「聞いたかい、秘女王殺しの犯人が捕らえられたって」

「でもよう、なにやら一人じゃないらしい」
「あ、聞いた聞いた!二人だってな、しかも若いらしい」

「当然、処刑だろう!十ニ神鞘がさばいてくださるさ!」


翌日の首都の人々は、この話題でいっぱいになっていた。
話題となっている人物たちは、丸い空間のような部屋にいた。巳束と、革は後ろに手を回され手枷をはめられていて。丸い円状に二人が立っている。
目の前には見下ろすように、三人の男がいる。後ろには幾人の民衆、傍聴人のようだ。

周りはザワザワッと騒いでいるが、あたしは天井近くにある簾の奥から感じる視線に嫌な気分になっていた。
簾の奥の空間には見下ろすように、カンナギが居た。胡坐の状態から片膝のみをあげ、腕を置き二人を見ていたのだ。

「カンナギ、やはり審議など無用…すぐに殺すべきだ」
「言ったろアカチ!あいつは記憶がないんだ。恐るるに足りん」

カンナギは隣の部屋にいるアカチっという男に、言葉を返した。

革は目を瞑り、顔に雛を寄せていた。何も聞こえないっと、言うように。アラタが言っていた言葉を思い出しながら。


(革、悪い夢ならいつかは覚めるよ…でも、これは…きっと夢とか言える問題じゃないんだっ)


目の前にいた、ひとりの裁判員という者が書状を読み上げる。「――秘女族アラタ15歳は、男の身ながら女子に化け神聖なる王交代の儀式に臨み、すきを見て秘女王を斬りつけ殺害」っと。
革はその言葉に「うそだ!!」と声をあげる。だが男はそのまま読み上げていく。

「初めから秘女王を狙ったものと見られ、種族を利用し兼ねてからの政府のかく乱・謀叛(ムハン)を企てたものと…」
「違います!それは真実じゃないっ」

あたしが声を大にして叫べば「秘女王を殺したのは――」っと革も口にするが「十ニ神鞘全員が証人であられる!」と、止められてしまう。

「そして右の者、アラタと共犯となり身なりの変装と逃亡。女、同じ罪に値する!」

その男は、隣にいるあたしも同じ罪であると告げたのだ。そして、上から振り落ちてくるよう簾のなかから声が聞こえる。

「畏れ多くもその者は突如、秘女王を斬りつけた」
「儀式には無心で、臨んでいたため我々もフイをつかれてしまった…」
「私も捕らえようとしたが、逃げ足が早く、塔の外まで追ったのは承知のとおり。そしてアラタとその共犯者を捕らえることが出来た」

最後の声は確かに、カンナギのもので姿の見えない簾を睨めば、革が震えるように「な、なんで巳束も?何なんだよ、こいらっ」と小さな声で口にする。

「天井の鏡を見よ!最期に天通力(アマツウリキ)をお使いなり、未だ我が身を護り続けておられる痛わしい秘女王のお姿を…」っと男が告げる。周りの民衆も顔を向け、より一層に騒ぎが濃くなってしまう。

その声に、あたしも革も顔を上げた。目に映るのは周りに膜のようなものを覆い、その中心にいる幼き姿の秘女王。
ただその中のときが止まっているかのようにも見える。胸にある傷が痛いしく、その血飛沫が惨劇を物語っていた。


“秘女王は裏切られ殺されたんだ”


“信頼していた十ニ神鞘に”


“悔しかったろうな”


あたしと革は、アラタの言っていた言葉を思い出していた。周りの者たちは「許せぬ、審議のするまでもない」や「今すぐその者たちの首をはねよ」っと告げているが、そんな声は入らない。
「…俺も裏切られて悔しかった…」っと革は口にする。それは、革が感じた優(ユグル)からの裏切りと悲しみの痛み。


「人間てどこの世界でも同じなんだな…信頼裏切って自分のことばっか考えて、ウソついて誰かを平気で傷つけて…。―――恥ずかしくないのかよ」


その革の声に、言葉に目に込み上げてくるものがあった。「革っ」と口にすれば、首を縦に振る革の目と合う。


「なにが神を操る十ニ神鞘だ!!どんだけ偉いか知らないが、俺や巳束は、あんたらみたいな卑怯者許せない!!」
「革の言う通りよっ!貴方達には悲しみはないの?何年も仕えてきたことに、思うことはないの―――っ」


革は叫ぶように簾から見下ろす者たちに告げていた。「絶対許さない―――、お前ら最低だ!!」っと。それは、本当にその通りなのだから、あたしも言う。


「護る立場のものがそれでいいの――っ」
「そうだ、お前ら秘女王を護る立場だろ!?12人全員で裏切ったのか!!」





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