「できるよ。それこそ君しかできない…君の使命だ」

降さず、降されず戦うっと告げた革に、男が言った言葉。
「方法を知っているんですか!?」っと聞けば「君は鞘たちを、その劍神に束ねねばならない」っと言った。それはアカチたちと似て異なる“力で降すのではない”っと。


「鞘“ツツガ”のときのように相手の心を変え、劍神共々 彼らを“預かるんだ”」
「“預かる”!?」

(鞘と劍神を?)

「なぜなら、その劍神の名は…」っと男の言った劍神の名を、革は告げる。 


「“創世(ツクヨ)”? 」

名を告げられた劍神がドンっと音を立て、光を放つ。それは闇を照らす、光のように。

離れている場所に居たコトハやカナテも「夜なのに!?」っと、その光を見て声を上げるほどの。夜に光が差し込んだ。

“創世(ツクヨ)”、それは秘女族に代々伝えられてきた唯一無二の劍神。この世の“全劍神を生んだ”とされる源の劍神“創世”―――
劍神を空に掲げる革に、男は告げる。

「君はその鞘の後継者だ!」

おそらく「創世」は古代から待っていたんだろう。新しく世界を切り開く―――「真の革命」ができる鞘を。
人を殺めず血を流さず、「心」で戦える人間にしかできない。

「君は“大王”という権力に惑わされるな、…決して!」

「真の、革命…」

「劍神“創世”の後継者として、君が世界を変えるんだ!!」

男は、どこまでも続く海の彼方を指す。革は、その言葉の重みを噛みしめた。

「はい」

「私も秘女王と共に期待している!」っと、口にし「もう行かなくては…私は首都(ミヤコ)に向かうんだ、生徒たちが心配でね」っと言う。

「え、あ。そうだ名前を…」
「あー、名前で呼ばれるのは慣れていないんだ。“先生(セオ)”でいいよ」
「(セオ……“先生(センセイ)”?)」

(………セオ?)

「また会おう、アラタ!」っと告げたセオに、革は頭を下げればセオとは違う方へと歩き出した。
セオは、なぜかあたしが居る岩陰の方へ足を進めていた。

(やば、こっちに!?)
「出ておいで、ミツカ。盗み聞きは良くないよ」


セオの声に「え、あ…すいません」っと、彼の前に姿を出せば「君は、私に聞きたいことがあるんだろ?」っと笑って告げる。

「あの、あなたはガトヤで私にも告げましたよね?“君にも”って、それが気になっていて」

何も言われないことに、あたしは今まで不安になっていたことを口にする。

「革には、力があるけど私にはありません。ずっとそれが引っ掛かっていて、私は、ここにいる意味は何なのか」

革にある力を、心の中で羨ましくも思っていて。あたしが、この世界にいる存在はなんだろうって。


「君も彼と一緒に分かるはずだ。必ず、自分の役目が見えてくる。君も必要不可欠なんだ……」
「“必要不可欠”?」
「そう、いずれは分かる。君の役目を」

“役目”は分からないが、この世界にいる意味があると言ってもらえた気がした。少しだけだが、スッとしたあたしは「ありがとうございました」っと告げて革を追った。


革たちの元へ戻れば、カナテとコトハがあたしを呼んでいた。ちょうど、革がセオに教えてもらった「この劍神“創世”に鞘と劍神の生命、預からせて貰う」ことをホニたちに告げているところだった。

「巳束、お前どこに?」
「ごめん!それより何かあったの」

あたしのことから逸らさせるように、何の話をしていたのかと革へと振る。
「できるかもしれないんだ!“全劍神”を束ねて秘女王の元へ届ければ…」っと口にすれば「ホントに!?」っと、ホニは声をあげた。

「もちろん確信はないよ。でもこの劍神にはその可能性がある!…それにかけたいんだ」


秘女王が託した意味。悲しむ人をこれ以上、出さないように―――――


「俺は戦う!」


だが、ホニは口をつぐんでいた。そしてもう一人。それは、その話を岩陰で聞いていたカンナギだった。
ほんの少し前だが、ひとり屋敷があった場所を歩いていた。
だが、そこで高台からの眩い光を、見て脳裏に過ったことを確かめるために革たちを覗いていた。劍神に降された、オヒカたちを還せる劍神ではないかと。

それは確信になった。その可能性がある劍神―――

「“火焔(ホムラ)”を取り返しアカチを降すにはアラタ、お前の“創世”を頂くしかないようだ」


小声で呟けば、カンナギはその場を後にした。





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