食事の楽しさを覚えたというミラの、嬉しそうに食べる姿が好きだった。
「ジュード!」
だけど、どうしてだろう。一年前まではとてもあたたかい気持ちになっていたのに、今は少しだけ、複雑で。
「ルドガーがプリンを作ってくれたぞ」
ジュードの分だと渡されたカップにいっぱいのカスタードを見つめて、小さく息をつく。ミラはスプーンを握って、きらきらとした笑顔をプリンへ向けると、僕の隣でカスタードをすくってみせた。
ルビーより輝く瞳、喜びを表すかのように揺れる髪、そしてプリンを吸い込んでいく形のいい唇は弧を描いた。
「うむ、うまい!」
さすがルドガーだな、と同意を求めるようにミラは振り向くけれど、僕は一口も手をつけないまま、プリンの入ったカップを握り締める。ひんやりと掌が冷えていくのに、胸の内にあるもやもやとした感情は消えない。そんな僕を、ミラは首を傾げながら、顔を覗かせた。
「ジュード?」
どうした、と続けるミラに、僕はぱっと顔を上げると、なんでもないよ、とかぶりを振る。けれどミラは眉をひそめたままで、僕は苦笑を落としてから、手の中に収まったままのプリンを一口、含んだ。甘さは少し控えめで、けれどふわりとカスタードの香りが広がる。クリームも何もない、シンプルなのに味わい深さを感じるのは、ルドガーの手腕なんだろう。
どうやったって僕が敵いっこないのは、分かっているんだけど。
「……だが、私は君の料理が好きだよ」
「え?」
「違ったか?」
思わずルビーの瞳を見れば、ミラは髪を揺らして微笑む。
「それに、私は君と食べるのが好きだからな」
ここじゃなければ意味がない、と。僕の隣に座ったミラが、その場を指差す。手の中にはまだ冷えたプリンがあるはずなのに、妙に熱い。
ああもう、僕が敵わないのはルドガーだけじゃないみたいだ。




>>2013/06/21
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