こんにちは、苗字名前です。実は最近嵌っているものがあります。元々、パソコンで通販サイトを見るのは好きだったんですが、見つけてしまったんです。
 
「おぉぉぉ!これが今話題のドン太くん!!というか、首領ぬいぐるみっ」

洋や圭、優太が帰ってしまった後の静かな事務所内でこっそりネットサーフィン。ふわふわの肌触りの謳い文句に、思わず買い物かごへと左クリックをして入れてしまった。
商品が届くまで、少し時間が掛かるらしい。少し残念だが、人気商品だからしょうがない。楽しみに待つことにしよう。



そして、ここにもドン太くんを抱えている人物がいた。苗字が楽しみにしている商品だとは知らず、先に手にした緒方はステラに渡すのだった。
包み紙にリボンであしらった荷物を 「ステラ、プレゼントだよー」 と緒方が言えば、ステラは両手をブンブン振って 「きゃ―――――っ」 と喜ぶ。
「ネットで話題のドン太くんっていうんだよ」 っと説明をするが、ステラは包み紙をワクワクワクっと開けることに夢中で聞いていないようだ。
ステラが取り出したぬいぐるみは、まさに首領ヴァレンティーノの姿。両手で持ったステラは固まってしまう。緒方はぬいぐるみの額をぎゅっと押せばドン太は、鳴き声を上げた。

メエエエエエエっと。

止まらない、メエエエエ の声にステラは思わずビシッとドン太のおなかにパンチを放った。 メエエエエっと鳴けば、頭を ビシビシビシっとステラは打つ。
ステラの姿を見て「ストレス解消になりそうだなー」 っと緒方は口にした。



  * * * *



「なんですかコレは――!!」

ことの発端とも言える、首領ヴァレンティーノファミリーの屋敷ではロレンツォが叫んでいた。ロレンツォが持っていたのは、ぬいぐるみのドン太。彼は、まだ知らないのだ。
明らかな首領の姿に、誰に断ってこんなこと!首領が汚されます!と。
「このボッと出のヤギがあああっ、お前の人気は首領のおかげとわかっているのか!?」 と言えば、投げつけようとする。
にわかファンにチヤホヤされて、いい気になるなよっと。だが、粗末に扱うことは出来なかった 「だって首領だもの!!」 っとロレンツォは膝をついて嘆いた。

その光景を見て遥は 「楽しそうだね」 っと呟く。通販限定なのに大人気であり、動画サイトにCMを流したところ広まったらしいと説明をする。遥の側には、弥太郎と夏輝に羊の聡明も居る。
「そのサイトにウイルスを送りましょう」 とリアルな扮装のロレンツォに、遥は 「やめてよ僕、風邪菌で死ねるんだから」 っと口にすれば、そういうのは弥太郎の分野だと言う。
機械分野が得意である弥太郎のことを、夏輝は両拳を作り 「録画予約が出来るんス!」 っと説明をするが 「お前の馬鹿さしか伝わってないぞ」 とガブリエラが告げた。


「おーおー、集まっとんなあ」


ノアがドン太を脇に抱え、首領と一緒にロレンツォや遥たちがいる広間にやって来たのだ。ノアがドン太を持っていたことでロレンツォが問いつめるが、ノアは 「ウチの発明や」 っと告げる。
「首領がモデルやねん、そっくりやろ?」
その言葉に、ロレンツォは邪けに扱っていたドン太をギュッと抱きしめ 「さすが首領!!」 っと叫んだ。

ノアはドン太の首領蝉の改良型だと説明する。首領蝉ほど強力な洗脳能力は無いが、バッテリーが1週間で切れることは無い。
CM動画にて、視認できないショッキングな映像を混ぜ流し、サブリミナル効果を狙う。興奮作用に自覚はないが 「クセになる動画」 として広まったっと。
必然的にドン太くん通販サイトへのアクセスも増える、架空会社のホームページに。モノが通販限定となれば、買いたい人が個人情報を送らなければいけない。

「ちょいと洗脳に時間はかかるが、購入時期と電話番号がわかればコッチのもんや!首領やったれ」

ノアが言うと同時に首領は子機電話を持ち、ピポペポピっと押せば 「ヤギヤギヤギであろ―」 っと言う。

「お腹が空いたであろ―、お金を振り込むであろ―!」

首領が告げた後に、ロレンツォはパソコンを確認すれば 「50万円が振り込まれました!」 と口にする。 「うむ」 っと納得をすれば、そのままノアが言う。
無自覚に催眠術にかけられ “ ヤギからの電話 ” で洗脳状態に陥り “ 振り込み ” で解けるよう仕組まれているっと。


「さすがノアであろ―」と首領が言えば、ロレンツォが「ついに洗脳技術がお金になりましたか」っと声にしてパチパチパチっと拍手を送る。

それを見た夏輝が 「洗脳にこだわるのは何か理由があるんスか?」 と聞く。
「……最初に洗脳したい、言い出したのはお前らやろ?」 っとノアは告げるが、固まる夏輝に 「入り用かと思ってチョット、頑張ったのに」 と、もう知らんっと口にし、拗ねてしまう。

「振り込んだ後、正気に戻るなら通報したりしないの?」

遥の言葉に 「ヤギから電話が来て、お金を振り込んだなんて警察に言えるか?」 っとガブリエラは告げた。 「脅迫もしておらぬであろ―」 と首領は言う。

「警察だってイタズラだと思ってマトモに対応しないでしょうね」
「そんな通報、本気にするなど余程のバカ警察であろ――!」


HAHAHAHAHAHAHAっと笑うロレンツォと首領。だがその通報を見逃さない警察もいるのだ。



一枚の報告書を手に、強面に読み耽る荻野。横から紙を取り上げれば、緒方はそれを読む。
「おい緒方」 と奪い返そうとするが、ひょいっとかわし 「なんだコレ?ヤギヤギ?」 っと緒方は読み上げる。

チッと呟けば「好きに笑え、ヴァレンティーノのこともあって無視できないんだ」と荻野は告げる。
だが、緒方はその内容に 「…犬なら、振り込むな」 っと口にした。


「良かった、お前の方が少し馬鹿だ」












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