「そうか ヒノハラ、お前が“アラタ”か。偽名とあっちゃ気づけねえ…ま!それを言っちゃあ、おあいこか!」


スエヒロは法被に袖を通し指を差し出せば、周りの提灯が光りを灯す。そのまま空へと掲げれば、夜の空に一筋の光りが伸びる。花火と共に告げた。


「――改めて!名は“ヒルコ”!ヨルナミ様の一番の属鞘たぁ、俺のことだ」


ヒルコと名乗っていた男がヒモロゲで、スエヒロと名乗っていた男が“ヒルコ”であった。
ド派手な演出にカンナギは声を上げるが、気にするとこは そこ!?とカナテに突っ込まれてしまう。

「あんたが鞘“ヒルコ”!?」
「そ!この背中の“ヨルナミ様の印”に誓い、ここスズクラは俺が仕切ってる!」
「なんで隠してた!?」
「自由に動ける身分のほうが皆を“監視しやすい”だろ?」

革の問い掛けに、ヒルコは左肩の熊手の形状をした劍神を手にする。吹き飛ばされた革のいる場所へとヒルコが降り立てば、革と対面する形になった。
監視していた理由に“金儲けのコマ”が勝手な動きをしないようにと、ヒルコは付け加える。


「ヒノハラ!俺はお前の働きっぷりけっこー気に入ってたんだぜ?だが、お前が“アラタ”ってんなら、捨てちゃおけねえな」

「待て、俺は話を…」

「ヨルナミ様のお手をわずらせる前に、今ここで―――お前を降す!!」


自分の主となるヨルナミを降したければ、自分を降せという。革は待ってくれ言うが聞いてはいない。


「顕れたまえ――“多花邏(タカラ)”!!」


鯛金ともいえる金銀であしらわれた巨大な魚が、革へと放たれるが“創世”によって弾け飛ばされてしまう。弾き飛んだ瞬間に、それは花降の金の小判へと変わる。

「ほお、せっかくの“金銀財宝”を消しちまうとは、それがその劍神の神意か!命拾いしたなァ」

命拾いをしたなと告げて、革に下をみるといいと言う。花降(カネ)が降ってきたことに人が集まり、拾い上げれば拾った人間自身が花降に変わっていた。

「花降(カネ)になっちまっても本望だろうよ!人間なんざ、しょせん欲の塊!ウンザリするほど知ってるぜ!!」

本性を出せと、革へと再度“金銀財宝”を放つ。繰り返される攻撃に革は、身のこなし軽さでかわし“創世”で弾き飛ばそうとするが、手にしている創世の宝玉の光りがなく反応がなくなってしまう。


「革!!危ないっ!!」


体を捩らせ反り返り、後方へと回転をし間一髪のところを避ける。革は膝を着き、手にしている創世の異変を感じていた。


「革!」

「ミツカ!!…っと、コトハちゃん!?」


橋の下にいるカナテとカンナギがいることに気付き、巳束とコトハは駆け寄った。革の異変にカナテもカンナギも感じ、カンナギが“創世”がおかしいと口にする。神意が消えたと。革も神意が消えたことに気付く。


「どうした、アラタ!!戦いの最中に神意を鎮めるとは」
「お…俺の意志じゃない!」
「へえ?じゃあ、劍神の機嫌を損ねる行いでもしたか!」
「そんなこと―――」


ヒルコの言葉に、鬼化したことを思い出す。

「まさか以前、アラタが鬼化した影響か!?まだ完全に覚醒していないだけに、あり得るな」

カンナギも鞘であるからこそ、その言葉には説得力があった。
神意のない劍神は、ただの劍(ツルギ)と同じ。勝負の差は見えたが、ヒルコは遠慮なく行くぜ!と告げる。
それでも、革の闘志は消えはしない。再度、創世を構え直した。


「来いよ!“創世”の力がなくたって、相手になってやる!!」


革の言葉にヒルコも“多花邏”へと鎮まりたまえと口にする。神意のない劍神“創世”へと、劍を交えるために間合いを詰めた。


「なめんな!!おめェなんぞに降されちゃあ、それこそヨルナミ様に“完璧”にお応えできねェ!!」

「もおっ、ヒルコちゃん!早く降しなよっ。ワタシが加勢を――」


神意を使って降そうとしないヒルコに加勢しようと、ヒモロゲは劍神を手にし動こうとすればカンナギが巨木を持ち、ヒモロゲを止めた。その衝撃に、十ニ神鞘の印を隠していた布が取れる。


「ヒモロゲ、退け!!相手は腐ってもヨルナミ様と同じ神鞘だ!!」

「誰が腐ってんだッ!!」


ヒモロゲの行動に釘をさせば、ガキィンと刃音が響く。劍と劍に交えた至近距離のまま、革が口を開く。


「“完璧”…あのヒモロゲもそう言ってた。あんな身体になってまで…なんでそこまで?」
「我々にとってヨルナミ様は“絶対”!!俺は、それ以外の人間は信用しねェ!!」
「!!、“創世”っ」


交えていた“創世”の宝玉に光りが戻ると、スエヒロに劍で払いのけられてしまう。光りが戻ったことに、巳束たちも気付く。

「“創世”に光り戻ったよね?」
「巳束!“創世”が戻ったよ」
「あれは、一定の間だけらしいな!」

“創世”が戻ったことにコトハやカンナギも安堵する。二人は間合いを取り、スエヒロは降ってもらおうと口にするが革は自分の左腕へと劍神を納めてしまう。


「じゃ、このへんで」
「エッ!?」


革は右手を掲げ、スエヒロに背中を見せて闘う意思がないことを伝えるが その行動にスエヒロは目を見開き、丸くさせた。展開的にここは勝敗をつけることろだと言うが、革は降し合いに来た訳じゃないと告げた。


<<  >>
目次HOME


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -