とん、と肩を叩かれる。そんなことをするやつに心当たりは一人しかいなくて、今はそんな気分じゃないが、振り向かないわけにもいかない。はあ、と溜息をついてから、いつも通りを意識して振り返れば、案の定というべきかレイアはどこか楽しそうに笑みを浮かべていた。
「やっほー、アルヴィン」
「……おう」
クレープ食べに行かない?と笑い掛けるレイアに、俺は笑みを返すことが出来なかった。嘘はつなかい、正直に生きるとは決めたけど、こんな時くらい取り繕えれば良かったのに。どうにもレイアの前では上手くいかないのは、その無邪気な笑みに弱いからだ。
「アルヴィンは何味にする?」
「ん……そういうおまえは?」
「私はねー」
クレープ屋へ向かいながら、楽しそうに話す横顔を見る。こいつだって今は働いてて、苦労だってしてるだろう。いつか、頑張るのが取り柄だからと言っていたけど、頑張り続けるのはそんなに簡単なことじゃない。しんどいことだってあるだろうに、笑顔を崩そうとしないのは、意地を張ってるだけだろう。無茶しやがって。そう考えて頭を振る。自分のことで手いっぱいのくせに、なんでレイアの心配まで。
「アルヴィンはさ、優しいよね」
「は?」
「結構人のこと考えてるなって思って」
思考が口に漏れてたんだろうか。思わず口元を押さえれば、ふふ、とレイアはおかしそうに笑う。それをじろりと睨んでやれば、怒らないでよ、とやっぱり笑った。
「アルヴィンも、しんどくなったら頑張らなくてもいいんだよ」
「や、頑張ってるのはおまえだろ」
「うん。頑張るって決めたから。だからね」
私がしんどくなったらアルヴィンが助けてね、とクレープ屋へ走りながら言うレイアは、やっぱり無邪気な子供のように笑っていて。
少しだけ、胸の奥が軽くなったような気がした。



>>2013/02/11
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