カンナギに連れられてきた場所は、先ほどっと違って多くの建物が広がり都(ミヤコ)っという印象。だが、すぐカンナギに薄暗い牢へと押し込まれてしまう。
「放せ!!俺はなにもやってない!!」
「痛っ、何!引っ張んないでよっ」
ドンっと押されれば、ガシャンっと閉まる音がした。兵がガチャガチャっと施錠を施しているようだ。
「巳束、平気かっ」
「うん、」
革は牢屋の向こう側にいる、カンナギに向ければ「な…なにを…!!」っと問う。
「罪人とはいえ、貴様が本当に劍神に認められた鞘ならすぐには殺さん。明日我ら十ニ神鞘が審議にかけ、正式に判決を下す」
そしてカンナギは続けた「女、お前もだ!同じ身なりに同じ言い分。同罪の可能性があるからな」っと。「はっ?」と呟けば、革が「審議…って、裁判!?」と聞く。そのこじ付けはおかし過ぎる。
「革は無実よ、あたしが証明できる!それに秘女王を殺したのは別の――」
あたしが口にすればカンナギの顔がピクっと動く。「やはりなっ女、同罪決定だっ」と呟けば「お前もだろ、アラタ」っとカンナギが聞く。
「お前“神開の森”に喰われ記憶をなくしたというのは本当か?」
偶然通りがかった兵が聞いてな。っとカンナギが言えば「――――!!コトハは!?」と革が聞けば、知らん。用があるのはお前らだっと告げる。
「ちょっ…、待ちなさいよ」
「待て!!出せよ!!」
革と一緒に叫ぶがカンナギは、振り返ることはなかった。カンナギは思っていた“あいつが使ったのは神意だ。そして、このまま殺してしまえばあの劍神が分からなくなる。あの女の正体もだ”っと。
「革、無理…鍵、開かない。ビクともしないっ」
「こっちもだ。携帯通じない、圏外のままだ…くそっ!!」
使えない携帯電話に、閉じこめられた牢屋。疲れ切ったあたしたちは牢屋に寄り掛かり呟いていた。夢だと言ってくれっと。
「革っ」と小声で呟けば、俯いていた革は何かに気付き顔を上げた。襟元から、コトハから貰った勾玉を取り出してそれを見ている。
「それ、秘女王にもらったとか言っていたんだよね」
「あぁ…でも、こんなもん持ってたって…」
革が口にした瞬間、頬から汗が勾玉へと落ちったと共にカッと眩しい光を放つ。「なに?」っと二人が同時に声をあげれば、勾玉が宙に浮き壁へと光を示す。
その光に誰かの影が現れ始めたのだ。そして丸い円の中に映し出されたのは、いつも見ていた部屋だった。
「え?えぇ、革の部屋――!?」
「俺の服―――っ!!」
革と一緒に壁に張り付いてみるが、そこに行くことが出来ない。革の部屋にいる男が「誰…?」と口にする。その男の首元にあるのは、革と同じ勾玉だった。
「ねぇ!あれっ、君“アラタ”」と聞けば向こう側の男が「うん。えーと…」と答える。革が「俺は“革”だ、日ノ原革!こっちが天海巳束!!」っと告げる。
「あーお前が!で、アンタがね!…んと、ややこしいから“ヒノハラ”で“ミツカ”な!」
アラタが指をさして名前を呼べば「それよりも!!オイ、どういうことだよ!!」っと革は、入れ替わったせいで殺人罪で捕まって牢屋に入れられていることを告げた。
「入れ替わった!?」っとアラタが口にすれば、事の流れを説明する。
「――――なるほど、そういうことか!でも、ここには俺しかいない」
「え、じゃあ…やっぱり、あたしは入れ替わりなくこの世界にいるってこと?」
「そうなるのかもな。あっとヒノハラの母ちゃんが、なんかアンタの名前を繰り返してたぞ」
「あの、お願い!あたしは心配いらないって告げて!少し遠くにいるって」
隣でその会話を聞いていた革が「巳束っ」と声にし手を握ってくれる。「大丈夫だよっ」と顔をあげれば、情けない顔をしている革が目に映る。だから、あたしはニッコリと笑ってあげた。
「あのぉ…」っと声が掛かればアラタがゴホンっと咳払いをひとつして「俺“頭の検査”で病院だよ」っと言うが、それどころじゃないあたしたちは、一緒に声にしていた。
「こっちは明日死刑だよ!!」
変わる空気に「…殺した…のか?」っと革が「お前が秘女王を殺したのか?」と聞くがアラタは「まさか!!」と言い返した。
アラタは、あのとき秘女王を殺したのはカンナギであり、十ニ神鞘が裏切ったことを告げた。
「この国につかえる姫様を裏切ったってこと」っとあたしが呟けばアラタが「あいつら許せねぇ…」と声にする。
「お前を信じていいのか!?」
革は、アラタに問い掛けた。あんなことが、あったから人一倍そこは不安になってしまうことだ。
「よし、ヒノハラっと…えぇーっと」
アラタがこちら側を見て悩んでいるので「ミツカ!」っと口にすればそうだそうだ!っと頷く。そして「俺を信じるな!!」っと告げた。
「アラタ、分かった!」っと告げれば慌てて「巳束、何言ってんだよ!?」と革が言う。
「だって、信じらなければこの目で確かめればいいんでしょ?見たもの、感じ取ったもの信じればいいんでしょ」
「ミツカ、中々なこと言うなっ!俺のオババも“信じろ”って自分で言う奴ほど信用できないって!だから俺のことは信じるな!」
アラタは自分の言った言葉に、不安な顔になれば「オババとコトハは無事か?」っと呟く。その声に「うんっ」と答えれば、よかったっと声を漏らした。
「…悪いお前らがこんなことになっちまって」
頭を下げたまま「どうしていーか、わかんねーけど…。元に戻る方法きっと探すから…」っとアラタは口にした。スマン!それまで、なんとか頑張ってくれっと。
その姿を前に、あたしと革は感じていた。知らない世界で不安なのは寂しいのは同じだっと。
(革とアラタは、家族に会えないから…余計に、だっ)
革はアラタの言葉を聞いて「分かった」っと告げる。「どうやら俺、お前んちの劍神に選ばれた鞘らしい」っと。その言葉にアラタは「えっ?」と吃驚をするが、トントンっとドアをノックする音が耳に入る。
「革?どうかした!?」
「母さん!?」
「おばちゃん!?」
アラタは「あの劍神使えるのか!?だったらそれで戦える!あいつらと!!」と口にするが、あたしたちはとても懐かしい革の母の声に耳を傾けてしまう。日が経っている訳でもないのに。
だが、その円は急激に閉じるように小さくなってしまう。革は壁にかぶりつくように「母さん」っと口にしていた。
「アラタっ?」と声にし、その顔を見れば「ヒノハラ!きっとこれは俺じゃなくて“お前が”―――…」と言うがその円は消えてしまうのだった。
「母さんっ…、俺はっ…ここだよ…っ…」
「――――― 革っ」
それぞれが、抱える想い
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