三人で、さ迷い歩き続けるが“ゴオン”っと鳴り響く音にぐったりになっていた。


「これ、ちゃんと出れるの?」っと、口にすれば「巳束、言うな。俺だって思っていても我慢しているのに」と怒られてしまう。
コトハに至っては「なんとかなりますよ!」っと変わらず元気な模様だ。これを健気って、言うのかも知れない。

革と一緒に壁に寄り掛かっていれば、劍神を自分の腕から抜き出した。
「革?」っと聞くが、革はそのまま劍神に語りかける「秘女王の元に劍神届けるって約束したばっかで、なにやってんだ俺…」っと。

「つーか、なんとかしてくれよ劍神、神様だろ!?」

「革、そんな気に」っと言おうとするが、途中で「アラタ様!いいとこ見つけちゃいました」とコトハの声で遮られてしまった。

コトハの後をついて行けば、湯気が立つ湯の溜まり場だった。革といっしょに、それに手をつければ「お湯だ!!」っと丁度いい温かさに驚いてしまう。
地下の水脈と管がつながっているんだと説明をすれば、コトハは革に湯に浸かることを進める。


「え、先いいの?巳束も大丈夫かっ?」
「早く、落としたいでしょ?」


革に髪の毛の汚れを指さしてっと言えば、革は「あっ、悪い」っと呟いた。
入浴っということで距離を取るが、革が何やら騒いでいる。あ!?っと気付けば、コトハが動いていないことに「あちゃー」っと溜め息をついた。
彼女はきっと、革を“アラタだと思っているから”っと思い、その場所に近付けば足を止めてしまう。


「治った!?」

「秘女族を護るための采女族の女に備わる力です。昔から軽い傷ならいつも治してきましたよ」


革とコトハの話している声だった。それは、あたしが昔から革が怪我をしていれば、誰よりも早く気付いてバンドエイドを渡していたことにダブっているようだった。
静かになった二人を気にして、思わず見てしまった。コトハが両手をかざし革の顔、首、胸元に触れているのを。


それは、きっと温かいものなんだろう――…。だけど、今のあたしには辛かった。


流れ落ちる涙を、腕で擦って元の位置へと引き返す。「頭、冷やさないと」っと小さく呟けば、握り拳に力を入れた。

壁に寄り掛かり座っていれば「巳束さん、」と声を掛けてくれる。コトハと、目を合わせ辛かった。
「革は…」っと聞けば「多分、そろそろ」とコトハが口にした途端、再びゴオンっと轟音が鳴る。

壁や地面までも、亀裂が走ったのだ。コトハの頭上の亀裂に、気がついたあたしは「あ、危ない」っと叫び、突き飛ばす。そして、ガツッと鈍い音が聞こえた。
ただ、それだけでは終わらなかった。「巳束さん」っと、コトハが庇ったあたしを気にするように駆け寄ろうっとした時、ゴウンゴウンっと音が再び鳴り響いた。

「コトハ!!こっち!!」
「早く、コトハ!革に手を伸ばして!」

革は手を伸ばすが、その手を取れず「きゃあっっ」と崩れ落ちてしまったのだ。「コトハ――ッ!!」っと叫ぶがそれは届かなかった。
コトハが落ちた穴を革と一緒に見るが岩が崩れ落ち、管が動いて周りが見えない。携帯のライトを照らしても分からず、管が蓋をしているようだ。
「捜さなきゃ」っと、慌てる革に「待って一緒に行くから」と声を掛ける。が、コトハのことでいっぱいになっているようで、あまり聞こえていないようだ。

「痛――っ」

自分の肩を見れば、赤く滲んでいることに気が付いた。「さっきのか」っと呟けば、ハンカチを口に銜え、その肩に結んで上着を着直した。
腕を動かすだけでも、その痛みに眉を寄せたくなる。だが、先を急ぐ革に追いつくために腕を振った。


革と一緒に歪んだ空間を走る。下へ下へと。細かい管を踏みつけば、商店街のような場所に降り立った。
人が何人もいるが最初見た場所とは違い、人の感じ方も違ったので「革、聞いてみよ」っと告げる。


「すいません、女の子を捜しているんです」

「巳束、危ないからっ」
「コトハを心配するなら、聞くっきゃないでしょ」

上の穴から下に落ちたんです。っと説明をするが、店の店主は「知らねーなァ」と言う。
このガトヤは何重もの層で構成されている。床土は柔い、一層ずつはたいした高さじゃないから死にはしないだろうと教えてくれた。
それにホッとし「あ、ありがとうございました」っとお礼を言えば、ずいっと手を差し出されてしまう。

「情報やったろ!なんかよこせよ、“物品交換”がここのしきたりだろ」っと。

ちょっと待ってくださいっと革は自分の鞄を漁る。
「革、何かないの?ペンっ!ペンとかは」っと声を掛ければ、カラーペンを見つけ店主に渡す。書けることに驚いた店主は「おおっ、こりゃすげえ!!」と喜んでいた。

「ここ何でもありだよ、きっと」っと革に言えば、同じことを思っていたようでコクンっと首を縦に振る。

カード、10円玉、ペットボトルっとここの人たちにとっては全てが見たこともない物で、自然と噂が広がりあたしたちに交換して欲しいっと人が押し掛けてしまう。
色んな人たちが革を引っ張り始めてしまう。止めることが出来ず「あ、革ぁああ」っと思っていれば「やめな!!」と、声が掛かりぴたっと止まる。

オソメちゃんっと呼ばれた女の人は、あたしの肩に手を置き「みんな、やめなきゃ二度とウチの酒と交換しないよ!」っと言って止めてくれたのだ。



(手を置かれた肩が、傷のない方でよかった―――っ)





そこでの、想いと出逢い

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