手の平に乗った桜の花びらを見て思い出した、どっかで聞いたおまじない。
地面に着く前に花びらを掴んで願い事をいう。一体誰が考えたんだか。

「叶うなら、前の体に………・・」

言おうと思ったけど、止めた。きっと、言っても虚しさが残るだけだ。
手を開いて、ひっくり返せば花びらがひらひらっと地面に向かって落ちていく。


 * * *


真新しい制服に身を包んで、桜並木に迎えられるように“誠凛高校”と書かれた校門をくぐった。

今日から始まる高校生活に皆、期待で胸を膨らましているようでどこか楽しそうだ。
同じ身なりの生徒たちが向かっている流れとは逆に、それを逆らうように階段を上っていれば声を掛けられる。

「お前、新入早々、サボりか?」

声の方へと顔を上げれば、階段の手摺に日向さんが寄り掛かっていた。幼馴染みのスポーツジムで何回か顔を合わせたことがある日向順平。

「あれ?バレちゃいました」
「だアホ、向かってる先がお前だけ違うだろうが」
「まぁ、今日ぐらいは大目に見てくださいよ」
「ったく、……・なぁ、ウチの部くるよな?」

あたしはその言葉には答えなかった。学校名までは言ってないが、マネージャーをやっていたことは知っている。日向さんのいる部活は、確かバスケット部。


「センパイ、何かと新歓準備とかで忙しいんじゃないんですか?怒られますよ。リコに」

「おい!橙乃!!」


その横を構わず通りすぎた。何かを最後まで言っていたけど、あたしは屋上へと向かうための階段を掛け足で上がった。


「やっぱり、体力ないなぁ」


大きく息を吐いて、屋上から見下ろせば桜が風に吹かれて揺れていた。


サクラひらひら
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