異変は少しずつ形として現れ始める。ミチヒノタマの勾玉の先が灰色に変化していた。


“私の命尽きるまでに首都へ”
“そのミチヒノタマが黒くなるときが最後 ”――…‥


首都の居城、天通力を振り絞り自分自身に繭を張るように身を守った秘女王、キクリ。深い眠りの中で命を繋いでいた、その身に変化が表れる。幼子の体から十二、三歳の外見へと変わっていた。

蠢く闇が動き出す。行動を起こしたのは六ノ鞘だった。


「本来の年齢に達すれば死ぬ。それだけなら、このまま放っておけばよいが…あの小僧が来るはずだ」


六ノ鞘は恐れていた。秘女王殺しで罪を被せた少年が“創世”の鞘であることを。“創世”と接触すれば秘女王は再び蘇ってしまう。


「大王など誰がなろうと構わぬが…、やはり確実な手を打つべきだ」
「…あの劍神だ。“あれ”を使うときが来たのだ」
「鞘“アラタ”を“創世”を消滅させるために―――」

その者たちは、首都に存在する“神開(カンド)の森”へと向かった。

「決して秘女王を復活させてはならない。そのためには、“あの”劍神で必ず劍神“創世”と鞘“アラタ”を降さねばならん――――頼むぞ、ハルナワ」


 * * *


秘女王の身を案じ、革はあたしやコトハにミチヒノタマの変化を告げた。そして、急いで首都を目指すため宿をあとにした。

「なー、アラタ〜なんだよ慌てて出発ってさ、朝メシくらいゆっくり食わせろさ!」
「おおかた昨夜、失敗したか」

文句を言うカナテの横でカンナギが口にすれば「なにが!?」と口にする。昨日から、天気は変わらず雨のままで、あたしたちは宿で貰った合羽を着ていた。

「ちゃんと着ないとぬれるよ?革、巳束」
「あぁ、うん。…って、巳束は肩に掛けるだけじゃなくてちゃんと被れ!」
「いやぁー、なんか着方がわからなくて」

コトハに言われて前を結んだ革は、あたしの着ている合羽を頭もしっかりと被るようにと前から引っ張ってくる。コトハはその側で、なぜか嬉しそうに笑っていた。


「コトハちゃんが“様”を取ってるさ、これは新密度の表れ!!それに、昨日と変わってミツカもなんか元気になって、なんか 違うさァァァア!!」
「まさか、アラタ!?1人部屋にも押し入って…2人とやったのか」
「!?、…朝っぱらから誤解にもほどがあるな、お前ら!!」
「カナテもカンナギも、何言ってんの??」


宿に帰ったあと、コトハが出迎えてくれた。照れ臭くいのもあったが、コトハにあたしからも話して、革が幼馴染みであることや一緒に神開の森からこちらの世界に来たことを話した。
ただアラタの祖母、マカリが告げた“その目で確かめて欲しい”は、きっと一緒に行動をするための言葉だと思うが、真意は分からないと伝えた。
そんなこんなで、少し感じていた距離感が無くなったようでコトハから“さん”付けは無しで呼ばれるようになった。

「全鞘を降す…やっぱ12人の攻略か。なぁ、カンナギ。あんたは“火”でアカチは“地”、いくつかは劍神の属性の想像つく…けどもう半分は、どんなやつなんだ?」
「確かに、どんな人間なのかは知っておいてもいいよね」
「フン、甘えるな!第一、我々12人は特別な式典以外は付き合わなかった。特に…六ノ鞘らとはな」

革はカンナギに教えてほしいと言うが、甘いと突き離されてしまう。十二神鞘の、その半分“六ノ鞘”について知らんと答えた。


「「六ノ鞘?」」

「不気味な奴らだ、6人共 未だ顔さえ知らん。おそらく戦えば厄介な奴らだろうな…」


段々と強くなってくる雨に、あたしたちは丁度いい洞窟を見つけ雨宿りをすることにした。六ノ鞘のことを言われた革は、少し時間が欲しいと口にした。

「あれ、アラタは?」
「ちょっと1人にしてくれって…大丈夫かな」
「コトハ、革は大丈夫だよ。きっと」
「どうかな、六ノ鞘の話で怖じけづいたかも知れん。怖けりゃさっさと“創世”を手放せばいいものを…」


革は、洞窟の奥に入ってミチヒノタマを手に、十二神鞘を降すまで秘女王はもってくれるのか、自分は間に合うのだろうかと考えていた。
その手に思いを込めて革は口にした。

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