると言ったものの、いざ彼と二人になると話を切り出すのを躊躇ってしまう。
自分が体を重ねたいので抱いてくれと言うのは簡単だが、言ってしまった後で彼がどのような反応をするのか、想像するだけで冷や汗をかいてしまいそうだ。
ただの性欲なら自分一人で処理をすればいいのかもしれないが、それ以上に彼との触れ合いを求めているため、一人でだと虚しくなるだけなのは明白だ。
今夜もまた、寝不足になりそうな予感を感じながら、バッツが瞳だけでも閉じようとした時、隣の少年が身じろき、ゆっくりと瞼を上げた。

「・・・まだ、起きていたのか?」

眠気を含んだ声でスコールは声を掛けると普段に比べて緩慢な動作でバッツを抱き寄せた。
どうやら、まだ夢の中に片足を突っ込んでいるのか、目を擦って眠気を飛ばそうとしており、その仕草にバッツは苦笑した。

「悪い、起こしちまったか?」
「少し前に気が付いたんだ・・・どうした?」
「え?」
「あんた、何か悩んでるような、そんな感じがしたから・・・。」
「・・・そっか。」

自分が一人で色々考えていたことにどうやらスコールは気づいていたようだ。
流石に何についてかまでは察してはいないようだが。

「(ジタン、スコール、思ったよりも鈍くないみたいぞ。ちゃんと見ていてくれてたみたいだ。)」

心の中で友人に呟くと、抱きしめられた腕の中で自分も抱きしめ返す。本来の姿の時にするそれとは違い、背中が広くて、広げた腕に余裕がなかった。
けれど香りや温かさに変わりはない。世界で一番彼が近いからこそよくわかった。
暗闇ではあるが、彼の表情がよく見える。心配そうな、不安そうな、暗い表情のまま黙って此方を窺っている。
何かを察しているのに気づくこともできず、自分が話すのを待っているのだろう。もし自分が逆の立場なら、彼に聞き出そうと強いていたに違いない。
この少年が悩みを打ち明けず、自分一人で抱え込んでいたとしたら、おそらく自分も何故そうされるか悩むだろう。

何も言わないバッツにスコールは抱きしめる力を強くし、、少し癖のある髪に顔を埋め頬を擦り寄せてきた。まだ、少し眠いのか小さな子供が甘えるかのような仕草だった。今は自分の方が見かけは子供ではあるものの、関係はなさそうだった。彼はまだ、少年なのだから。
バッツはスコールの頭を小さな手で撫でると、心を落ち着けるかのように息を吐き、意を決して自分の内に隠していたことを話し始めた。

「なぁ。」
「・・・なんだ?」
「この前さ、元に戻ってからってことになってたけどさ、おれ・・・今、お前ともっと深く触れ合いたい。」
「え・・・。」

バッツの言葉にスコールは半分閉じられかけていた瞳を大きく見開いた。
どうやら眠気が吹き飛ぶほどかなり驚いている様で、バッツは苦笑し、胸に顔を埋めて「だめか?」と伺った。
よほど困惑しているのか、スコールはバッツから顔を逸らし、何処にともなく視線を辺りに彷徨わせながら、やがて小さな声で答えてきた。

「あんたのその体じゃ・・・無理だろう。」

抱いて欲しいとわかってはいるものの、彼の体のことを第一に思うと簡単に了承することができなかった。
青年から少年の姿になってしまった愛おしい恋人に負担を掛けたくない。元に戻るまでは抱きしめ、口付けだけでも十分だと伝えたのだが、彼は気を遣っているかもしれないと勘繰ってしまい、スコールはこれ以上何も言わずに黙ってバッツを見つめた。
見つめられているバッツは、スコールのその瞳から彼が何を考えているか簡単に察することができ、柔らかく笑うと、安心させるかのように背に回した手で数回優しく背を叩いた。

「おれなら大丈夫だから。」
「その根拠は何処にあるんだ。」
「なんとなく?・・・いや、大丈夫だからとかそんなんじゃない。繋がりたいって気持ちのが強い、からかな?」
「先程も言ったが流石にその体で無理はさせたくない。」

予想していたスコールの答えと頑固な態度にバッツは悩んでいたにも関わらず笑いそうになった。
笑いを堪えるバッツにスコールは眉間に皺を寄せる。相手を気遣ってのことなのに何故笑うのかと言いたげな不機嫌そうな表情にバッツは耐えきれず、小さな声で笑いながら、スコールの顔を見つめた。

「ごめんごめん。前にさ、お前が触れる方法は沢山あるって言ってたよな・・・けど、おれは体も重ねたい。」
「・・・あんた、何を考えているんだ。」
「スコールのことだけど?」
「・・・。」
「・・・やっぱだめか?」

大きな瞳で問いかけてくるバッツに、スコールは暫し沈黙する。自分に触れることを自重していただけに悩むのは当然といえば当然なのだが。顔を伏せて黙りこくる彼の姿からやはり困らせてしまったな、とバッツが謝ろうとすると、何か吹っ切れたのかスコールは顔を上げてバッツに向かってため息を吐いた後に身体を抱きしめながら少し躊躇いがちに耳元で囁いてきた。

「・・・後悔、するなよ。」

綺麗な低音の声が鼓膜を震えさせる。それと同時にこれから始まる交熱に身体と心が震えた。
言いだしたのは自分とはいえ、普段とは違った状況に多少の緊張を感じつつ、それを目の前の愛おしい少年に悟られぬように目を細めて柔らかく微笑んだ。

「おう。お前もな。」
「そのつもりだ。散々我慢してきたのはこっちだ。煽ったあんたが悪い。」

言い訳がましく言いつつも自分の髪を梳くスコールの手つきが優しい。一片たりともそう思っていないことは明白で、バッツは苦笑し、スコールの首に齧りついた。

「そういうことにしてくれよ。」

発した言葉をぶつけるかの如く、軽く口付けるとスコールは一度バッツを強く抱きしめ、導くかのように寝台へ押し倒したのだった。


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迫る14歳(中身は二十歳ですが。)
言い訳くさいですが、中身が二十歳だからこその行動かと思います。


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