ハルナワと入れ替わるように天和国に召喚された門脇は飲み込めない状況に困惑する。学校に居たはずだが、目の前にあるものは見たこともない景色と建物。なにより、門脇は自分自身がこの場所に居ることに。
待ち構えていたように現れたのは、仮面を被り、同じ格好をした5人の六ノ鞘だった。手を差し出し、門脇に歓迎するという。
“アラタ”と口にする六ノ鞘。日ノ原革を知るものたちと分かった門脇は、促されるままに首都へついて行き、六ノ鞘の目的と天和国でのことを伝えられる。そして、門脇のすべきことを。
「君しかできない。君は選ばれた人間なのだ!」
―――“君は選ばれた人間”
「これだけは、よーく分かったぜ。日ノ原を消せってことだよな?…‥そうすりゃあ 巳束、アイツも手に入んだよな?」
革に相反するなら、鞘にならなくてはいけない。六ノ鞘は“君にふさわしい劍がある――”と告げ、地下へといざなった。
「…劍(ツルギ)?」
「“劍神”と組まねば“アラタ”は倒せない」
「ただし“劍神”に選ばれるかどうかは、君次第だがな」
封印されていたかのような、何重もの扉。石板がゴン、ゴンっと音を立て、目の前が開いていく。まるで、門脇を招き入れるかのようなものだった。
「…………」
石の引き詰められた部屋の真ん中に、それはあった。
何人もの亡骸が地より這いつくばり、叫ぶように中央の台座に存在する劍に纏わりついている。纏わりつくというよりも手にしようとして者が、闇に飲まれていった末路なのかも知れない。
その光景は死神。門脇は思わず引いてしまうが六ノ鞘に“アラタ”に確実に勝てる唯一のものと告げられ、手にすることを決意した。“創世”と同様に永き眠りに入ったまま、代々の秘女王により封印されてきた劍神――
「“逐力(オロチ)”」
「…オロチ…」
離さなかったナイフを棄て固唾を呑み、門脇は手にするために触れる。高鳴る鼓動が耳に纏わりついていた。
「見てろ、日ノ原…!!」
「これが君の持つべき劍神、“アラタ”を倒すためのな」
「…劍神、“逐力”…!!俺のものに、してやる…!!」
その意思を試すように逐力の宝玉が反応し、門脇へと禍々しい黒い闇と骨が伸びて、グオッと取り囲む。
「…さて、ここからだな」
「“逐力”の鞘となれるか…」
「逆にこれまでの人間のように、取り込まれて終わるか――」
* * *
「革?まだ痛むの?」
落ち着きを取り戻し、カンナギたちの場所へと戻ろうとした瞬間、革の創世が鼓動を立てた。痛みを発し、何かを告げるように、左腕から出て来たのだ。
間もなくして心配ないというので洞窟を後にしたが、革は左腕を気にしていた。
隣にいるからっという訳じゃないが、革が不安がっていることを 巳束自身も感じ取っていた。胸騒ぎというものだろうか、不吉な何かを。
「巳束、大丈夫か」
知らない間に、雨具の裾を握ってしまっていたようで、革から告げられた。
革も何かを感じ取っているのに、心配させたらダメだ。だから「革こそ、大丈夫?」と言い返した。
「あぁ、っく……“創世”。もしかして何かに反応しているのか――?」
大丈夫だと言いたかったが、再び“創世”の鼓動を感じ言葉を飲み込んでしまう。巳束が心配する中、創世の柄を握りながら光る宝玉に、革は問い掛けていた。
「おい、アラタとミツカ!聞いているのか」
「「え!?」」
「こっちの道を通ればヨルナミの宮殿に近い。この雨もヨルナミの神意の影響だろう。おそらく俺たちの動向を奴は知っている。首都へはまず通してはくれまい」
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