マ王 | ナノ

 How so cute!

この男はなんでもないような顔をして「どうしましたか」なんて聞くもんだから本当にたちが悪い。





How so cute !





言葉と一緒に差し出された紅茶は冷たく喉を通り過ぎ、その心地よさに言わないでおこうと思っていた気持ちでさえも流されていく。


「ヴォルフラムがさ」

「うん」

「俺のこと、かわいいって」

「ああ」

「何回も、真面目な顔して。俺よりも段違いに可愛い顔して」


この世界の美的感覚が狂っているのは大分慣れたけれど、やはり自分自身がもてはやされる事には未だに納得がいかない。
しかもかけられる讃辞は「かっこいい」ではなく「美しい」や「可愛らしい」だ。


俺は男なのに。



「せめてかっこいい、なら許せたのになあ」

「おや。言われたい願望はあるんですね」

「当たり前だよ。まあ、あんたみたいなイケメンなら言われ慣れてるんだろうけどな!」

「そんな。言われた事なんてそうそうありませんよ。俺なんかより兄の方がかっこいいし、弟の方が可愛らしいから」

「…言われたい願望はあるんだな」


当たり前です、と笑いながら繰り返されて、その仕草に不本意ながらきゅんとする。


思わず「かわいい」と呟いてしまうほどに。



「いま、なんて?」

「…かわいいな、あんた」


コンラッドの笑い顔を見ていたら言葉が零れ出た。


ああ、今さっき「男に可愛いなんて!」と文句を言ったばかりなのに。


でもコンラッドは、目を細めて笑みを深くして、柔らかな声で囁いてきた。
耳元に、唇を寄せて。



「貴方の方がずっとずっと可愛らしい」


「…いい性格してんだな、あんた」



熱にうかされたかのように、全身が熱をもつ。

効果的過ぎる仕返しに、やっぱりこいつにはかなわないと思い知らされた。




「うざかわいい」なんて言ってしまえば、俺は彼にどんな風に可愛く表現されるのだろう。


end



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