数本のドリンクボトルを抱えるように持って渡り廊下を歩いていれば、日向さんが歩いてくるのに気付いた。そしてその横に初めて見る人がいた。
日向さんと仲良さげに話しているところから、きっと上級生だろう。挨拶のため、少し頭を下げれば「あれ?」っと上から声を掛けられる。

顔を上げれば、声を掛けてきた人と目が合うのだが、その瞬間 ハッと気付く。この人は、木吉鉄平さんだ。


「ねえ、君って確か…病院で会っ――――」
「わあぁあああっっ!!」


思わず、手に持っていたドリンクボトルを放して叫んでいた。木吉さんの言おうとすることに被せるように叫べば、襟元を掴んでそれ以上言わないでくださいっと小声で呟いた。

「なぁ、病院って」
「それは、…友達の見舞いで病院に行ったときバスケットボールを拾って顔見知りに」
「はぁ?お前ってやつは、安静が第一前提だろうが」
「ですよねー!!」

その告げた言葉に、日向さんは納得してくれたが木吉さんは困った顔をしてあたしを見ている。順平さんに気付かれないように、両手を合わせて詫びるようにお辞宜をした。
木吉鉄平さんとは病院で会ったが、友達のお見舞いでっというのは嘘。そしてバスケットボールを持っていたのはあたしだ。だが、ここで言われたら困る。

「はい、その話はこれで終わり!!センパイ、早く練習に行かないとリコに怒られますよ」

「それもそうだが、橙乃?ドリンクボトルいいのか」

中身の入っていないドリンクボトルだったから良かったが、その行動に違和感を持たれたかも知れないっと過った。

「すいません。吃驚しちゃって」
「派手な驚き方だな。あ、橙乃!お前いなかったから知らないと思うが、こいつ昨日から復帰したんだバスケ部員。んで、マネージャーな」

落ちたドリンクボトルをあたしに差し出しながら、日向さんは説明をする。

「…リコに言われて、たまに手伝っているだけですから。カッコ仮って付けてください」
「っつても、何気にちゃんとマネージャー業こなしてるけどな」
「そうか!んじゃ、一緒にバスケ楽しんでこーぜ」

笑って挨拶をする木吉さんに、上手く返すことが出来なかった。よろしくお願いしますと軽く告げて、ドリンクボトルを抱えてそこを後にした。


「あたしだって、楽しみたい…‥‥」


こんな体じゃ、なければ ―――――




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