選択の代償は




※PS5Rの盛大なネタバレを含みます。
必ずプレイ後にお読みください。










「…いるんだろ?」


出てこいよ、という声が路地に染み入る。
あぁ、やっぱり性格が悪い。
黙って、気づかないフリをして、通り過ぎることだってできただろうに。
どうしてそうしてくれないのか。
私がここから動くことができなかったのは何故か。
それを、考えることすらないのだ彼は。
そう思うと、あぁ、腹立たしい。



逃げ道のない問いかけに、鉛のような足を動かすと、数歩で彼の顔がはっきりと見えるようになった。
電灯が煌々と光っていることも影響しているが、それよりも月が綺麗だった。
もし電灯がなかったとしても、彼の表情がしっかり読み取れる程度には、辺りをしっかりと照らしていただろう。

彼の方からも、私の表情が見えたらしい。
目の縁に溜まる水を見て、彼の目が驚いたように一瞬見開かれたけれど、すぐにまた元に戻った。



「聞いてたんだろ」

「…うん」



疑問形ではあるが、答えは分かっている問いかけだった。
先ほどのルブランでの、瑛くんと丸喜先生、そして、明智の会話。
思い出したくないのに記憶は容易に呼び起こされて、息が詰まる。



「まさかお前も、あいつみたいなくだらないことを考えてる訳じゃないよな?」

「…っ」



可能性はあったのに。
それを考えなかったのは、たぶん、嬉しかったから。
あなたともう一度言葉を交わせて、嬉しかったから。



「……じゃない……」

「…」

「…くだらないことなんかじゃないよ…!」



この歪んだ世界を、受け入れられない。
でも、受け入れなければあなたは生きられない。
そんな二択を、どうしてくだらないなんて言えるのか。



「あなたにもう一度会いたいって、そう望んだのが瑛くんだけだと思ってるの…!?」



私達の認知が作り出した偽物なら、もっと偽物らしくあってくれればよかったのに。
でも、私達はあなたの心に触れた。
あなたの本質を理解した私達の作り出した偽物だからこそ、ここにいるあなたは、誰よりも本物の明智吾郎だった。



悔しい。
苦しい。
どうして。
また会えたのに。

どうして。
どうしてあなたはこちらの世界にしかいないの。



ぐるぐると回る思考。
答えなんて出ない。
正解もわからない。
胸が痛い。
頭が痺れる。
目が、熱い。

そんな私を前にして、彼はひどく冷めた表情をした。
そしてそのまま、私に背を向け歩き出す。



「君が迷うことは、僕への裏切りだ」



はっきりとそう口にして。
彼は進む。
迷うことなく。
それが、あまりにも『彼らしく』て。
私は、溢れそうな嗚咽をこらえるしかできなかった。









選択の代償は
(あまりに大きすぎて)
(私はただ、震えるしかできない)









(あとがき)
5Rで1番驚いたシーン。
主人公はプレイした時の管理人代理。
らしいけど、らしいけどお前…!ってなった。
こちとらお前のこと嫌いだけど好きなんだよ!っていう。
主人公は瑛の女verってイメージで明智とのコープMAXです。



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