教室の机に腕を乗せて顔を覆い隠して眠っていれば、背中をバンっと叩かれる。痛みと驚きに立ち上がれば、机を挟んでリコが立っていた。

「リコ…、痛いんですけど。ってか なんで、居んの」
「捺夏に用があるから、居るに決まってるでしょ。まったく 昼休み中に、なに眠ってんのよ」
「昼休みだから、いいでしょう」

ぶっきらぼうな返しをした瞬間、残念なことにお腹が鳴ってしまう。正直なところ、お昼を忘れお財布も忘れてしまったのだ。だから、寝ていた。
それを言ったら笑われだろうと思って言わなかったのに、リコはお腹を抱え笑っている。顔を逸らし、座り直せばリコは笑いを引き摺りながら、こちらの顔を覗いてきた。


「はい、コレ」


リコはあたしの前の席の椅子を引いて、座りながら手に持っていたビニール袋を放りなげてきた。ストンっと机にビニール袋が乗るのだが、衝撃で中の物が顔を出す。

「ご飯、どうせ食べてないんでしょ?」
「そうだけどいいの!!?」

ビニール袋から出ていたものは、見たこともない具材をコッペパンに挟んだサンドパンだった。リコは、頬杖をしながら笑っている。結構なお腹の空き具合に、リコの言葉を待たずに それを口にした。

「美味しいでしょ?捺夏、」
「うん!!食べたことのない味だよ」
「でしょうね、ウチの一年も幸せそうにしてたし」
「ほえぇぇ、そうなんだ」

口をモゴモゴと動かせば、リコは「じゃあ」っと口にしながら手を、目の前に差し出してきた。手の平を見せるように、何かを要求している。

「それ、毎月27日だけの数量限定、幻のパンなのよ。買うのも必死!イベリコ豚カツサンドパン三大珍味のせ、2800円!!だから、お金?」
「え!?タダでくれたんじゃないの??」
「誰もタダで上げるとは言ってないし、捺夏が勝手に食べちゃったんだよねー?」

その言葉にやられたっと頭を過った。机に崩れるように、頭を乗せて「何をすればいいの」とあたしはリコに言った。

「捺夏がウチのジムに来なくなったことと、そしてマネージャ引き受けてくれないの……ってさ、何かあったの 帝光で?」
「え。なんで帝光、それを…」
「なんでって、黒子君と顔見知りであること、それに中学初めの頃の、アンタの制服姿を思い出したのよ」


そうだ、入学したてのあたしは嬉しくて制服のまま、相田スポーツジムに行ってしまったことが一度あった。今さらながら、あたしも思い出す。
返し方に黙ってしまえば、リコは立ちあがり時計に目をやった。

「まぁ、それは別にいいわ」
「へ?」
「アンタ、たまにでいいから手伝いなさいよ」


それだけを、言い残してリコはあたしの前からいなくなっていた。


「ごめん、リコ」




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