“好き”には、どうやら種類があるらしい。
真剣な顔でそう言ったヤツに思わず溜息が漏れた。
「話があるから」と言われ、呼び出されたのが五分前。声のトーンが結構本気だったから急いで駆け付けたのが三分前。どうでもいい内容に脱力したのが一分前。
嗚呼、あたしって本当にツイてない…
「俺そんなの知らなくってさ!驚いたぜ!」
うなだれているあたしに気付かないトウヤはそのままペラペラと喋り続ける。時折同意を求めてくるけどあたしの答えを聞く前に「やっぱりそうだよな!」なんて一人で納得してしまっている。…何のために聞いたんだよ…
「それでさ、俺名前のこと好きだ!」
「へー良かったねー…………は?」
よくもまあ一つのことに対してこんなにもペラペラと喋れるもんだなぁ…なんてぼんやり考えている間に爆弾が落ちてきた。落としたのは勿論目の前でニコニコしているトウヤ。
「……トウヤ、今なんて?」
「俺、お前が好きだ」
すき…スキ?……好き?
「…」
…駄目だ、誤魔化されちゃ駄目。
これで何回期待した?その分何回傷付いた?いい加減学習しろ、自分。
もう傷付くのはイヤだから、この気持ちに蓋をしたんだろう。
無駄にするな、自分の決意を。
大丈夫。出来る。
「トウヤ、あたしもあんたが好きよ」
「!本当か!?」
「うん。大切な友達だもんね」
そう言った途端に、ピクリとトウヤの肩が跳ねた。そしてどんどん不機嫌な表情に。
あたしは何か怒らせるようなことを言ったのだろうか?
「トウヤ?」
「…俺は、お前が好きだ」
「?うん、だからあたしも好きだって」
「違う!」
いきなり大声で否定された。何なんだ一体。
「俺は!友達とかじゃなくて!一人の女として!お前が!好きだって言ってんの!」
一回一回区切って言ったトウヤに通行人の視線が集まる。そりゃそうか、あんな大声で告白なんてしてたらあたしも見る……告白…?
「……トウヤ」
「なんだよ!」
「あの、今のは、本当?」
夢じゃない?期待しても良いの?あたしが、ずっと仕舞ってきたものを、出しても良いの?
「本当だ」
「…っ!」
「俺は、名前が好き。お前は?」
「…好き、よ。大好き」
それは、友達として?なんて意地悪なことを聞くねトウヤ。わかってるくせに。
涙で滲んだ視界にトウヤの太陽みたいに輝く笑顔が映る。それにつられるようにして、あたしも笑う。
そんなの、決まってるでしょ。
「一人の男として、トウヤが好き」
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