その人はいつも唐突。
夜の闇に紛れて、静かにやって来る。


「こんばんは」
「あ、こんばんはランスさん」


知っているのはランスという名前だけ。それさえ本名なのか分からないけれど。


「今日はご飯、食べます?」
「いえ、今日はいいです
それより、ゆっくり話がしたいですね」
「ふふ、最高の口説き文句ね」


二人分のコーヒーを淹れてリビングに向かう。
ランスさんは既にソファーに腰かけてテレビを見ていた。

最近、ロケット団の活動が活発化していて、ニュースはその話題で持ちきり。
いま、ランスさんが見てるテレビもロケット団の特集番組だ。


「ロケット団ロケット団…最近、ロケット団ばかりですね」
「飽きましたか?」
「いいえ、素敵だと思いますよ
世界制服を目指す組織」


にっこりと微笑めば、ランスさんは驚いた表情を浮かべた。
でもそれは一瞬で、すぐに微笑みを浮かべた。


「名前、もうしばらく会うことはできせん」
「………はい」
「理由を聞かないんですか?」


ランスさんの言葉に素直に頷けば、またもや驚いた表情を浮かべられた。
理由を聞かないことに驚いたようだが、聞かなくても薄々分かっていたことだ。

ランスさんと初めて出会ったのは3年と少し前。最初のロケット団が解散して間もなくのこと。
初めの内は昼夜問わず頻繁にやって来たが、しばらく経って再びロケット団の活動が囁かれるとその頻度は格段に減り夜にしか来なくなった。

きっとランスさんはロケット団に関係している。
そう結論付けるまでそう時間はかからなかった。

それはきっと、私の中で、答えが決まっているからだ。


「大丈夫ですよ、ランスさん」
「え…?」
「私、待ってますから
ずっとここにいます
全部終わったら、迎えに来てください」
「名前…」
「だから、気をつけて"いってらっしゃい"」
「…はい、"いってきます"」


待ってるよ、此処で
(だから今度は"ただいま"を聞かせて)



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20130218
そろり様に提出させていただきました。

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