「青峰っち、もっかいやるっス!もっかい」
「やーだよ。お前しつこいし、お前とやるよりも捺夏とやりてえ」
「誰っすか?捺夏って」
「誰って、お前会ったことねのか?」

1on1を毎度のことのように青峰っちに挑めば、そこで出た捺夏っという名前。知らないと口にし、首を傾げればマネージャーだろうがっと言われてしまう。


「マネージャー?」


中ニの春、バスケ部に入部して2週間で一軍へ昇格。伸し上がることは、俺には簡単だった。
ここには三軍まである。マネージャーも、その部員数に対してそれなりにいた。割と女子受けのいい俺は、顔を合わせなくても向こうから寄って来るので、全員っと会っているはず。そう思っていた。

「その人、どこにいるんスか?」
「さぁーな。ここではない体育館でバスケ見てるかやってるかのどっちかだろ」
「え?その人ってマネージャーっスよね?」
「あぁ、マネージャー」

バスケを見てるのはマネージャーとしての業務なのは分かるが、やっているっという言葉には疑問が浮かんだ。だが、もう部活が終わっているからやっているのが正しいのか。


「あのー、そこにいられると邪魔なんだけど」


青峰っちとの話に考え事をしていれば、後ろから声を掛けられる。体育館のドアの前に立っていれば後ろに人がいた。

「大輝、アンタね!ドリンクボトルをこっちに置いていかないでよ」
「おぉー、悪ぃな!」
「届ける身にもなってよね」

少し真ん中からずれた俺の横を通り、その子は手に持っていたドリンクボトルを投げ渡す。俺を無視して、その子は青峰っちと会話をしていた。

「ねえ…、君って」
「そうだ、黄瀬!こいつが 捺夏だ」
「大輝、人を指差して こいつって言うな」

青峰っちの指を叩いて、その子は俺をチラっと見上げる。口元に指を置いてその子は、あ―、ん―っと声を出した。その姿に笑いが込み上げそうになったが、我慢した。

「あー!!最近、入った黄瀬くんだっけ?」
「だっけ?って……ヒドくないっスか」
「ごめん、ごめん、あたしは 橙乃捺夏。最近、あっちこっちに雑用に回されててね」

遅れた自己紹介でごめんと言って、捺夏は俺に手を差し出そうとしてたがそれを青峰っちが止める。宙に浮いた手を青峰っちが、掴んだ。

「ん、大輝?」
「捺夏、バスケすんぞ」
「えぇ!!今から?」

それが、捺夏との出会い。そのときの、キュッと奏でたバッシュの音を今でも覚えている。


奏でるモノクローム
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