※ 話の内容に殺傷表現があります、予めご注意ください。



「アラタ、ミツカ…」

コソッと呟くカナテの声に、あたしと革は息を呑む。だが、すぐ後ろにいたフヨウの言葉で不安は解かれることになる。


「オヒカ!劍神!」
「ああ、済まない!仕事だったから、つい…」


革が「仕事?」っと聞けば、オヒカは「そう」っと告げ、手に持つ古く錆びた鍬を劍神に近づける。ヒュッと光を放ち、鍬が真新しい様に変貌する。
この劍神の神意は「鍛冶(カネリ)」といい。鞘のオヒカは毎日、農具や武具造りに追われているっと言う。「カンナギ様にはよくして頂いている」っと告げてオヒカは劍神を自分の腕に収めた。


「この土地も頂けたし。今回、妻の懐妊祝いもお知らせしたが喜んでくださった」

「「!!」」

「カンナギ!!……様に従ってるんですか!?」


革の言葉に、オヒカは説明をしてくれる。
我々「鞘」は通常、領主である「十二神鞘」の誰かに属している。そのうえで頂点の秘女王が我々の神意を制御して、この世界は成り立つ。秘女王が上に立ち、十二神鞘・幾人もの鞘(属鞘)・庶民となる。
「だが、秘女王は殺された――、君もさすがに知っているな?」っとオヒカが言えばあたしと、革はドキッと揺れた。

「ここに来る途中のナルタキで移民と会ったさ!鞘同士で戦乱になるとかウワサしてたさ!本当か!?」

カナテはそのまま「あんたも鞘だろ!」っと告げれば、オヒカはフヨウと顔を見合わせて「私は今の暮らしが気に入っている」っと言う。
普通に民たちと働き、家族を守り、いつか生を終えるまで静かに――――暮らしたいと「だが…そうは思わない鞘たちも出てくるだろうな」っと口にする。

「自らの神意を使って秘女王に代わり誰かが国の頂点に…
 “大王(オオキミ)の位”につこうとするだろう」



(大王って!?)

「(大王!?政権交代!?それが目的で秘女王を!?)」


その話に「大王の位って1人だろ!?まさか殺し合って生き残ったのが、なるのか!?」っとカナテが言うが、フヨウが「オヒカ、そんな話は…。アラタ、お粥でもどうぞ」っと告げた。


「あの…、殺す以外で無いんですか?」
「巳束?」


オヒカは「全鞘を降し劍神を統一すること」っと言う。
「先日、“新しき劍神を持つ鞘”が流刑地“ガトヤ”に現れ、十二神鞘に属さぬ独立した鞘“ツツガ”が自ら“降った”っというのだよ」


(オヒカさんの言っていることは、きっとあの時 ツツガが告げていたことなのかも知れない)


「“降る”ということは、劍神共々自分の生命(ミタマ)をすべて相手に託すこと。これまでは秘女王の制御のもと決してできなかったが…その鞘はそれを成し遂げたらしいのだ!」
ツツガにそこまでさせるとは、その者は一体何者なのか――。だが、これには少しおかしな話がある。


「その鞘は、なんとまだ君くらいの少年らしいが、その少年の名は秘女王を殺したの大罪で流刑地(ガトヤ)に流された罪人の2人、少年と少女がいるが、少年と同じ名前だそうだ」


外を見てオヒカは今まで告げていたが、革の顔を見るなり「…君は、どう思う?――――アラタ」っと口にする。



 * * *



カンナギは自分の領土(カグツチ)に戻っていた。まずは属鞘であるキギスに会い、壊れた浮舟を修復してもらう。「アラタ」を追うのはその後だと。
「修復の間、皆の元へ回る。…オヒカにも会えるな」っと口にし、屋敷内を歩くが誰にも会わないことに疑問に思う。
中央の広間まで足を踏み入れるが、その場が血に染まった悲惨な光景に足が止まってしまう。全ての者が惨殺されているのだ。


「これは…!!」っとカンナギは声を上げ「う…」っと口にしている者に気付き、側に寄り「おい…キギスは!?」っと告げる。

「…ナギ…様…」
「誰だ…誰にやられた!!」


自分の目、耳を、カンナギは疑いたくなる。そして他の属鞘の元へ向かうが、同じ惨状であった。


「カンナギ様!やはり鞘はおらず、みな殺されています!!」
「…なぜだ…」
「あと1人、残っているのは…」
「浮舟を出せ!!オヒカの元へ向かう!!」


カンナギは自分の浮舟の中で「…なぜだ!」っと告げていた。


「なぜ俺の属鞘たちを!!アカチ…!!」





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