筆業師の日常005

 ふわり。白い欠片が店内に舞った。
「紙吹雪?」
 出処を探して棚を見回す。狭い店だ、すぐに見つかる。
 だがそれは彼ら相手には楽観的すぎた。
 近づけば消える。離れれば吹く。本たちの嘲笑が広がる。
「いい加減にしてくれませんか!」
 苛立ちを示せばもっと吹く。遊ばれていることに気づき無視すれば『掃除してよ。散らかったわ』と小言を並べる。
「浄化しますよ」
 彼らを脅してみる。筆業師としての力の誇示だ。
『我等を覚醒せしは人間なるぞ』
『身勝手なんじゃないの?』
『いらなくなれば命さえ捨てるもんね、ヒトってやつはさ』
『こないだもそこの渓谷で犬を捨ててったヒトいたわ。三日目に雪が降って死んじゃった』
『神でもやらないよ』
『憐れな生き物さ』
『神とは……』
『そのウンチクはやめとけよ、何百年もかかるから』
『それ以前に見習いに浄化なんて無理!』
 書架いっぱいの本たちが笑う。
 いよいよ激しく降りしきる紙吹雪は、急に冷たさを帯びる。彼等の果てなき言の葉へと、僕は静かに埋没した。

やなは、文中に『ふわり』を入れて【面白そう】をイメージした140文字作文を書いて下さい。 #140SS http://shindanmaker.com/210384
( 2014.02.18 #140SS)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -