「ねぇあなたなんのつもり?」
「え?」

信者の仕事のひとつである寺院の清掃…環が長い廊下の床をせっせと拭いていれば頭上からそんな声がかけられた。

「あなた、昨晩も教祖様の部屋に行っていたでしょう」
「何故あなたばかりなの?」
「そうよ、教祖様と何をしているのよ」

環が顔をあげればそこ居たのは三人の女信者達。三人とも腕を組んだり腰に手を当てたりしてどこか高圧的な態度で環を見下している。ハァとため息をつきたくなった環だったがそれを顔には出さずニコリと笑って立ち上がる。

「教祖様に呼ばれたので部屋に行ってきました。何をしていると言われても、話をしているだけですよ。教祖様の暇潰しの相手をさせていただいてるだけなんです」
「その相手が何故あなたばかりなのよ!つい最近ここに来たばかりなのに、何故あなただけが部屋に呼ばれるの!」

女達の主張は心底面倒くさいと環は思った。

「そんなこと私は分かりません。教祖様に直接聞いたらどうですか?」

そう、何故環ばかり呼ぶのかなんて童磨に直接聞けば済むことだ。しかしこの女達には出来ない。童磨にそんな事を聞く機会などこの女達にはないからだ。なのに環があっさりと言うものだから腹が立ったのだろう。

「っそれができないから!!!」

あなたに聞いているんじゃない、と女の一人がカッとなって環の肩をドンと押した。環は体制を崩すが倒れる程じゃなかったので一歩後ろに後ずさっただけで済んだ。

「私聞いたのよ!」
「聞いた?なにを?」
「教祖様の事を名前で呼んでいたでしょう!それに教祖様から好きと言われていたわ!!!」

どうやら、女は童磨が環の事を大好きだよと言っていたのを盗み聞きしていたようだ。

「…聞いていたのなら、教祖様の言葉通りではないのでしょうか」

女達と仲良くしようとも思わないし、童磨に想いを寄せているわけでもない環からすればそんな事言われても困った。そんな事を怒鳴り付けられたところで環の本来の目的である鬼殺隊としての仕事がやりにくくなってしまう。嫉妬で当たり散らしてくる女達に気を使ってやる筋合いなんてもはやないと感じた環の言葉はひどく冷たかった。

「ひっ、ひどい!私たちだってこんなにも教祖様をお慕いしているのに!」
「そうよひどいわ!あなただけなんて!ひどい!」

そのうち女達は膝から崩れてメソメソと泣き出してしまった。ああとんでもなく面倒な事になった。しばらくこの寺院で過ごしたがこれ以上ここに居ても新たな情報は手に入らなさそうだ、そろそろ一旦ここから出て仲間の元に戻ろう。環はそう考え今晩にでもこの万世極楽教を出ようと決めた。


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