家に帰ると炬燵の周囲はチョコレート屋と化していた。
「今年は何個?」
「いっぱい〜」
嬉しそうに答えるのは齢を重ねた妖だ。
元は白狐だけど普段は高校生のなりで人を化かしている。誰にも等しく笑顔を向け、心遣い溢れる言葉をかけ、人と繋がる。
その結果がこれだ。
僕は彼を想う心に埋れた部屋で押し潰されながら、感謝を込めた小さな一粒を紛れ込ませる。
気づいて欲しい。
知って欲しい。
他の誰よりも強く繋がっているという証が欲しい。
彼が最初の一つを手に取った。封を切り口に放り込む。
「何度でも試してみればいい。俺は間違わない」
浅はかな挑発など妖に通用するわけもないのに。
(2014.02.13)