青峰の胃袋を掴む話

 
彼の一番の印象と言えばまっすぐ私におかわりを求めてくることだった。
 
バスケが大好きな彼は成長盛りなのか、私の背丈をとうに越しているにもかかわらずよく食べた。
彼は私の作るご飯にいつもうまいと言って喜んでいた。
 
晴れの日も雨の日も彼の関心はいつもバスケだった。別に嫌なことじゃなかった。大会があれば差し入れに行ったし応援もした。
一度負けた彼は更にとても強くなった。
 
高校を卒業してからはバスケの選手を目指した。たくさん挫折してたくさん成長した彼はいつの間にか精神的にもずいぶん成長した。それから彼は有名なバスケ選手になった。
 
私はといえば何時だって料理を作り続けた。私にはバスケのことは詳しくなかったし、正直さつきちゃんに嫉妬したりもしたけれど、結局彼は何時だって私のところに戻ってきてくれるのだ。
 
「なまえ、おかわり!」
そうやって茶碗を差し出す彼の手にも私の手にも同じ指輪が光っていることは言うまでもない。


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