『あいたい』
その4文字が言えなくて、今日もまた開いたポケナビを閉じる。
「だってレッドさん忙しそうだもんな」
ポケナビを握りしめて、小さく溜め息を付く。だってレッドさんは伝説のトレーナーで、多くのチャレンジャーのために頂点に居続けなければならない。きっと今日だってレッドさんとのバトルをすべくチャレンジャーがシロガネ山に訪れているだろう。私一人のために、何人もの人を犠牲になんかしたくない。
そんなことを思いながらベットの上をゴロゴロする。もう何日目だろうか。仰向けに寝転がり天井を見る。すると手の中でポケナビが震えた。
こんな時どうせ掛かってくるのはグリーンさんだ。今まで何度「オレオレ、グリーン」詐欺に引っ掛かった事か。発信先も見ずに気だるそうに電話に出る。
「もー、なんですかあー」
「名前?」
「えっ」
それは私が一番聞きたかった声で。
「レッド…さん」
「元気?」
「はい…」
「どうしたの?具合悪いの?」
「元気ですよ…っ」
その声が優しくて、愛しくて思わず涙が出た。ズッズッと鼻を啜りながら応答に答えていたら「泣いてるの?」と困った様に笑いながらレッドさんが言った。
「ごめんなさい」
「何が?」
「レッドさん困ってる」
「ははっ、困ってないよ」
「レッドさん…」
「ん?」
「あの…」
言えない。涙がまた溢れ出る。ポケナビからレッドさんがどうしたの?と心配そうに問う。唇を噛みしめ意を決して息を吸う。
「あ、あい…たい」
一瞬間が空いてレッドさんが言った。
「遅いよ、名前」
「えっ…」
「ね、外に来て」
まさか、と息を飲んだ。急いで部屋の窓を開ければ家の前にポケナビを片手に持つレッドさんとピカチュウが居て。
「早く」
少し切なそうにレッドさんが電話越しに言った。
私はベットにポケナビを置いて勢いよく部屋のドアを開け、階段を掛け降りる。玄関のドアを開ければ彼が居て。
「あいたかった」
そう彼は言った。彼に触れるまであと少し。
逢いたいと相対
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そろり様への提出物
また無駄に長い。イケメン生産出来ない。これでいいだろうか。