※悲鳴嶼さんと合法ロリ主の続きで微エロかも
※リクエストありがとうございました!!





本日、悲鳴嶼が藤の花の家紋のなまえの家に着いたのは午前零時になろうとする頃だった。任務の後に向わせてもらうと事前に鎹烏を送っていたが思いの外鬼を退治するのに手こずりこんな時間になってしまった…寝ているなまえを起すのは申し訳ないと思いつつもやはり彼女に会いたいと思い悲鳴嶼が家の戸を叩けばなまえは眠ることなく起きて待っていて笑顔で悲鳴嶼を出迎えてくれた。

「悲鳴嶼さん、今日は本当にお疲れ様でした」
「なまえこそ、こんな夜分に訪ねてしまって申し訳ない…」
「なにを言っているんです、恐ろしい鬼を退治してくれる鬼狩り様のお役に少しでも立つ為に私達藤の花の家紋の家があるんですよ。それを申し訳ないだなんて言わないでください」
「…感謝する」

そして悲鳴嶼の為に風呂も沸かしてくれてなまえが用意してくれた寝巻きに着替え悲鳴嶼は庭の見えるいつもの縁に座っている。時刻は深夜だが今夜は月も出ていて夜風が気持ち良い…静かで長閑な美しい夜だ。

「お腹は空いていませんか?少し冷えてしまったかもしれませんがおにぎりにしてみたんです、良かったら食べてください」
「これは…わざわざ私の好物を用意して待っていてくれたのか…?」
「ふふふ、悲鳴嶼さんには喜んで貰いたいから…」

そう言ってなまえは盆に乗せて握り飯と温かいお茶を持ってきてくれた。その握り飯は白米ではなく炊き込みご飯で、それは悲鳴嶼の好物だ。夕暮れ前にやって来た鎹烏から任務後に悲鳴嶼が来ると聞いてなまえは彼の好物を作って待ってくれていたのだ。それに用意していたのはそれだけではない、他にも以前悲鳴嶼が美味いと言ってくれた料理を作ったりしてなまえは悲鳴嶼をもてなす用意をしていた。こんな時間まで自分は風呂にも入らず起きていてくれたし、それ程まで自分が来るのを待ってくれていたなまえを悲鳴嶼は愛しいと思った。

「家に帰って来るのが遅くなり、本当にすまない…」
「すまないなんて言わないでください、こうして無事に…帰って来てくれるだけで私は嬉しいのですから」

そしてなまえも悲鳴嶼が自分の家でもないこの家を「帰って来る家」と言ってくれたのが嬉しかった。悲鳴嶼となまえは夫婦ではないが、彼がなまえが居る場所をそう言ってくれたのがなまえは何より嬉しかったのだ。
それから悲鳴嶼となまえはいつものように穏やかな時間を過ごした。冷えてしまったと言うが握り飯にしてくれたなまえの炊き込みご飯はとても美味しくて他愛も無い話題で話しが弾んだ。近頃あの白い猫はまだ来ているのかとか、悲鳴嶼と共に来た事がある玄弥は元気かだとか、そんな話をしながら悲鳴嶼もなまえもこの時間を楽しんだ。そしてしばらくするとなまえは私も風呂に入って来ると言って縁を立った。一人になった悲鳴嶼はなまえと過ごす時間は時がどれ程経ったのか忘れてしまう程楽しいものだと改めて実感したのだ。

「悲鳴嶼さん」

風呂から上がり寝巻きになったなまえが戻って来た。

「そろそろお休みになられますか?」
「…いや、もうしばらく月を見ていたい」
「なら私もお供させてください」

なまえはそう言うと悲鳴嶼の隣に腰を下ろした。さわさわと静かに風が吹いて悲鳴嶼はなまえを横目で見た。昼間は十代の少女に見える時もあると言うのに濡れた髪の湯上りのなまえは、なんとも色っぽい。

「今日は来ないわ…」
「なにがだ?」
「悲鳴嶼さんに懐いてる白い猫ちゃん」

夜行性な猫はどこか遊びにでも行っているのだろうか、いつもなら悲鳴嶼の声が聞こえればすぐに飛んでくるあの白猫も今日は姿を現さない。猫好きな悲鳴嶼は残念だと思ったが。

「大好きな悲鳴嶼さんの膝枕…今は独り占めしてもいい?」
「勿論だ」

愛らしい猫か愛しいなまえかどっちを選ぶかと言われたら、悲鳴嶼が選ぶのはやはりなまえだ。その言葉を聞くとソッと寄り添うように悲鳴嶼の膝に頭を乗せるなまえ。そしてそんななまえの髪を優しく撫でる悲鳴嶼。

「…とっても落ち着くわ、今日は気持ち良く眠れそう」
「なまえは近頃寝不足だったのか…?」
「ううん、そういう訳じゃないの。ただ、いつもは夜が怖くてたまらないの。村に鬼が現れたらどうしようって、人が襲われたらどうしようって、不安なの」

それは鬼の存在を知る者ならば誰もが持っている不安だろう。なまえの家は藤の花が咲きほこっているから家に居る限りなまえ自身が襲われる心配はないだろう、だがそうではない村の人々はいつ鬼に出くわすか分からない。自分が布団の中で眠りについている頃に顔見知りの誰かが襲われでもしたら…そう思うと家に独りで居るなまえは不安で不安でたまらなくなる。

「でも悲鳴嶼さんが居ればちっとも怖くないわ。悲鳴嶼さんが居てくれたらすぐに鬼をやっつけてくれるもの、すぐに助けに行ってくれるもの」

なまえは見上げるように悲鳴嶼を見てニコリと笑った。そして手を伸ばすと悲鳴嶼の頬にソッと触れる。

「ね…そうでしょう悲鳴嶼さん…」

ジッと悲鳴嶼の目を見つめるなまえは歳相応に大人の雰囲気があって、だがどこか子供のように甘えるような眼差しで。そんななまえが愛しくて、もっと距離を縮めたくて、悲鳴嶼はなまえの身体を起すように抱えると。

「あっ…」

ヒョイとなまえを自分の膝に乗せた。悲鳴嶼の膝にすっかり収まったなまえは少し驚いたが大好きな悲鳴嶼の顔がすぐそこにあるから照れながらも嬉しそうに微笑んだ。

「悲鳴嶼さん…好き」
「私もだ」
「本当に?」
「ああ、なまえが愛しくてたまらない」
「ん…、」

今夜の悲鳴嶼はいつもと雰囲気が違う。なまえの色気に釣られたのか積極的でどこか大胆。なまえの唇をツツツとなぞるとなまえの甘い吐息が漏れた。

「悲鳴嶼さん…」
「行冥と」
「えっ」
「今宵は行冥と、呼んではくれないだろうか」
「…行冥、さん…」
「なまえ」

名を呼んでどちらからともなく顔を近づけ合う悲鳴嶼となまえ。二人の唇はそのまま重なりなまえは悲鳴嶼の首を腕を回した。そして悲鳴嶼もなまえの背中に腕を回し口付けをしながら二人は抱き合う。愛し合う者同士の甘い口付けはしばらく続いて唇が離れハァと息を付くなまえの頬は真っ赤だった。だが悲鳴嶼は離すまいと両手で優しくなまえの頬に触れる。

「ん…行冥さん、」
「今宵は片時も離しはしないぞ、なまえ」

悲鳴嶼の言葉になまえは満足そうに「嬉しいです」と言った。それから悲鳴嶼はなまえを抱いて寝室へと向かい、二人はそれはそれは甘い一夜を過ごすのであった。



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