結局、俺は捺夏と話せてはいなかった。誠凛との後も海常との後も、そこ居たはずの捺夏が居なかったからだ。
苛立ったまま、さつきに問い詰めたが顔を横に振り、口を開こうとはしなかった。

「……私だって教えて貰えてない。ただ、辛そうだった」

きっと、その言葉に嘘はない。実際のところ、さつきも知らないんだろう。さつきでさえ、捺夏の情報を集められはしない。



「俺は、お前とずっとにバスケしたかったんだけどな」


屋上で寝そべる青峰は ゆっくり流れていく雲を見上げて一人、呟いていた。
いつから、なんだろうか。ただ退屈を感じるだけのバスケ。捺夏がいれば、笑い蹴飛ばしてくれんだろう、な。


「……っち、クッソ」


一瞬でもそんなことを考えてしまったことに、眉をひそめて体を起こした。眠れそうにもなかったからだ。


「あぁーだーり。このままフケッかな」


誰もいない屋上で、返事を求めるように青峰は口にしてそこを後にした。
そんなことを口にすれば、飛び蹴りや、仕舞いにはバスケットボールを持ちだして背中に食らわすのが捺夏がだった。
決まって眉間に雛を寄せて、語尾を伸ばしては名前を呼ぶ。


今は、そんなことをされることはない。空いた背中が、寂しいと告げている気がして青峰は壁へと体をつけて頭を打ち付けていた。


どうしようもない感情を制御したく―――





もしくは拒絶
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