膝の上ですやすやと眠るピカチュウのあたまをそっと撫でるとくすぐったそうにからだを捩らせた。
早く強くなりたくて、それしか考えていなかったせいでピカチュウをボロボロにしてしまった。
ジョーイさんのおかげでケガはもう治ったが、またピカチュウをボロボロにしてしまうのがこわくてかれこれ3日はポケモン勝負をしていない。
気づいたんだ。
ピカチュウは弱くなかった。
弱いのは私の心だった。
ピカチュウは戦いたいのか、まちを歩くたびに私を草むらに連れていこうとするけれど、弱い私は一歩踏み出すことができなくて立ち止まってしまう。
そんなときピカチュウは笑って反対側に駆け出すけど、知ってるんだ。私が立ち止まるたびに悲しい顔をしていること。
あのね、もう少しだけ待っていてほしいんだ。
今はまだ前にすすめないけれど、必ず一歩を踏み出してピカチュウとまたバトルできるように強くなるから。
変わらずに寝息をたてるピカチュウのほっぺにそっとキスをした。
黙ってキスして
(君のほっぺに約束するよ)